今回はぎりぎり回避できた?1月6日(木)関東大雪による"ブラックアウト(大規模停電)“
1月6日(木)、関東地方は4年ぶりの大雪に見舞われました。翌日7日にかけて、車の立往生やスリップ事故などが続出し大きく報じられましたが、実はその陰に隠れて、電力が逼迫(ひっぱく)する状況になっていました。
少ない降水量での大雪
今回の雪の特徴は、降水量に比べて積雪量が多かったことです。
ふつう東京の雪は水分量が多く、降水量1ミリに対して降雪は1センチ程度と言われています。ところが今回は、降水量6.5ミリに対して最深積雪は10センチにもなり、東京の雪としては珍しい降り方だったと言えるでしょう。
逆に言うと水分量が少ないために解けにくく、しかも放射冷却も加わって翌朝の気温は-3.5度まで低下。至るところで雪が残りました。
それを示すのが、気候変動観測衛星「しきさい」の画像(タイトル画像参照)です。
しきさいは高度約800キロ付近を周回しているので、静止気象衛星「ひまわり」のように、つねに同じ場所の画像を写し出すことはできません。しかし、ひまわり(36,000キロ)より45倍も地球に近いところから撮影することができ、分解能も250メートルと格段に精度の良い画像を提供してくれています。
タイトル画像は雪が降った翌日(7日)午前10時半ごろの状態ですが、白色の濃淡で積雪の多い少ないが分かります。また、南関東全体が薄いグレーなのに対し、都心付近だけは濃いグレーになっており、いち早く雪が解けた様子が見て取れるでしょう。さらによく見ると環状に濃い点々が取り巻いており、人口密集地だと想像することも出来ます。
しかし、問題はそこではありません。
太陽光パネルの落とし穴
大雪などが原因で起こる大停電のことを”ブラックアウト”と言います。湿った雪が電線に着いて電線が切れたり、雪の重さで倒れた木が電線を切ったりなどがありますが過去には思いもよらない理由で大停電、一歩手前までいったこともありました。
今から4年前、2018年1月22日の大雪でのことです。
実は、ことが起きそうになったのは大雪当日ではなく、その翌日でした。天気は晴れ、東京の最高気温は10.0度まであがったものの、23センチも積もった雪はなかなか解けず寒い一日でした。
電気と言うのは大規模に貯めておくことが出来ないので事前に需要予測をして、それに合わせて供給量を決める仕組みになっています。当然、寒いとか大雪とかで需要が多くなると予想されれば、電力を調整しやすい火力発電などで対応することになります。また、場合によっては他電力会社(東京電力の場合は東北電力や中部電力)に供給の依頼をすることになります。
ところが「東京大停電(金田武司)」によると、2018年1月23日は、供給電力があと1%足りなければ大停電が起こる可能性があったといいます。詳しくは本を読んでいただくとして、その大きな理由が太陽光発電でした。
大雪で太陽光発電が壊れたのかと思いきや、そうではなく太陽光パネルに雪が積もり、その雪が低温で解けなかったために、関東一円の発電量が大幅に減ってしまったのです。
あらためて今回(1月7日)のしきさいの画像を見てみましょう。とくに雪が多く残っているのは利根川沿いの田園地帯や北関東の平野部(赤丸部分)など、私には太陽光パネルの多い地方と連動しているようにも見受けられます。
実際に、今回の大雪の際に東京電力は4回にわたって、この冬初めて他電力会社(北海道電力、東北電力、中部電力、関西電力)に電気の融通を要請しました。そのため、今回は停電を回避することができ、大きな混乱はありませんでした。
真冬の電力事情は真夏と違って夕方から夜にかけて電力が逼迫します。具体的には電力使用量がおよそ95%を超えると他の電力会社に電気を融通してもらえるよう要請されるのですが、ここ10年の融通状況をみると、ほとんどが冬場に行われています。昔と違って、冬場でもエアコンを使う家庭が増えていることも要因のひとつでしょう。(さらに、冬は太陽光発電の発電量が最も少ない時季でもあります)
また停電というのは小さな規模でも、同時多発的に起こると変電所の閉鎖から連鎖的に広がり、突発的な大停電というのも絵空事ではありません。
太陽光発電が電力に占める割合は急激に増えており2020年現在、前年比14%増、全体としては約8%に達しています。太陽光発電自体が普及することは望ましいのでしょうが、電力の場合、一つの選択肢というのは難しいかもしれません。
この冬は雪が多いのか
1月10日(成人の日)は、南岸低気圧が関東の南を通り、ことによると雪が降る可能性がありましたが、いまのところ沿岸部でわずかに雨雲がかかるくらいで都心はほぼ降らない予想に変わってきました。
しかしながら、最新の1カ月予報によると、太平洋側は、広く降水量が多い予想です。これは、南岸低気圧の影響を受ける可能性が高いことを表しており、言い換えると、関東地方にとっては雪が降る気圧配置になりやすいということを示唆しています。(もちろん、そのときの気象条件によります)
さらに、1月下旬以降は東日本、西日本で気温も平年より低い傾向です。
今後、積雪や予想を超えるような低温になった場合、マスコミ関係の方は、関係機関の発表する電力予想にも留意していただきたいと思います。
※各電力会社名は略称を使用しました。
参考
「東京大停電 電気が使えなくなる日」著者 金田 武司 出版 幻冬舎
東京電力パワーグリッド株式会社 2022年1月6日~7日プレスリリース「融通電力の受電について」
2021年1月7日掲載 森田正光Yahoo!記事「なぜ寒波が何度もやってくるのか 豪雪によるホワイトアウトとブラックアウトに警戒」
経済産業省資源エネルギー庁 2021年11月26日ニュースリリース「令和2年度エネルギー需給実績【速報】」