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新型コロナウイルス感染者数のメディア報道は根本的に間違っている。一刻も早くただしてほしい

山田順作家、ジャーナリスト
感染拡大が止まらないイタリア、ついに北部封鎖に(写真:ロイター/アフロ)

 相変わらず、多くのメディアが、感染者が今日は何人増えた、どこで感染者が出たという報道を繰り返している。世界の感染者数に関しては、マップをつくり、地図上にその数字を表示している。

 テレビに出ているコメンテーターも、その数字をもとにコメントしている。ひどいコメンテーターになると、「諸外国に比べて日本はまだ少ない」と平気で言う方がいる。

 しかし、本当にそうだろうか?

 現在(3月9日)の各メディアの報道による各国の感染者数は、次のようになっている。

中国 8万651人(死亡3070人)

韓国 7041人(死亡48人)

イラン 5823人(死亡145人)

イタリア 4636人(死亡197人)

日本 1155人*455人(死亡13人)

フランス 716人(死亡11人)

ドイツ 684人

スペイン 401人(死亡5人)

米国 338人(死亡14人)

スイス 214人(死亡1人)

オランダ 188人(死亡1人)

英国 164人(死亡2人)

 メディアが伝えるこの数字は、ほとんどが、WHO(世界保健機関)やCDC(米疾病対策センター)の情報をまとめたCSSE(ジョンズホプキンズ大学システム科学工学センター)の数字に基づいている。上記した数字は、7日午後10時半時点のCSSEの発表数字だ。

 しかし、この数字は実数ではない。「確認されたケース」(confirmed cases)である。つまり、その背後には「確認されていない感染者」がいるわけで、その数は、検査が十分に行われていないのだから、まったくわからない。とくに日本の場合は、検査数が圧倒的に足りない。保健適用されたとはいえ、症状のない人間はいまだに検査が受けられないのだから、知る術がない。

 それなのに、メディアは「確認された」という、もっとも重要な部分をはしょって、「感染者数」として報道している。そのため、報道を受け取る側は、その数が実数だと思い込み、「日本は感染者数が少ない」と認識してしまう。

 具体的に言うと、韓国が7041人で、日本が1155人だから、「日本のほうが少ない」=「日本のほうが韓国よりまだ安全」と思い込む。こうした誤った認識を広めているメディアの責任は重い。メディアの使命は、事実を正確に伝え、国民の安全を守ることだ。政府の対応が後手後手に回っている以上、メディアがこの基本的なことを行わないと、誤った認識で国民は危機にさらされる。

 私が見たところ、感染者数の報道で、常に「確認された」を付けて報道しているところは少ない。

 3月8日、イタリア政府は、北部諸州をロックダウン(封鎖)した。これにより、域内のヒトの流れはストップする。いまのところ、感染拡大を防ぐには、この方法しかない。

 イタリアの感染者数は4636人と日本より圧倒的に多いから、政府は仕方なくこの措置をとったと思うのは勝手だ。日本も感染者数がこれくらいになれば、一部の地域を封鎖しなければならないだろうと予測するのも勝手だ。

 しかし、そうした予測には根拠がない。「確認された」を付けないで報道するメディアは、即刻、「確認された」を強調してほしい。感染マップに単に「感染者数」と記すことを止めてほしい。

 イタリアの北部諸州の閉鎖措置を受けて、テレビのインタビューに日本からの留学生が、こんなふうに答えていた。

「早く安全なところに出なければ身動きができなくなります。すぐに帰国します」

 しかし、日本は安全だろうか?世界のどこに安全なところがあるだろうか?

 ここまでの経緯で言えるのは、封鎖された地域のほうが感染拡大が止まり、封鎖されていない地域より安全だとうことだ。中国の南京市は徹底的にヒトの流れを止め、ショッピングモールや飲食店を閉め、ヒトの移動には体温検査を義務付け、地下鉄に乗れば乗客情報の登録を求めた。その結果、2月15日以来、感染者をゼロに抑えた。

 台湾やシンガポールも徹底した感染拡大防止措置をとってきた。

 なぜ、日本のメディアは国民に向き合わないのだろうか? ついでに言うと、安倍首相の先日の記者会見の報道などでも、メディアは正確を欠いている。

 たとえばなぜ、「首相は『さまざまな課題については、私の責任において万全の対策を行っていく』と述べた」と報道するのだろうか?

 正確を期すなら「首相は『---』と、官僚が用意したペーパーを読み上げた」とすべきだろう。

 政府の専門家会議、対策会議などの冒頭でも、また国会でも、首相はペーパーを読んでいる。そうなら、そうと正確になぜ報道しないのだろうか?

 新型コロナウイルスの感染者数、最新情報などに関してより正確に知りたいなら、ジョンズホプキンズ大学の「健康安全センター」(Center for Health Security)のホームページにアクセスすることをお勧めする。

http://www.centerforhealthsecurity.org/resources/COVID-19/

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作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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