「車内販売」終了は列車の速達性向上と本数増がアダに?“ほしい時にほしい物が買えない”
10月末、東海道新幹線の車内販売が惜しまれつつ終了となった。最終日にはアイスクリームの売り切れが続出し、「シンカンセンスゴイカタイアイス」の人気が誰の目にもわかる状況となっていた。
11月に入ってからは、東海道新幹線ではグリーン車でのモバイルオーダーでのみアイスクリームやコーヒーなどを提供するようになったものの、品数は少なくなっている。
山陽新幹線では車内販売はしばらく残るものの、将来的には廃止するしかないことを、JR西日本の社長が記者会見で述べていた。
車内販売がなくなる理由とは?
なぜ、車内販売はなくなるのか?
その理由としては、まず「人手不足」ということが挙げられる。鉄道各社の記者会見の報道や、さらには筆者が鉄道会社関係者から聞いたことによると、車内販売の仕事をしてくれる人がなかなか集まらないという。そういった状況は、コロナ禍前から続いていた。
さらにコロナ禍で、私鉄を中心に車内販売を終了ということがあった。その上、コロナ禍初期は列車の本数が臨時に削減されることもあり、ただでさえ時給制の契約社員が多い車内販売員の雇用は不安定になった。
いっぽう、新型コロナウイルスの感染はいまだ完全に終息したとはいえないものの、鉄道の利用がもとのように戻り、多くの人が長距離を移動するようになった。その時に、コロナ禍でいったんお休みとなった車内販売で働く人たちは、戻ろうとしただろうか? すでにほかの仕事に移っていた人も多いかもしれない。
もうひとつの理由として、「利益にならない」というものがある。近年は、車内販売で扱う品物の数を減らしている。扱う駅弁なども減った。お酒なども点数が減っている。
またコロナ禍において、お酒などの扱いを一時取りやめたことがある。
いっぽう、近年は駅構内の売店などが充実し、そこで買い物をする人も増えている。
その上で、列車の速達性が向上し、車内販売が何度も列車内を行き来することが難しくなっている。そうなると車内販売は「利益にならない」のだ。
「人手不足」「利益にならない」には別の側面が
いっぽう、「人手不足」にならざるを得ない状況もある。
車内販売がもっとも栄えていたであろう国鉄時代よりも、列車の本数が格段に増えているのだ。東海道新幹線の「のぞみ12本ダイヤ」が示すように、東京~新大阪間に1時間当たり最大12本「のぞみ」を運行できるようになっている。その他の新幹線もしかり。在来線特急も、かなりの高頻度で運行されている状況だ。
つまり、本来ならば昔より車内販売員が必要な状況になっている。そんな中で、車内販売員を乗車させる列車を絞らなくてはならないということになる。東海道新幹線は「こだま」の車内販売をやめている。山陽新幹線は、「のぞみ」のみとなり、九州直通列車での車内販売は復活していない。東北新幹線も主要列車のみとなっている。
人手不足のために車内販売を乗車させることができないようになり、列車の本数を増やすと1列車あたりの車内販売員を減らすことになり、十分なサービスができないようになる。その結果、東海道新幹線では東京駅を出てかなり経ってから車内販売が来た、という事態が発生している。
乗車してすぐに車内販売が来るとは限らず、車内販売で弁当などを必ず買える状況ではなくなってきた。だが国鉄時代の長距離特急のように途中駅で補充して、ということもない。車内販売でお目当てのものが手に入らなかったという経験をした人も増えてきただろう。そうしたミスマッチからも「利益にならない」という状況が生まれたと考えられる。
過去に、コストカットのためJR東日本の車内販売では、アイスクリームやコーヒー、駅弁の扱いをやめたということがある。駅弁はともかく、アイスクリームやコーヒーはリクエストが多く、その後復活した。アイスクリームやコーヒーが車内販売の利益に直結する商品だということもわかったのだろう。コストがかかるからという理由で、車内販売で人気の品物をやめるということにより、失ったものも大きいのだ。
それでも、東海道新幹線では普通車の車内販売が終了する。環境の変化に、車内販売が抱える高コスト体質が維持できなくなってきた、というのが現状ではないか。