「お金がなければ男は結婚できない」のその先へ「お金がなければ恋愛もできなくなった」
お金と男の結婚
当連載上では、過去に何度も男性の「お金がないから結婚できない」問題についてデータを基に論じてきた。もちろん、それだけが昨今の婚姻減のすべてであるとまでは言わない。
しかし、一方で、男の年収と未婚率とは完全にリンクする。低年収男性の未婚率は高く、高年収であればあるほど既婚率が高まることは明らかな事実である。
深刻なのは、低年収が結婚できないだけではなく、かつて若者の結婚のボリューム層だった年収中間層の男性の未婚率が高まっていることである。
ほんの10年くらいまでは、「年収300万円の壁」と言われており、300万円の年収があれば普通に結婚していたものだった。
しかし、今や、300万円台では見向きもされず、最低でも400万円、大都市においては500万円なければ、最初の年収条件で落とされてしまう有様である。これが「結婚のインフレ」と私が名付けたもので、2014-15年あたりから顕著になった。
中間層なのに結婚できない
年収が連動してあがったわけではない。1990年代から20代独身男性の額面年収はほぼ変わっていないし、なんなら税金や社会保険料を引いた手取りは下がってすらいる。実態として、多くの独身男性の年収は変わっていないのに、結婚相手として選ばれる男の最低年収条件だけがインフレしているのである。
そのため、年収上位3割の男性の未婚率は全くあがっていないが、ボリューム層である中間層年収の未婚率だけが上昇している。
「お金がないから結婚できない」とは、「極貧だから結婚できない」のではない。ここを勘違いしてはいけない。今も昔も、それこそ明治時代であっても、極貧状態の男性は結婚できなかった。令和における「お金がないから結婚できない」とは、「全体の中央値の年収があっても結婚できなくなった」ということを意味する。
「結婚したいのに経済的理由で結婚相手として選ばれない」という不本意未婚が増加していることは過去記事にも書いたが、もはや5割に達している。その5割のうちの半分、つまり、全体の25%は「経済的理由」によるものだ。
参照→「29歳までに結婚したい」という若者の希望が半分しか叶えられない「不本意未婚」問題
それでも、恋愛とは違い、結婚とは生活であり、家族を運営していくためにはお金は必要と考えるのも道理だし、特に女性が結婚相手の経済力を気にすることは当然だろう。恋愛と結婚は別物といわれる所以でもある。
ところが、その恋愛ですら、もはや男の年収によって左右されているという実態がある。
恋愛も金次第の現実
20-49歳までの未婚男女の年収別の恋愛相手がいる割合をグラフ化してみた。20-24歳には学生も含む。対象が一都三県なので、全国値よりはやや高くなっている。
まず、右側の女性から見ると、20-29歳では年収に関係なくほぼ恋愛相手がいる割合は一定である。むしろ20代ではあまり高年収すぎると恋愛率が下がってもいる。
一方、男性は、20-29歳の推移を見ると、年収300万円台までは大体3割程度である。これは常々言っている「恋愛強者3割の法則」通り、決して低いわけではなく平均的な割合だ。しかし、400万円を超えるとその割合は急上昇し、25-29歳の500万円で5割近く、700万円では8割以上となる。明らかに「お金があれば恋愛できる」わけである。
裏を返せば、恋愛力のある3割の男は、年収の多寡に関係なく恋愛相手が見つかるが、それ以外は、「年収の力」がなければ恋愛すらもできないくなっていることを意味する。
さらに、30歳以上と年齢があがれば、自動的にその求められる年収ハードルもあがるが、年収が高くなればなるほど恋愛相手がいる割合がより高まるという構造は一緒である。
このように、結婚だけでなく、恋愛すらも経済力の影響が大きくなっている。
よくよく考えれば、その通りで、今の20代の若者が置かれている経済環境は本当に厳しい。税金や社会保険料を差し引き、物価高を考慮した実質可処分所得で比較すれば、あの「最悪な氷河期世代」よりも悪い。
一部の大企業高年収または「親が太い」上級20代を除けば、日々の生活をするのに精一杯でとても恋愛やデートをするという金の余裕も心の余裕もないことだろう。ちなみに、高年収の大企業勤務の若者の未婚率は当然ながら低い。
参照→働く企業の規模の大小が「結婚できるかどうか」を大きく左右する「企業規模別未婚率」
経済問題を頑なに認めない謎
最近では、この「若者の婚姻減は経済問題」であることの正しい認知は広まってきている。喜ばしいことである。それでも、この経済問題について頑なに認めようとしない界隈があることが謎なのである。そういう主旨の記事を書くたびに、「結婚できないのはお金の問題ではない」と反論してくるしつこいおじさんもいる。
まるで、その本質的な問題を指摘されることを嫌がるかのようだ。
繰り返すが、「婚姻減はお金だけの問題」とまでは言わない。
しかし、お金の心配や不安ばかりを抱えていたら、とても恋愛などする意欲も失うことは理解できるだろう。それが極貧層のレベルではなく、中間層に及んでいること自体が大問題なのである。
何も「若者へ給付金を配れ」などと言うつもりはない。そんなものはいらない。無駄な中抜きが増えるだけだ。
配らなくてもいいから、取らないでほしいのだ。可能性のある若者から意欲を奪うだけだから。
意欲を失えば、行動しなくなる。行動しなければ経験値があがらない。経験値があがるということは失敗の経験をするということだ。その失敗の経験が次の行動の糧になる。経験がなければ、より一層失敗を恐れて行動しなくなる。
中間層の若者が無行動になることは若者の未来を潰すだけではなく、国の未来も潰すだろう。
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