強敵ソフトバンクから藤浪らが毎回の17奪三振!榮枝が決めた最終対決《阪神ファーム》
きのう16日、阪神タイガースの俊介選手が引退を発表しました。この日は甲子園球場でウエタン・ソフトバンク戦が行われ、その試合前練習を終えたところで会見に臨んだ俊介選手は、今季限りでの引退を表明。ここ1、2年はいろいろ考えることが多くなり、最近になって引退という思いも出てきたと言います。
「ここ2年、ずっと肩の調子が悪くて守備もろくにつけない状態で。自分の中で守備を抜かしてしまうと、野球じゃないなというのもあった。そこは大きな原因」
この2シーズンはコロナ禍の取材制限により、たとえば試合に出ていない選手に何があったのかを知るのは難しいですね。また、新人や若手を起用するために中堅選手の出場機会が減る場合もあるので、余計にわかりづらい。もちろん現場にいたとて、それを個々に取材できない状況ですから。
そういう中、代打で出てキッチリ仕事もしていた俊介選手なので、まさか守備につけないほどだったとは…。「これを言い訳にはしたくないと思って、努力しながらやっていたんですけど、こういう決断になりました」と経緯を述べています。会見では何度も感謝の言葉を述べ「12年間、あっという間でした。精一杯やって悔いはありません」とも。
シーズンはまだ残っていますし、平田勝男監督から「後輩たちに背中で教えてくれ」と言われたそうで、俊介選手も「最後までやると決めているので、しっかり前を向いて、後輩たちの手本になれるようやってきたい」と話していました。
その平田監督は「本当にね、ファームの選手の見本として俊介はよくやってくれた。非常に存在感というかガッツあるプレーや守備とか、食らいつくバッティングとか。走塁にしてもスペシャリストだったんでね。彼は生え抜きとして、最後までタイガースで貢献してくれた」と振り返ります。
「ここ2年、1軍に上がる機会はほとんどなかったけど、本当にひたむきにファームの若い選手と必死に汗を流した。一番早く来るのは俊介やねん。いち早く来て、ランニングして準備しているのは俊介。こういうところは、若い子たちも見習わなあかんな」と、その人柄や功績をたたえました。
そして「俊介にも勉強せえ!って言ってるねん。まだまだ野球しか知らないんだから。どういう道を歩むかは、またいろいろアドバイスする。これからの俊介の人生で、タイガースで頑張った経験を生かして欲しいな」と締めくくった平田監督。どんな形にせよ、あの俊介選手のくしゃくしゃっとした笑顔はまだ見たいですね。
思い出に残る伊賀の自主トレ
ファームの試合後にコメントをもらったりしたことはありますが、私にとって俊介選手はずっと1軍の選手なので、あまり長く話したことはなかったですね。でも原口文仁選手が、俊介選手に誘ってもらって参加した伊賀での自主トレにはお邪魔して、いろいろ聞かせていただきました。今も忘れられません。
引退会見に、新井良太コーチとともに花束を持って駆けつけた原口選手も「僕が1軍に出るきっかけを作ってくれた先輩」と言っていたように、この自主トレもまた大きな契機となったはず。「感覚がよすぎて帰るのが怖い」と打ち上げの日に原口選手が語った2016年の自主トレについては、こちらからご覧ください。→<俊介選手と原口選手の伊賀自主トレ>
なお9月25日のウエスタン・オリックス戦を俊介選手の“引退試合”とすることが、きのうの会見後に発表されました。もともと鳴尾浜で行われる予定だった24日からのオリックス3連戦ですが、これも同じタイミングで甲子園開催に変更されています。
前の記事で「16日のソフトバンク戦が甲子園での今季最後」と書いたのですが、嬉しいことにあと3試合増えました!しかも阪神にとっては今季最終カード。もちろん人数や座席の制限はあると思いますが、無事に開催されるよう、そして新たな台風も来ないで!とみんなで祈りましょう。
再び首位、そしてマジック点灯
さて、阪神ファームは15日のソフトバンク戦で1か月半ぶりの黒星を喫し、球団やリーグやファーム全体の最多記録を大きく更新した連勝も18でストップしました。いったん首位をソフトバンクに譲ったものの、似たような勝率のうえ残り試合もまったく同じなので、互いに抜きつ抜かれつしながら最後までいくと思われます。
