JR石勝線寸断!帯広・釧路方面への特急列車の代行輸送なしの異常事態 いったいなぜ!?
2024年8月31日の豪雨災害でJR北海道の石勝線が寸断され、特急列車や貨物列車の運休が続いている。JR北海道によると「少なくても9月2日までは終日運休」となるという。今回の、石勝線の運休ではこれまでにない異変をみせている。
特急列車の代行輸送が全く設定されない異常事態
それは、特急列車の代行輸送が一切、行われていないという点だ。JR北海道は「高速バスなどをお使いください」と案内をしているが、9月1日は帯広・釧路方面の交通機関は高速バスのほか航空便も終日満席で、札幌駅では高速バスや航空便の予約が取れなかった乗客が駅員に詰め寄る姿も見られた。
2016年の台風被害で石勝線と根室本線が不通となった際には、JR北海道は被災札幌ートマム間で臨時特急を運行。トマムー帯広間をバス代行輸送とし、帯広ー釧路間を臨時特急列車が結んだ。昨年2023年8月の石北本線の災害時もJR北海道は札幌ー旭川間で臨時特急を運行。旭川ー北見間を代行バスで結び、北見ー網走間で臨時特急を運行した。
これまでの実例から考えると、札幌ー追分間を臨時特急による運行とし、追分ー新夕張間を代行バス、新夕張ー帯広・釧路間で臨時特急による運行が行われてもおかしくないはずだが、今回はそれがなかった。
昨年の石北本線の災害時に旭川ー北見間で運行された代行バスに乗車した北海道教育大学の武田泉准教授が「代行バスは全6台で運行。バスは道北バス、旭川観光バス、士別軌道バス、北見観光バス、網走観光交通からかき集めた印象で、高速道路を隊列走行。主要駅停車便のバスは1台のみで、途中の上川層雲峡インターで隊列から離れていった」と印象を語ったことは2023年8月19日付記事(北海道「石北本線」寸断で垣間見えた鉄道迂回ルートの必要性 池北線復活はあってもよいかもしれない)で触れている。
代行バスが準備できないのは2024年問題だけじゃない!?
ドライバーの残業規制が強化された2024年度になり、筆者は「ついに代行バスの確保まで厳しくなってしまったか」という印象を受けたが、別の見方もあるようだ。8月31日に帯広発札幌行の特急とかち号が石勝線の占冠駅で停車したままとなり8時間にわたって乗客が車内にとどまった。このときの乗客数は125名でこのうちの80名がJR北海道が手配したバスにのり札幌や帯広に向かったという。
こうした緊急事態のバスの手配ができたことから、「JR北海道は経費のかかる代行バスの運転をあえてせずに赤字額を減らそうとしているのではないか」とYouTube「【北海道】乗り物大好きチャンネル」を運営する北のたぬき氏は指摘する。
先週、室蘭本線の苫小牧や室蘭で豪雨があった際には特急北斗号の一部の列車が運休していたが、この時も代替バスの設定はなく、山線を迂回運転して輸送を確保しようという公共交通を担う事業者としての姿勢も見られなかった。
JR北海道が、国の運輸政策の不作為により資金不足に陥っている事情は理解できるが、これに輪をかけて北海道庁の交通政策の不作為が重なり、北海道では都市間交通ですら安定した輸送の確保が難しくなっている現状が垣間見える。こうした事態が続けば、地域経済や生活に与える負の影響は計り知れないだろう。
※【北海道】乗り物大好きチャンネルさんの当該動画はこちら。
【2024年9月2日追記】
JR北海道より代行輸送が出来なかった理由について「必要台数確保の見通しが立たなかったため」と発表がありました。
(了)