大阪万博「顔パス」で買い物可能に 顔認証が広まるきっかけになるか
2025年4月に開催予定の大阪・関西万博では、会場への入場や店舗決済に顔認証システムを導入することが発表されました。
国内最大級の事例になる見込みとのことから、日本に顔認証が広まるきっかけになるかもしれません。どのようなサービスになるのか、5月23日の発表会で概要が語られました。
会場内で顔認証決済が可能に、入場にも活用
大阪・関西万博の会場内には全面的にキャッシュレス決済が導入され、一部を除いて、原則として現金は使えないと説明されています。
その代わり、キャッシュレスは約60種もの手段に対応する見通しで、一般的なクレジットカードや電子マネー、コード決済に加え、万博オリジナルのアプリを用いた電子マネー「ミャクペ!」も導入されます。
その中で目玉になりそうなのが顔認証決済です。会場内には三井住友カードの決済端末「stera terminal」が約1000台設置され、キッチンカーなど一部を除いて、基本的にはどの店舗でも顔認証に対応するとしています。
顔認証利用時の支払い手段としては、電子マネーの「ミャクペ!」か、Visa・Mastercardブランドのクレジットカードを選択可能。決済金額の上限は「ミャクペ!の場合はチャージ残高まで。クレカ利用時に1回あたりの上限金額を設けるかどうかは検討中」(2025年日本国際博覧会協会 広報部)としています。
一般的なキャッシュレス決済が使えるにもかかわらず、あえて顔認証を導入する理由としては、両手がふさがっている状態でも「顔パス」で使えることや、財布からカードを取り出したりスマホアプリを立ち上げたりする手間が省けることをメリットと考えているようです。
顔認証の技術は日本電気(NEC)によるもので、これまでに100万IDの施設で実績があるとのこと。万博では120万IDの利用を想定しているといいます。
顔認証を利用するには事前に専用サイトでの登録が必要となっており、顔情報は日本国内に安全に保管するとのこと。同意なく他の目的に利用することはないとしています。
顔を登録する際にはサングラスやマスクを外す必要があるものの、顔認証を利用する際にはメガネやマスクを着用したままでもOK。特徴点を抽出する仕組みにより、見た目で照合するものではないと説明しています。
また、顔認証が使われるのは決済だけではありません。万博チケットのうち、「通期パス」と「夏パス」については、使いまわし防止の観点から入場ゲートでの顔認証が必須になるようです。
その他のチケットで入場する人は、「ミャクペ!」に登録することで顔認証を利用できるとのこと。通期パスを買うほどではないが、顔認証に興味があるという人は、あらかじめアプリを用意しておくと良さそうです。
会場外にも顔認証は広まるか
未来社会を一足先に体験できるという万博のコンセプトを考えれば、万博体験の一部である「入場」や「決済」に顔認証を導入するというのは、興味深い取り組みといえます。
この仕組みを利用できるのは会場内に限られるようですが、その影響は会場の外にも波及することが期待できます。たとえばOsaka Metroは顔認証改札機の設置を始めており、2024年度末の利用開始を目指しているといいます。
一方で、生体情報と紐付く認証には不安の声が上がることもあります。顔情報の登録に抵抗を覚えるとか、カードやスマホをかざす方式で十分なので顔認証は不要だ、といった声が高まる可能性もあります。
どちらに転ぶかは実際に始まってみるまで分からないところはありますが、多くの人が顔認証を体験する機会として注目されることは間違いないでしょう。