現に16日の今季最終対決は阪神が勝って対戦成績を13勝13敗2分けの五分に戻し、首位を奪回。阪神に優勝へのマジックナンバー9が点灯しました。とはいっても残り9試合で9ですからねえ。阪神が全勝すれば勝率.6765、同じくソフトバンクは.6698。わずかな差で阪神が上回る計算…。ま、数字上です。
ちなみに、きょう17日は中日-阪神戦(ナゴヤ)が雨天中止。ナイターのソフトバンク-広島戦(タマスタ)も台風接近のため中止になりました。これで阪神のマジックナンバーは1つ減って8。ただし18日に阪神が負けるか引き分け、ソフトバンクが勝つか引き分けで、阪神のマジックは消え、今度はソフトバンクに7が点灯します。
要するに今のところ阪神が少しだけ、ほんの少しだけ有利ではあるけど、最後までわからない状態だということです。それより1軍選手を脅かすような活躍でアピールし、公式戦終了後は1軍の優勝に貢献する選手たちが出てくれば最高!おのずと、ご褒美が向こうからやってくるでしょう。
毎回の17三振を奪った投手陣
では16日の試合結果を書いておきます。実は私もチケットを買ってスタンドで観戦してきました!1軍、ファームを通じて今季初です。皆さんは間隔を取って座り、声も出さず、掲げたタオルと拍手で精一杯の応援をされていましたよ。静かな場内に延々と響く拍手が胸にしみてくるようです。
先発は藤浪晋太郎投手で、前回は8月26日のオリックス戦で7回を投げ、佐藤優選手に許したホームランのみの1失点。毎回の12三振を奪う好投だったのですが、何といっても立ち上がりの6連続三振は圧巻でした。
そのあと1軍へ上がり、戻ってきて初登板となったこの日も5回1失点で、やはり毎回の11奪三振!最速157キロの直球や110キロ台の変化球もあり、与えた四死球は2つだけと制球面も問題なかったですね。
7回から登板した投手陣にもそれぞれ三振を取っていて、藤浪投手を含む5人で毎回の17奪三振を、なんとソフトバンクの先発全員から奪っています。三振しなかったのは途中出場の野村大樹選手と代打の中谷将大選手だけ。スコアブックが青いです。
《ウエスタン公式戦》9月16日
阪神-ソフトバンク 最終28回戦 (甲子園)
ソフ 010 000 000 = 1
阪神 000 200 00X = 2
◆バッテリー
【ソ】杉山(3回)-●川原(2勝1敗4S)(1回)-高橋純(1/3回)-田浦(1回2/3)-嘉弥真(1回)-泉(1回) / 渡邉陸-九鬼(7回~)
【神】○藤浪(2勝1敗)-岩田稔-尾仲-エドワーズ-S小林(1勝2S) / 榮枝
◆盗塁 神:佐藤輝(1)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]中:江越 (3-1-0 / 2-1 / 0 / 0) .245
2]遊:山本 (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .299
3]一:板山 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .258
4]三:佐藤輝 (4-2-0 / 2-0 / 1 / 0) .150
5]右左:陽川 (3-2-0 / 0-1 / 0 / 1) .271
6]左右:高山 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .212
7]捕:榮枝 (4-1-2 / 0-0 / 0 / 1) .266
8]指:片山 (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .200
9]ニ:遠藤 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .214
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速
