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男の結婚は「年収の高い方から売れていく」が、決して婚活市場には登場しない

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

男性の年収・年齢別累積既婚率

前回の記事で、最新の2022年就業構造基本調査に基づく男女の年収別生涯未婚率をご紹介したが、今回は男性の年齢別かつ年収別の配偶関係状況についてご紹介したい。

生涯未婚率というのは45-54歳の平均未婚率であり、年収別生涯未婚率もその年齢の男性の年収を示しているものに過ぎず、結婚適齢期の年齢での年収がどうだったかまではわからない。国の基幹統計では、初婚時点での年収がいくらだったかについての調査は存在しないので、年齢別の年収別の未婚率の推移にて推測するほかはない。

5歳単位での年収別の未婚率の逆数が既婚率(その後離婚したかもしれないが少なくとも一度は結婚した率)となるので、それを累積値でグラフ化したものが以下である。

高年収男から結婚していく

当然ながら、20-24歳ではまだ大学生も含まれるので、既婚率は低いし、就職していたとしてもそれほど給料が高いわけではないが、それでもこの20-24歳で結婚している男性というのは最低でも年収400万円以上である。

初婚のボリューム層である25-29歳ではもっと顕著に差がつき、年収500万円以上の未婚男性の4割以上が29歳までに結婚している。

30-34歳になってもその傾向は一緒で、年収500万円以上だと累積で7割以上が既婚者となっている。35歳を超えると一気に既婚可能性はどの年収帯でも下がっている。

これをどう見ればいいかというと、そもそも高年収の男性自体の絶対数は少ない。若ければ若いほど少ない。その「ただでさえ少ない年収の高い男から順に売れていく(結婚していく)」ということである。

男性の生涯未婚率が2020年時点で28.3%、約3割である。つまり少なくとも70%は結婚するのであるが、44歳までの累積値で70%を超えるのは年収400万円以上である。もちろん、400万未満でも結婚している男性はいるが、グラフを見ても明らかなように、400万未満から下の層は一気に既婚率が下がるのだ。

かくして、結果として生涯未婚率対象年齢の45歳以上で未婚である男性の年収は低くなるというわけである。

婚活の場にそんな男はいない

しかし、ここで婚活をしている女性からは以下のような反論があるかもしれない。

結婚相談所でもアプリでも500万以上の年収の未婚で若い男なんてほぼいない。いたとしても、その年収が大嘘か既婚者が偽っている場合しかない」と。

それは当たり前である。若くして高年収の男性は早くから売れてしまうのである。婚活市場などに流れる前に売約済みなのだ。

提供:イメージマート

それでも34歳までなら数字的に可能性があるように思ってしまうが、結婚に至るまでの平均交際期間は恋愛結婚の場合4年である(出生動向基本調査より)。つまり、34歳で初婚する男性も、結婚相手とはすでに30歳の頃から付き合っていて、ある意味売約済みといえる。

「年収いくら以上」という条件を譲らない婚活女性が一向にマッチングしないのは、婚活の現場そのものにそんな男はいないからである。

もし、本当に結婚したいと思うなら、相手の年収云々はさておき、少なくとも相手男性が25-29歳の間に結婚しておくこと、そのためには最低25歳までには結婚する相手と交際していないといけないということになる。30歳を過ぎてから婚活しても遅いのである(今更言われても遅いと言われるかもしれないが)。

そして、同様のことは男性側にも言えることで、もし結婚したいと思っていて、40歳すぎて「結婚したかったなあ」などと不本意未婚の苦しみに陥らないためには、20代のうちにらに結婚に向けて邁進しておいた方が可能性が高いである。

年齢を重ねればそれだけ選ばれる年収のハードルもあがるというものだし、データ上は35歳を過ぎて年収400万円を超えたところでもう相手は見つからない可能性が高い(これも今更言うなと言われそうだが)。

結婚したいなら20代のうちに

平均初婚年齢の罠というものがある。

2021年の人口動態調査によれば、男性の平均初婚年齢は31.0歳である。だから、20代のうちは「まだ早いかな」と思いがちだ。しかし、といって、初婚する男性が30歳以上ばかりという話ではない。あくまでこれは平均値であって、中央値は29.5歳である。つまり、初婚する男性の半分は29.5歳までに結婚しているということになる。同様に女性の初婚中央値年齢も28.5歳である。

繰り返すが、その年齢で結婚するためには、計算上はその4年前には付き合っていないといけないことになる。つまり、男は25.5歳、女は24.5歳時点で、結婚してもいいと思える相手がいないと、油断すると「40歳の不本意未婚者」になるのである。男性ですら40歳を超えて初婚できる可能性は(それ以前から長く付き合っている相手がいる場合を除いては)ほぼない。

ちなみに、皆婚時代のお見合い結婚などの社会的結婚のお膳立てシステムは、この30歳を超えて未婚で相手もいないという独身男女に対するケアだった。それが無き今、誰も救ってくれる人はいないのである。

いずれにしても日本の初婚の半分は20代で作られている。20代の男性の給料はそれほど高くない。が、その高くない300万円台で結婚しているのが初婚最頻値なのである。そして、既婚者は結婚した20代の時点では300万円台でも、50代になる頃にはしっかり800万円以上になっていたりしていた、今までは。

それを信じられなくなった今の20代が非婚化するのは当然なのかもない。

初婚の年齢中央値が男女とも30歳を超えた時こそ、いよいよ本当の「結婚滅亡時代」に突入したと言えるのかもしれない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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