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飲食店にラストオーダー時間の「ぎりぎり入店」は迷惑? 年末に向けて知っておきたい営業時間の裏側

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

年末の外食

年末になると、パートナーや友人、親類や同僚と一緒に、食事に行く機会が多くなります。ぐるなびの調査によれば、忘年会について「参加する」が職場で28%、プライベートで26%、「開催されれば参加する」は職場で28%、プライベートで32%ということです。

【ぐるなびリサーチ部】忘年会に関する調査/ぐるなび

「参加する」「開催されれば参加する」を合わせれば、職場、プライベート共に60%近くにも上り、半数以上が忘年会に積極的であるといえます。

アンケートでは忘年会に焦点が当てられているので、忘年会以外の外食はこれには含まれていません。したがって、忘年会だけで半数以上の人が外食するということであれば、年末にはかなり多くの方が外食することになるのではないでしょうか。

ラストオーダー時間ギリギリの来店

外食する際に、予約していれば確実に入店できますが、予約しないで飲食店に訪れることもあります。遅い時間、それもラストオーダー時間の間際に入店した経験はあるでしょうか。

飲食店で「じつは歓迎されていない」客の行動。閉店ギリギリの来店で残業覚悟/日刊SPA!

日刊SPA!に「ラストオーダー時間ギリギリに来店する客」が歓迎されていないという記事がありました。飲食店のスタッフが「遅い時間に食べるのに時間のかかる料理を注文するのは本音ではやめてほしい」とコメントしているのです。

この発言について、飲食店の立場やあり方、飲食店を取材したり、ひとりの客として訪れたりする私の体験も含めて考察していきましょう。

飲食店の営業時間

飲食店を営業するには、自治体の保健所から飲食店営業許可をとらなければなりません。ただ、法的に制限されていないので、飲食店は基本的に営業時間を自由に設定できます。ただ、入居している施設のルールで営業時間に制限が設けられることはあるので、契約するにあたって、これには従わなければなりません。

また、バーや居酒屋など、主食(米飯類、めん類、菓子パンを除くパン類、ピザ、お好み焼きなど)を常に提供しておらず、お酒が中心となっている業態において、0時から6時までの間にお酒を提供するには、深夜酒類提供飲食店営業開始届を警察署に提出する必要があります。

ちなみに、風俗営業の接待飲食等営業に該当する飲食店は原則0時までしか営業できず、深夜酒類提供飲食店営業と併せることはできません。

食べ物と飲み物のラストオーダー

営業時間と同じように、ラストオーダーの時間も、飲食店が自由に決められます。食べ物と飲み物とで、オーダーストップの時間が異なるもの。食べ物は営業終了時間の1時間前、飲み物は営業終了時間の30分前が一般的です。

料理によってラストオーダーの時間が異なることもあります。たとえば、アラカルトの飲食店では、焼き上がるのに時間を要する料理に関しては、前半のオーダー時に注文しないと受け付けてもらえません。

ラストオーダーがない場合

一斉スタート同時進行のおまかせコースであったり、一回転だけさせるファインダイニングであったり、複数回転の最終回のカウンターガストロノミーであったり、ウォークインを受け付けない完全予約制のレストランであったりすると、ラストオーダーの時間を設けていないことも多いです。

その理由は、飲食店が流れをコントロールできたり、高級店がゆえに営業時間に融通を利かせたりすることが主な理由です。

こういった飲食店では、その日の状態によって、いつまでに何をオーダーできるかが決まります。

ラストインと滞在時間

ラストオーダー以外に、時間に制限が設けられていることもあります。それは、ラストインと滞在時間による制限です。

ラストインの時間を定めている飲食店は少なくありません。ラストオーダーとは違って、ラストインはあまり聞き慣れない言葉かと思います。ラストインとは、last in=最終入店のことを意味しており、この時間までに、飲食店に訪れて案内してもらわなければなりません。

ラストインの時間を定めていない飲食店であれば、ラストオーダーの時間がラストインの時間となります。これとは反対に、ラストインの時間だけが定められており、ラストオーダーの時間が定められていない飲食店も珍しくありません。

また、カフェやブッフェスタイルの業態、飲み放題のコース、繁忙期の飲食店では、滞在時間が定められている場合もあります。滞在時間とは入店から退店するまでの時間であり、60分から120分くらいがほとんどです。

スタッフの人数

飲食店におけるスタッフの人数は、流動的です。開店前の料理の仕込みやテーブルのセットアップなどから増えていき、ランチタイムでは12時から14時、ディナータイムであれば18時から20時くらいのピークタイムが最も多いです。ディナーのピークタイムの後からは、閉店に向けて少なくなっていきます。

ラストオーダーの時間くらいになると、小箱の飲食店ではなくとも、キッチンもホールも、それぞれ1人のスタッフで回すという飲食店も珍しくありません。会計対応やクローズ作業も始まり、ラストオーダーのあたりでは色々な業務が発生します。

スタッフの立場からすれば、人数が少なくなっているのに、様々な業務が発生するので、ラストオーダー時間ぎりぎりの来店は、あまり歓迎できないのは理解できます。

料理人とサービススタッフの原動力

飲食店にとっては、1人でも多くの客に訪れてもらい、1品でも多くオーダーしてもらうことは、経営的に好ましいことです。その方が売上は増えますが、これだけではありません。

本来であれば、料理人は客においしい料理を食べてもらって喜んでもらい、サービススタッフは客に心地よく楽しく過ごしてもらいたいと思うものではないでしょうか。

これこそが、料理人やサービススタッフが飲食店で働く原動力であるように思います。

体制を整える

仕事の“上がり”が見えてきたところで、想定外の対応が入ってくれば、面倒に思うかもしれません。しかし、飲食店の営業時間や営業に関するルールを決めているのは、他ならぬその飲食店自身です。

ラストオーダーの時間帯に高い負荷がかかるようなら、余裕をもったラストオーダーの時間に変更したり、スタッフの人数を増やしたりして、対応するしかありません。

年末に向けて客が増えていく一方で、スタッフの確保は難しくなりますが、手当を捻出したり、時給を上げたりするなどして、一年で最も大きな繁忙期を乗り越えていただきたいです。

一期一会

飲食店と客は、まさに一期一会。

せっかく訪れてくれた客に、心地よい空間でおいしく食べて満足してもらえるように、飲食店には、ラストオーダー時の来店にも、何とか応対してもらえることを願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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