藤浪 6回 98球(4-11-2/1-1/3.18)157
岩田稔 0.2回 15球 (1-1-1/0-0/ 2.03)143
尾仲 0.1回 6球 (0-1-0/0-0/ 1.50)145
エドワ 1回 14球 (0-2-0/0-0/ 3.00)148
小林 1回 19球 (1-2-1/0-0/ 1.00)146
※“球”は四球と死球の合計
《試合経過》※敬称略
藤浪は2回、先頭の水谷に左前打され、増田の投ゴロで二塁へ。続く高田に左前タイムリーを浴びました。バックホームされたボールを榮枝がセカンドへ悪送球、高田を三塁まで行かせてしまいますが、後続を連続三振に仕留めた藤浪。3回は死球と味方エラーがあったものの無失点。4回は三者凡退です。
ソフトバンクの杉山に対し、1回は江越、2回は陽川と先頭がヒットで出るも走者を二塁まで進められなかった打線。しかし3回に板山の強烈なピッチャー返しを受けて倒れ込んだ杉山から、川原に代わった4回が試合を決めるイニングとなりました。
先頭の佐藤輝が右前打と暴投、陽川は四球を選び、高山がきっちり初球で送って1死二、三塁とします。ここで榮枝が叩きつけた打球は、高いバウンドでセカンドの頭を越えセンター前へ。佐藤輝と陽川が相次いで生還!逆転成功です。
5回の藤浪は連続三振で2死を取ってから、1番の明石に中前打、真砂に四球を与えて一、二塁としますが、3番・柳町は空振り三振。6回はまた2三振などで三者凡退に切って取り、6イニングで11の三振を奪って交代。ここまでで三振していないのは4番のアルバレス、ただ1人でした。
7回は岩田稔で、先頭の高田は三振だったもののヒットと暴投、四球などで2死一、二塁としたところで降板。代わった尾仲が真砂を三振に仕留めて事なきを得ています。8回のエドワーズは柳町を遊ゴロ、アルバレスと水谷はともにスライダーで見逃し三振!見事な三者凡退ですね。
一方、逆転したあとの打線は5回に、2四球と陽川の左前打などで2死満塁と攻めながら追加点を挙げられず、6回と7回は三者凡退。8回は先頭の佐藤輝が右前打を放って盗塁も決めますが、後続を断たれ無得点。2対1のまま迎えた9回は小林が登板しました。
1死後に高田の中前打と野村への四球で一、二塁となり、安藤投手コーチがマウンドへ。次の九鬼に対してはスリーボールからフルカウントまで持ち直し、6球目のフォークで空振り三振!榮枝が三塁へ送球し、二塁走者の高田に佐藤輝がタッチしてアウト!最後はルーキーコンビの三振ゲッツーで試合終了です。
求められるのは1軍での修正力
平田監督の話です。藤浪投手について「よく粘った。悪くないよ。ああやって際どいボール。真砂の1球(死球)だけかな。その後もしっかり修正しているし、ソフトバンクもいい打線なんで。けん制もしっかり投げたし、スチールもされてないでしょ?そういうところで粘れたことは非常に評価できると思うね」とコメント。
本人は、直球を狙われている中で変化球を使ったと話していました。「この前は〝榮枝がおもしろいリードをする〟って言って。きょうはちょっと意図があったんじゃない?首を振って膝元にスライダー投げたり、自分が主導権を持ってやっていたわな」
1軍に推薦できる内容だったか?と聞かれ、平田監督は「これを1軍で、あの舞台で出すか出さないかは本人(次第)。ファームではよかったとか、我慢して投げたとかは、若いピッチャーや実績のないピッチャーに言うことであって」と答え、9日の1軍・ヤクルト戦を例に挙げて続けました。
「1回目はバチーンと(三者凡退で)いって、2イニング目に突然フォアボール、フォアボール、フォアボールでしょ。その修正能力が1軍でないわけやん。それを上でつけていかないと。ファームでこのくらいのピッチングは珍しくもなんともないやん」。そこはやはり藤浪投手の主戦場が1軍であるという前提での言葉ですね。
「あとは打球が上がるかどうかだな」
次に、2安打した佐藤輝明選手のことは「ちょっと迷いじゃないけど、バッタースボックスでいろんなことを考えながらやっているふうな感じがあったんで、考えるのは練習の時だけで打席に入ったらシンプルに、と。春先に1軍でやってる時もそういうイメージだったと思う」と言います。
