モルドバにウクライナ軍のRIM-7シースパロー迎撃ミサイルが着弾、対空戦闘中に制御を誤ったものか
10月16日朝、ウクライナの隣国モルドバの北部にあるオクニタ県レンカウチ村近くの農場に着弾したミサイルの残骸が発見されました。モルドバ国境警察によるとウクライナ国境から約4kmの地点です。出典:モルドバ国境警察
モルドバ当局はミサイルの種類や発射国を特定していませんが、ウクライナ軍の迎撃ミサイルが対空戦闘中に誤って隣国モルドバに着弾したものと見られます。
モルドバで発見されたミサイルの特徴から、筆者はこれをアメリカ製のRIM-7シースパロー迎撃ミサイルの後半部分の残骸だと推定します。なお種類特定の為に比較として用いた参考画像は別の時期に違う場所で回収されたミサイル残骸部品です。
比較:モルドバ落下ミサイルと参考画像その1
比較用の参考画像に「Mk 58 MOD 6」という番号が見えますが、これはRIM-7シースパロー迎撃ミサイルの固体燃料ロケットモーターの型番です。その後方に見える突起はミサイル最後部にある安定翼の取り付け部で、この部品の形状が2024年10月16日にモルドバで発見されたミサイルの残骸の形状と完全に一致します。
参考画像その2:RIM-7シースパロー(訓練用の不活性弾)
詳細:RIM-7シースパロー艦対空ミサイル 後翼。2019年5月6日 海上自衛隊第1術科学校 江田島クラブ2階の海上自衛隊歴史ゾーンにて
出典:Wikimedia Commons(大きい画像はOriginal fileを参照)
一部の報道で今回のモルドバで発見されたミサイルは「AIM-120 AMRAAM」迎撃ミサイル(F-16戦闘機またはNASAMS防空システムで運用)だとする推定もありますが、形状が明確に異なります。
これは東側製のブーク防空システムに西側製のRIM-7シースパローを合体させたフランケンSAMと呼ばれているものでしょう。なお原形であるAIM-7スパロー(空対空ミサイル型)の可能性もありますが、おそらくはブーク改造のフランケンSAMから発射したRIM-7シースパローである可能性の方が高いと思われます。
関連:ウクライナ軍のフランケンSAM(ブーク防空システム+シースパロー迎撃ミサイル)が初公開(2024年5月29日)
※RIM-7シースパローは本来は艦対空ミサイル。
2024年10月16日のロシア軍の長距離ミサイル・ドローン攻撃は長距離ドローンが夜明け前の夜間から夜明け後の日中まで136機も襲来する大規模なもので、ドローンのみの発射数では過去最大数です(ただしシャヘド136自爆無人機だけでなく安い小型の囮用のゲルベラ無人機が多く混じっている)。なお同日に飛来したロシア軍のミサイルはKh-59空対地ミサイル(チェルニーヒウ方面)とS-300/S-400地対空ミサイル対地攻撃運用(ドネツク方面)が1発ずつの計2発のみでした。
16日のロシア軍のミサイル2発は場所も大きく離れている上に形状はモルドバで発見されたミサイルの残骸とは全く異なっているので、この点からも今回はロシア軍のミサイルの迷走ではなかったと考えられます。