H3が打ち上げた「だいち4号」が担う重要な使命とは?日本の地表観測を行う「だいちシリーズ」を解説
7/1(月)H3ロケットの打ち上げが行われ、先進レーダー衛星「だいち4号」の軌道投入に成功しました。本記事では、地球観測衛星「だいちシリーズ」が担う重要なミッションを、だいちの歴史も踏まえてご説明していきます。
■シリーズ初号機の陸域観測技術衛星「だいち」
陸域観測技術衛星「だいち」は、2006年に宇宙へ打ち上げられた後、地球の陸地を撮影し続けてきました。
様々なセンサーを駆使し、地図作成のほか、2006年のジャワ島地震、2008年の中国四川地震など世界の災害を観測し、情報を提供するという重要な役目を担っていたのです。だいちの設計寿命は3年、可能であれば5年まで延長できるよう設計されていました。
しかし、運用から5年を超えた2011年3月11日、皆さんも良く知る東日本大震災が発生します。そこで、すでに定年を超えていますが、日本の広範囲を撮影することのできるだいちが動き出します。
だいちは地震や津波による日本列島の被害を鮮明に撮影し、被災地の状況を伝え続けたのです。その活躍により、被害の規模を迅速に把握することができ、効率的な救援へと繋がりました。東日本大震災で多くの命を守っただいちですが、その約1か月後となる4月22日にトラブルが発生します。何らかの原因によりバッテリーが枯渇し、通信が途絶えてしまったのです。
■だいち2号とだいち4号に託された重要なミッションとは?
その後、地球観測衛星としては約3年の期間が空くこととなりましたが、2014年にレーダー観測衛星である「だいち2号」が打ち上げられます。
だいち1号は「光学衛星」と呼ばれるタイプで、日中の時間帯に高性能のカメラで地表を撮影します。一方、だいち2号は夜間や悪天候の際にレーダーを使って地表を撮影する役割を担っています。
高頻度で精度の高い地表画像を観測するには、この光学衛星、レーダー衛星をセットで運用することが重要です。
しかし、だいち1号の光学観測を引き継ぐはずの「だいち3号」が、H3ロケットの打ち上げ失敗により喪失してしまいました。これにより、光学観測の空白期間が12年よりもさらに広がることとなり、災害時には海外からのデータ提供を受ける必要が出てくるかもしれません。また、国内や途上国の高精度な地理空間情報の更新や、多様な観測バンドによる沿岸や植生地域の環境モニタリングなど、だいち3号に期待されていた観測がすべてできなくなってしまったのです。
そして、レーダー観測衛星「だいち2号」についても懸念の声が上がっています。2014年に打ち上げられた「だいち2号」は、設計寿命が5年のところすでに9年間も運用されており、いつ故障してもおかしくない状況なのです。だいち2号が運用できなくなった場合、衛星による地球観測自体ができなくなってしまい、常に海外や民間企業に観測を頼らざるを得なくなってしまいます。
そこで、地球観測の空白期間を埋めるため、だいち4号は大きな使命を持って本日打ち上げられることとなりました。惑星探査機のような華々しさはないかもしれませんが、私達の暮らしを守る大切な衛星ミッションなんですね。
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