「それが今いろんなことで、ああかな?こうかな?と、しっくりこないことがあった。まして広島戦から、いいピッチャーばっかり投げてくれて。もっと打席でピッチャーと勝負しろと。練習ではいろいろ試行錯誤してもいいけども。そのへんの話はきのう輝としたんだけど」と平田監督。
そして「まあ、あとは打球が上がるかどうかだな。練習ではガンガン(ホームラン)いっているけど、ゲームでゴロのヒットとラインドライブのライト前。打球の質が上がってくると、もっといい状態に戻ってくる」とのことです。ヒットが出て、浮上のきっかけになりますね。「それはもちろん。ノーヒットと、ヒット2本出ることによって気分はもう全然違うよ」。雨でこれ以上、試合間隔が空かないように祈ります。
勝負強さを見せてくれる榮枝
榮枝裕貴選手がまた逆転打!「榮枝ね。これはもう、榮枝なんて名前はね。枝葉が今、伸びているところやな。勝負強い、何とかしてくれそうな感じはあるもんね。そこはやっぱり榮枝の勝負強さ。きのう(15日)も代打で出てきてヒットでしょ。そういうところは評価していいんじゃない?」
榮枝選手は8月24日から7試合連続安打で、その間が20打数8安打8打点、打率.400。2打点ずつ挙げた4試合も印象的でしたね。また「18連勝中も榮枝は輝に、ずっとシステムなどのレクチャーをしてくれているし。そういった意味で非常に、人間的にもね。榮枝は名前のごとしやな」と大絶賛の平田監督。
16日の中前打も「やっぱり食らいついていこうという執念とか、何か事を起こそうという気持ちが、ああいうバウンドになった。合わせにいくとセカンドゴロにしかならないけど、きちっとスイングしているから、ああいうバウンドでヒットになる。ずっと勝負強さというのは見せてくれるね」と決勝打を振り返って、その姿勢にまた高評価です。
個人タイトル獲得の条件
最後に、これで首位に戻ってマジックが点灯したと告げられ「もう、そんなことは言うな」と予想通りの返事だった平田監督は「でも、きのう負けて、きょうはこれがうちの持ち味。高山や(山本)ヤスのバント、こういうのをしっかりやったことが榮枝のタイムリーにつながったんで。いいピッチャーにボコボコ点は取れんよ。ちょっとミスが出たのは、もう一回締め直す」と言っていました。
残念ながら17日の中日戦は中止になり、18日の名古屋も微妙な感じです。3連戦の先発は17日が球団選定ファーム8月度月間MVPを受賞した牧丈一郎投手、18日が西純矢投手、19日は村上頌樹投手の予定。西純投手と村上投手は規定投球回数を割ってしまったものの、あと2試合ずつ先発して4回か5回投げれば最終の規定には届きます。
特に村上投手はランキングからいったん消えたものの、勝利数9も勝率9割も防御率2.40も、“裏”でトップです。残り9試合で7イニング投げれば“表”で3冠!そのあたりは例年、監督やコーチも考えて何とか届くように段取りしてくれるはず。西純投手もあと8回1/3で最終規定投球回に到達します。雨と台風だけ勘弁!ですね。
それと小野寺暖選手が打率.319でずっとトップにいて、このままなら首位打者と出塁率の2冠を獲れるかも、と思っていたら…阪神が残り9試合すべて消化すると、小野寺選手は最終的な規定打席数を下回ってしまいます。きょう雨天中止になったナゴヤ球場で取材を受けた平田監督が話してたので、慌てて計算しました。確かに3打席足りません。
まあ3打席なら1試合どこかで出れば、と思ったんですけど、1軍とファームの試合場所が見事にバラバラ。今は1軍が甲子園でファームはナゴヤ、来週前半は1軍がバンテリンドームでファームは由宇、そのあと1軍は東京ドームでファームが甲子園。1軍を欠場するなんてことはあり得ないですからね。
でも、あす18日がもし中止になれば残り7試合となり、286打席あれば規定到達です。そして現時点の小野寺選手は286打席!もう試合に出られなくても首位打者の資格は得られますよ。18連勝に大きく貢献した小野寺選手にも、どうかご褒美をあげてください。
<掲載写真は筆者撮影>