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いま、久保建英とレアル・ソシエダに起きていること。ビルドアップの複数形と得点力不足解消。

森田泰史スポーツライター
ドリブルする久保(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

久々の勝利だった。

リーガエスパニョーラ第29節、レアル・ソシエダは本拠地レアレ・アレーナでカディスと対戦。試合はミケル・メリーノとアーセン・ザハリャンの得点で、ソシエダが2−0で制して勝ち点3を獲得している。

ソシエダにとって、昨年11月26日以来の、ホームマッチにおける勝利であった。

また、2点差以上をつけてのホームでの勝利は昨年9月30日のアトレティック・クルブ戦(3−0)まで遡る。それほどまでにソシエダは苦しんでいたのだ。

ボールを追う久保
ボールを追う久保写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ソシエダが苦しんだ要因に、得点力不足が挙げられる。

今季、ソシエダで最もゴールを記録しているのはミケル・オジャルサバル(リーガ8得点)だ。彼に久保建英(7得点)、ブライス・メンデス(4得点)、ミケル・メリーノ(4得点)、マルティン・スビメンディ(4得点)が続く。

ただ、オジャルサバルは元々、CFの選手ではない。ウィングを主戦場としてプレーしてきた選手だ。

その選手を3トップの中央に置き、ファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)で戦うという方策をイマノル・アルグアシル監督は採ってきた。裏を返せば、ウマル・サディク(3得点)、アンドレ・シルバ(2得点)に対して信頼を置ききれていない。

■ゼロトップとビルドアップ

ファルソ・ヌエベの戦術自体が悪いわけではない。しかし、ソシエダのプレーモデルにおいては、全体の構築に、問題がある。

昨季までであれば、アレクサンダー・スルロットがいたため、そこにロングボール、あるいはフィードを送るというプレー選択ができた。だがオジャルサバルの頂点起用では、それは期待できない。

となると、重要なのはビルドアップになる。後ろからの構築が上手くできなければ、相手に対して優位に立つことはできない。

写真:ムツ・カワモリ/アフロ

しかしながら、今季のソシエダは、度々、ビルドアップで問題を抱えていた。

ソシエダの手綱を握るのはスビメンディである。アンカーのスビメンディを経由して、ボールを前進させるというのが得意のパターンだ。

一方で、「アンカー潰し」をされると、ソシエダのビルドアップは窒息する。スビメンディを封じてしまえば、ソシエダのビルドアップを呼吸不全に陥らせるのは、実は非常に容易なのである。

■解決策の提示

この課題は、今季、ずっとソシエダに付き纏っていた。ただ、直近の試合では、改善の兆しが見て取れた。

スビメンディがダウンスリーを行う、という形はこれまでもあった。それに別の形が加えられ、ビルドアップに複数パターンが用意されるようになった。

アマリ・トラオレが最終ラインに下がる。「2CB+SB」の形で、ビルドアップが行われる。

さらに、この時、ハビ・ガラン(左SB)を押し上げる。シェラルド・ベッカー(左WG)をハーフスペースに入れ、逆に久保(右WG)は大外レーンに張り出す。ファイブ・エリア攻略を考えた上で、全体の配置バランスが整えられた。

(全2084文字)

■「3−2型」のビルドアップ

「2CB+SB」のパターンは、もうひとつ、準備されていた。

それは「3−2型」を作る、ということだ。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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