ついにやってきたiDeCo無料化の波 それでは金融機関はどこを選ぶのが正解か【実名を紹介】
※YouTubeで本記事の解説動画をアップしています。リンクは記事末尾にもあります。
みずほ、りそな……iDeCo無料化の波というニュース
先日、日経新聞をチェックしていたら、iDeCo(個人型確定拠出年金)に関する記事をみつけました。
税制優遇が強力で人気となっているiDeCoについて、手数料を引き下げる金融機関が相次いでいるというものです。
1/13 日本経済新聞 イデコ無料化の波 りそな・みずほ、加入4割増の勢い
(全文閲覧は有料会員のみ)
ポイントとしては
・昨年10月の加入者範囲の拡大(企業型確定拠出年金加入者が個人型確定拠出年金であるiDeCoにほぼ無条件で同時加入できるようになった)の影響で新規加入者が前年同月比4割ほど増大している
・iDeCoの規制緩和(限度額の引き上げや70歳までの拠出を可能とするなど)は、資産所得倍増プランの流れの中でさらなる検討が行われ改善に期待が持てる
・これを受けて、りそな銀行やみずほ銀行は条件付きとしていた手数料無料の範囲を広げ、誰でも無料とする用意をしている
ということです。
このうち「前年比4割増」の現象については別のコラムで解説をしたいと思っているので、今回は「手数料無料化の波」という話をしてみたいと思います。
記事では「管理手数料」という言葉を用いていましたが、何の手数料が無料化されるのか、誤解をしないようにする必要があります。
iDeCoには口座管理手数料がかかる 無料になるのはその一部
iDeCoにはいくつかの「手数料」がかかります。主なものとしては、
1.口座開設時……口座開設時に新規加入の手数料がかかる(国民年金基金連合会(2829円)が取る。
2.iDeCoに資産を持つ人(運用指図者)……口座管理手数料を信託銀行(月66円)が取る(一部の運営管理機関は上乗せすることもある)
3.iDeCoに積立をする人(加入者)……口座管理手数料を国民年金基金連合会(月105円)と信託銀行(月66円)が取る(一部の運営管理機関は上乗せすることもある)
4.投資信託で運用をしている人……投資信託を保有している場合は、それぞれの投資信託が定める運用管理費用がかかる(運用会社、販売会社、信託銀行が取る分)
このうち(1)については初回一度きりの負担です。(2)と(3)はどちらかの立場でかかります。iDeCoに新しく加入し積立を始めたい人は(3)のほうに該当します。
(4)は投資信託で運用をしているかどうかによります。定期預金等の元本確保型商品は基本的に手数料がかかりません。
(このほかには年金等で振込をしてもらう場合に振込手数料が生じるケースなどがある)
いずれにせよ、口座をとりあえず作っておいても手数料はかからない銀行預金口座、証券口座、NISA口座とはちょっと違うところです。
今回のニュースで「無料」というのは(2)ないし(3)の場合にカッコつきで触れている「金融機関各社の手数料」です。
金融機関の管理手数料は各社が自由に決められる
iDeCoは金融自由化の時代の産物なので、「手数料の自由化」も金融機関に認められました。各社が手数料を取るかどうかを判断していいわけです。
手数料を取ればビジネスの採算は安定しますが(事務コスト等をユーザーに負担させられるので)、手数料を取ることで新規加入者が伸び悩むリスクもあります。
かつては金融機関の管理手数料無料は少数派でした。採算を優先した結果、iDeCo口座は10年かけても数十万程度にとどまりました(当時はiDeCoという愛称もありませんでしたが)。
しかしiDeCo(規制緩和時に愛称を定めた)がスタートした際に、勝負をかけた金融機関が「管理手数料無料」ないし「条件付き無料」を次々打ち出しました。
結果としてiDeCo口座は10倍以上に拡大したので「無料化」の意義はあったといえます。
しかし、今でも管理手数料を取る金融機関があります。とある地方銀行は、上記の手数料にプラスして、月589円の手数料を取っています。これだけで年7068円ですから、すでにかかっている月171円を加えると、年9000円を超えてきます。運用成績が相当高くてもマイナスになりかねない価格設定です。少なくとも、こうした銀行ではiDeCoを開設しなくてもいいでしょう。
基本的には「金融機関(運営管理機関という)は管理手数料無料」でiDeCoの口座開設先を選ぶといいでしょう。
すでに金融機関分を無料としているiDeCoはどこか
それでは、具体的な金融機関を調べてみます。金融機関の事務手数料、無料にしているところをリサーチするには比較サイトが便利です。
例えばNPO確定拠出年金教育協会が作成している「iDeCoナビ」を活用するとすぐに絞り込みができます。
iDeCoナビ https://www.dcnenkin.jp/
執筆時点で金融機関の口座管理手数料ゼロ円としているところをリストアップすると以下のとおりです。
【銀行系】
- イオン銀行
- 三井住友銀行(みらいプロジェクト)
- りそな銀行(条件つき)
- ソニー銀行(条件つき)
- 第一生命保険(条件つき)
- みずほ銀行(条件つき)
【証券会社・運用会社系】
- 岡三証券
- さわかみ投信
- 大和証券
