「紀州のドン・ファン」元妻逮捕:疑惑への疑惑
■紀州のドン・ファン事件、元妻逮捕の衝撃
事件から3年。先週、ある人から「あの紀州のドン・ファン事件はもう誰も逮捕されないんですかね」と質問され、私は「いえいえ、まだ警察が捜査を進めているかもしれませんよ」と答えたばかりでした。
あの衝撃的で、ワイドショーや週刊誌好みの事件。人々は忘れてはいなかったでしょう。とはいえ、新しい情報もなし。ほとんど報道もなし。あの事件はどうなったのだろうと、時折思い出す人がいた程度だったかもしれません。
それが早朝の突然の逮捕でした。朝起きて、ニュースを見て驚いた人も多いことでしょう。マスコミ関係者は大慌てで取材に走り、資料のまとめを始めたことでしょう。
■紀州のドン・ファン事件と疑惑報道
元妻の「疑惑」に関しては、3年前に報道し尽くされた感があります。亡くなった方のご遺族であり、容疑者でもないのに、あたかも犯人かのようなひどい報道もありました。確かに、素人が考えても、一番怪しい人ではありましたが。
しかし、私たちは反省し、学んできたはずです。たとえば、オウム真理教による松本サリン事件(1994年)。現在は事実が解明されていますが、当時真っ先に疑われたのは、近くに住む一人の男性でした。
男性の自宅には、普通の家にはない薬品が色々ありました。私は当時の報道を覚えていますが、ある報道では、男性の家族が涙ながらに詫びているというものもありました。
今から考えれば、男性の家にあった程度の薬品や設備で、サリンは作れるはずもありませんでした。涙ながらに詫びた家族については、その後の訂正報道がなかったのでわかりませんが、一家の母親も大きな被害を受けていましたし、マスコミが押しかける混乱の中の様子を、マスコミが家族が詫びているように見てしまっただけなのでしょう。
しかし当時の報道は、その男性が犯人に確定のような印象を、人々に与えました。
しかしながら、週刊誌報道がいつも悪いわけではありません。たとえば「ロス疑惑事件」(1981-1982)なども、悲劇の被害者遺族と思われた男性の捜査を、週刊誌が引っ張ったと言えるでしょう(行き過ぎもありましたが)。
最近の文春砲を初め、過去にも、まだ新聞が書けないような政治家の疑惑を報道し、世間や警察が動いた例も多々あります。
マスコミが動き、世論が動き、そうなると警察も無視はできず、捜査に本腰が入ることもあります。ただし、マスコミが警察や裁判官の代わりとなって裁いてしまうことは、問題でしょう。
■「紀州のドン・ファン」報道
今回の逮捕報道でも、NHKでさえ「紀州のドン・ファン」という表現をかぎかっこ付きで使っていました。3年前も、今回も、世間の目が集まるのは致し方ないかもしれません。まるで2時間ドラマの世界です。
*ドン・ファンとは、17世紀スペインで、戯曲から生まれた伝説上の人物。貴族のプレイボーイです。自分のことを、俺はドン・ファンだと言って女性遍歴を自慢するのは勝手ですが、国語辞典的には「女たらし」といった意味ですから、誰かをドン・ファンと呼ぶのは失礼でしょう。今回の被害者男性は、事件以前から「紀州のドン・ファン」と呼ばれていましたから、かぎかっこ付きなら良いとNHKも判断したのかもしれません。
■「紀州のドン・ファン」元妻の疑惑に対する疑惑
この記事は有料です。
心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法のバックナンバーをお申し込みください。
心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法のバックナンバー 2021年4月
税込550円(記事3本)
※すでに購入済みの方はログインしてください。