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万博電子マネー「ミャクペ!」 万博が終わったらどうなる?

山口健太ITジャーナリスト
ミャクペ!のバーチャルカード(筆者撮影)

7月1日、大阪・関西万博の電子マネー「ミャクペ!」のサービスが始まりました。同日より、残高のチャージやVisaのタッチ決済による支払いが可能になっています。

ところで、2025年10月の万博終了後、しばらくするとミャクペ!のサービスも終わり、チャージした残高の払い戻しはないと説明されています。移行先はあるのでしょうか。

万博終了後、残高の移行先はあるか

大阪・関西万博が始まるのは2025年4月13日ですが、先行していくつかのサービスが始まっています。運営企業はサービスごとに異なり、ミャクペ!の場合は三井住友銀行となっています。

利用にあたってはiPhone用Android用の「EXPO 2025 デジタルウォレット」アプリから登録が必要です。対象者は国内在住の13歳以上で、電話番号によるSMS認証が必要。なお本人確認書類の提出は不要でした。

使い方は一般的なプリペイド方式の電子マネーと似ています。スマホ上にバーチャルカードが発行され、Visaのタッチ決済に対応した店舗で使えます。Apple PayではiD(プリペイド)も利用できるようです。

Apple PayではVisaのタッチ決済とiDに対応した店舗で利用できる(iPhoneの画面より、筆者作成)
Apple PayではVisaのタッチ決済とiDに対応した店舗で利用できる(iPhoneの画面より、筆者作成)

Google PayではVisaのタッチ決済のみとなる(Androidの画面より、筆者作成)
Google PayではVisaのタッチ決済のみとなる(Androidの画面より、筆者作成)

まずは残高にチャージしてみます。連携できる銀行口座は都市銀行や地方銀行が中心となっており、ネット銀行にはあまり対応していないのが残念なところ。「Bank Pay」の仕組みを用いており、今後拡大予定としています。

銀行口座は都市銀行や地方銀行が中心。楽天銀行や住信SBIネット銀行には対応していない(アプリ画面より、筆者作成)
銀行口座は都市銀行や地方銀行が中心。楽天銀行や住信SBIネット銀行には対応していない(アプリ画面より、筆者作成)

またクレジットカードからのチャージも可能ですが、三井住友カードなどVJAグループによるVisa/Mastercardブランドのカードであれば手数料は無料。その他のカードでは220円の手数料がかかるようです。

クレジットカードからのチャージ。手数料無料に対応した一部のカードを除いて、220円の手数料がかかる(アプリ画面より、筆者作成)
クレジットカードからのチャージ。手数料無料に対応した一部のカードを除いて、220円の手数料がかかる(アプリ画面より、筆者作成)

三井住友の銀行口座やクレカを持っている人であれば問題なく使えるとはいえ、多くの人が参加する万博の電子マネーという意味では、チャージできる手段をもっと広げてほしいところです。

なお、決済時には「ミャクペ!」(実際の音は「ミャークペ」に近い)という効果音が用意されているものの、これが鳴るのは会場内で二次元コード決済を利用した場合で、Visaのタッチ決済では鳴らないようです。

バーチャルカードのカード番号を表示することはできず、オンラインショッピングなどには使えないものの ミャクペ!の設定メニューから「タッチ決済管理」を開き、カード番号の「番号照会」を押すと、カード番号やセキュリティコードを表示できました。また、マクドナルドのモバイルオーダーのようなアプリ内決済にも利用できました。

他の電子マネーへのチャージについては、7月1日の時点では、Apple Payを経由して残高をSuicaやPASMOにチャージすることができました(その後、SuicaやPASMOにチャージしようとするとエラーが発生し、取引がキャンセルされるようになりました)。

さて、気になるのは2025年10月13日に万博が終わった後の扱いです。注意事項によれば、残高の有効期限はそこから約3か月後の2026年1月13日までで、それを過ぎた場合、返金や払い戻しをしないと明記されています。

ミャクペ!の残高における上限は10万円とそれほど大きくはないものの、一般的な電子マネーに比べると、価値が消滅するまでの期間がかなり短い印象を受けます。

この点について、万博の運営側としては事業者の判断に任せる方針とのことですが、利用規約には残高を引き継ぐサービスが出てきた場合についての記述があります。

残高の有効期限について定めた利用規約(ミャクペ!のWebサイトより、筆者作成)
残高の有効期限について定めた利用規約(ミャクペ!のWebサイトより、筆者作成)

残高が失われることがないよう、何らかの移行先が用意されると期待したいところですが、規約上はそうした措置がなかったとしても、異議申し立てはできないようです。現時点では、有効期限をもって残高は消滅すると考えておいたほうがよいでしょう。

万博会場での特別な体験も?

ミャクペ!は三井住友銀行が提供していることもあり、残高のチャージに対して三井住友カードのポイント付与はなく、年間100万円利用の特典などもカウント対象外となっています。

ポイ活という意味ではあまり面白味のない建て付けになっている印象ですが、ミャクペ!などの利用に応じてステータスが上がる「ミャクミャクリワードプログラム」では、さまざまな特典を得られる仕組みが用意されています。

第1弾ではチャージ金額に応じてステータスが上がり、特典として万博オリジナルの「ミャクーン!」(NFT)を獲得できるとのこと。10月に予定されている第2弾では、会場チケットとの連動など、チャージ以外の手段もステータスに影響するようです。

第1弾はチャージ金額でステータスが上がる。第2弾以降はチケットなども影響していくという(大阪・関西万博のWebサイトより、筆者作成)
第1弾はチャージ金額でステータスが上がる。第2弾以降はチケットなども影響していくという(大阪・関西万博のWebサイトより、筆者作成)

詳細は検討中としているものの、上位ステータスの特典としては、専用ラウンジの利用、パビリオンへの特別な入場、プロデューサーによるガイドツアーなどが用意される可能性があるといいます。

万博会場内では顔認証決済に対応することもミャクペ!の特徴ですが、ほかにも約60種類のキャッシュレス決済手段が用意されることもあり、ミャクペ!の利用が必須というわけではありません。ただ、万博を最大限に楽しむのであればミャクペ!やリワードプログラムを使いこなすことが求められそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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