米海兵隊の無人地対艦ミサイル車両「NMESIS」の無人走行試験動画
アメリカ海兵隊の次期主力兵器である無人地対艦ミサイル車両「NMESIS(ネメシス)」の走行試験動画がアメリカ軍の広報サイト「DVIDS」で公開されています。走行試験は2021年2月から2022年2月までに実施されたもので、動画は2023年6月2日に公開されました。
NMESIS Launcher Mobility Characterization 2021 - DVIDS ※動画
なお小型の4輪車両がNMESISで、一緒に写っている6輪車両は別の無人試験車両(MTVR中型戦術トラックの無人型)です。この動画ではNMESISの無人試験車両は最大3両(ランチャー有り2両、ランチャー無し1両)を同時に確認できます。
- 複数の無人車両で車列を組んでUターンしてすれ違いながら走行
- 道路上に障害物を置いて緊急停止
- 幾つもの丸太の上を走行
- 森の中を走行
- 未舗装路および市街地を模した狭い道を走行(NMESIS視点)
- 未舗装路走行
- 登坂
- 渡河
- 複数の無人車両で車列を組んで走行
動画で紹介されているNMESIS機動特性評価の試験は以上の内容です。兵器であるため野外での試験で、一般車両が走行しているような公道ではまだ試験されていないようです。
海軍海兵隊遠征船舶阻止システム「NMESIS(ネメシス)」はアメリカ海兵隊の新構想である島嶼戦に対応したEABO(遠征前進基地作戦)を実施するために用意された実戦配備間近の新兵器です。陸海空を立体的に機動して展開・攻撃・撤収を繰り返すことで敵に居場所を掴ませないEABO戦術の為に、NMESISは地対艦ミサイル発射車両として世界初の「ヘリコプターで吊ってスリング輸送」を実現しました。
- 地対艦ミサイル発射機をヘリコプターで吊って輸送したい
- その為には小さな4輪車両に地対艦ミサイルを積む必要がある
- 無人化して操縦席を無くし空いた空間をミサイル搭載用に足す
NMESISの無人化の目的は小型化による空中輸送性の向上にあります。実は無人で戦うことで兵士の命を危険に晒さないようにするのが目的ではありません。そもそもNMESISは兵士が随伴して運用します。車列の先導や落伍した時の復旧、輸送機や輸送艦に載せる際の細かい車庫入れ、予備弾をクレーンを用いて再装填、敵コマンドの襲撃を警戒する護衛、対艦目標情報の受け取りと射撃先指定など、NMESIS部隊は現場で人間のやる仕事は沢山あります。無線の遠隔操作ではどうにもならないことも多く含まれています。無人兵器といっても無人であることは目的ではないのがNMESISの特徴です。
世界で初めて本格的に大規模に運用される無人車両システムが地対艦ミサイル発射車両であるという意外過ぎる未来が目の前まで来ています。アメリカ海兵隊は2023年中にハワイを拠点とする第3海兵沿岸連隊(MLR)でNMESISの運用を開始する予定です。
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