キーウ市のドニプロ川に落下したミサイルを回収、イスカンデルMないしキンジャールで確定
1月2日のミサイル迎撃戦闘で、ロシア軍は「極超音速兵器」のキンジャール(実態はイスカンデルM短距離弾道ミサイル空中発射型)でキーウ攻撃を仕掛け、ウクライナ軍は飛来したキンジャール10発をパトリオット防空システムで全て撃墜したと発表しています。
この際にキーウ市内のドニプロ川に「姿勢を乱しながらゆっくり落下するミサイル」が目撃されて動画で撮影されています。関連記事:撃墜されたキンジャール?らしき回転しながら遅く落下するミサイルの検証
そして昨日、川底からミサイルの残骸が回収されました。キーウ法医学科学研究所(KNDISE)に持ち込まれて調査が始まりましたが、見た瞬間に弾道ミサイルと分かる大きさです。そしてロケットモーターケースの部品には「9M723」と書かれており、イスカンデルM(ないし派生型のキンジャール)の部品であることが確定しました。9M723はイスカンデルMのミサイルの兵器番号です。
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- 00:00 - 概要
- 00:30 - Kh-101またはKh-55巡航ミサイル
- 02:27 - Kh-101巡航ミサイルのフレア(囮熱源)
- 03:30 - Kh-101巡航ミサイルのチャフ(電波欺瞞紙)
- 04:25 - イスカンデルMまたはキンジャールの残骸
※動画の時間帯の説明は筆者の注釈を加えた和訳。ドニプロ川から回収したイスカンデルMまたはキンジャールの残骸だけでなく、Kh-101巡航ミサイルのL-504チャフ・フレア・ディスペンサーの部品解説も行われています。
ドニプロ川から回収された弾道ミサイルのロケットモーターケース
「9M723」の数字を確認(イスカンデルMのミサイルの兵器番号)
ロケットモーターケースの部品に「9M723」と書かれてあるのが決定的です。また以前に発見されているイスカンデルMのロケットモーターケースと塗装色が異なる以外は特徴が一致しています。イスカンデルMとキンジャールは主要部品が共通なので、どちらかであることは確定です。
以前に回収されたイスカンデルMの残骸と比較
- 上写真の左側のミサイルにも9М723と書かれてあり、イスカンデルMと確定済み。左側のミサイル写真出典:2022年10月5日、ザポリージャ州行政府
- 上写真の右側のミサイルは既出の川底から回収したミサイル(2024年1月26日キーウ)
以上の川底から回収されたミサイルの残骸の確認により、2024年1月2日の迎撃戦でキーウ市内のドニプロ川に落下した「姿勢を乱しながらゆっくり落下するミサイル」はイスカンデルMまたはキンジャールであることは確定しました。関連記事:撃墜されたキンジャール?らしき回転しながら遅く落下するミサイルの検証
2024年1月2日キーウ、ドニプロ川に落下するミサイル
関連記事でも説明しましたが、高速の弾道ミサイルといえど姿勢を乱して回転を始めると、空気抵抗の増大で速度が落ちて遅くなることは、以前からトーチカU弾道ミサイルの例などで知られていました。
今回のケースではおそらくですが、迎撃ミサイルによって完全破壊されなかったものの姿勢を乱したイスカンデルMないしキンジャールが、回転しながら空気抵抗で遅くなってゆっくり落下してきたものと思われます。