- 野村證券
- 松井証券
- マネックス証券
- 楽天証券
- auアセットマネジメント
- auカブコム証券
- SBI証券(セレクトプラン)
- SMBC日興証券
※執筆時点2023年1月20日の検索結果から作成
先ほどの報道にあった、りそな銀行とみずほ銀行はここに入りますが、みずほ銀行は下記の条件を満たせば2022年10月から、りそな銀行は今年の4月から新プランで無料化をそれぞれ実現します。
りそな銀行は4月から新プランとして無料化(既存プラン加入者は変更手続きを必要とするよう) リリースはこちら
みずほ銀行は2022年10月から無料の条件を緩和、(1)掛金の拠出がある、(2)専用サイトでメールアドレスの登録、(3)運用サポートツールで目標金額の登録、をすれば無料となるしくみです。 説明はこちら
金融機関のリストをみると無料化のトレンドが分かります。イオン銀行やソニー銀行のように後発参入組の銀行と、これまた新規参入してきたネット証券の多くが含まれていることです。
実際、SBI証券はiDeCo口座獲得70万達成のプレスリリースを2022年12月に出しています(2022年10月末の数字)。これは業界トップです。 リリース
楽天証券は2021年の口座獲得数は業界トップだったというリリースを出しており、この2社が激しくしのぎを削っている構図です。 リリース
今世紀に入って新しく始まったiDeCoという制度は、金融ビッグバン以降に参入した金融機関が熱心に取り組んでおり、これにみずほやりそな、野村證券といった従前からビジネスを展開してきた金融機関がどう立ち向かっていくかが、今後の注目点となるかもしれません。
まとめ:基本的に、iDeCo選びは金融機関の口座手数料は無料からスタートしてみよう
最後に、iDeCo口座開設を検討している人のためのアドバイスです。
まとめ1.iDeCo口座をこれから開設する人にとっては「金融機関の管理手数料が無料」であることで候補の金融機関を絞り込む
まとめ2.運用の選択肢として「投資信託の運用管理費用(信託報酬)が0.3%以下のものを有していること」あたりをチェックポイントとしてさらに絞り込む(これもiDeCoナビで行える)
私は、「国内外に投資するバランス型ファンド(選択肢が複数ある場合は株式投資比率の高いもの)」「全世界株式で運用する投資信託」あたりを運用管理費用の比較のために使います。
これも先のiDeCoナビでチェックできます。
iDeCoナビ 運用管理費用(信託報酬)で比較
※以下記事は同サイトの情報を執筆時点の2023/1/20時点で検索し作成
例えば「マイバランスDC70」というバランス型ファンドは業界最低水準の年0.154%(年)で運用ができ、野村證券とイオン銀行が採用していることが分かります。0.154%グループには「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」(SBI証券、マネックス証券、松井証券が採用)、「たわらノーロードバランス(8資産均等型)」(イオン銀行が採用)などが含まれます。
全世界への株式投資を行う投資信託については、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」(実質年0.199%)は楽天証券が採用、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(実質年0.1144%)も、松井証券、マネックス証券、auアセットマネジメントが採用しています。
こうしてみると、管理手数料無料の各社は、低コストの運用選択肢を提示していることがほとんどで、両方の条件をほぼ満たしていることが分かります。
iDeCoにこれから加入しようという人は「2つの手数料」を両にらみで検討をしてみるといいでしょう。
(※執筆時点の情報ですから、2023年1月22日以降に記事をご覧になった方はそれぞれ最新情報をチェックしてみてください)
※YouTubeで本記事の解説動画を公開しています。
チャンネル登録もよろしくお願いします。
備考 それでは、管理手数料を取る金融機関はダメなの?
管理手数料を取る金融機関でiDeCoを作るなら、その分のメリットが必要になります。加入に当たっての相談を個別に行ってくれるのはもちろん、例えば年に一度はマンツーマンの相談をしてくれる、というなら口座手数料分の元は取れるかもしれません(FP相談をしっかり受ければ、数万円くらいの手数料がかかってもおかしくない)。
ただし、担当者レベルで「いつでも相談に来てください!」と言ってくれたとしても、異動になって以降は相談をしてくれない、ということもあるのでちゃんと金融期間として対応してくれるかがポイントです。
また、管理手数料は定額なので、資産が少ないときはキツく、資産が1000万円以上のように増えてくると影響は小さくなります。本来の優先順位としては「運用商品の手数料」のほうです(こちらは投資している資産全体にかかるので資産が増えると手数料も増えていく)。
「管理手数料は月数百円とるけれど、運用商品は低コストのものをずらり揃えている」というようなiDeCoプランも何社かあり、これはじっくり検討する人にとっては、悩みどころとなっています。