もしも地球にブラックホールが近付くとどうなる?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「地球にブラックホールが接近するとどうなるのか」というテーマで動画をお送りしていきます。
●ブラックホールの基本構造
今回の動画をより理解できるように、簡単にブラックホールの基本構造をおさらいしていきます。
既にご存じの項目は飛ばしてご視聴いただけると幸いです。
ブラックホールは一般的に太陽の30倍より重い超大質量の恒星が一生を終える際、星の核が自身の重力によって中心の1点に向かって際限なく押しつぶされる事で形成されると考えられています。
ブラックホールの中心にあり、ブラックホールの全質量がそこに集中していると考えられている体積0の1点は、特異点と呼ばれています。
そんな特異点の周りでは重力が極めて強く、そこから脱出するために必要な速度(脱出速度)が光速を超えています。
ですが特異点から離れるほど重力が弱まり、脱出速度が光速と等しくなる境界面が、事象の地平面と呼ばれています。
ブラックホールの事象の地平面の内部領域や、特異点で何が起こっているのかは本当に気になるところですが、残念ながら光速を超えて事象の地平面から脱出できるものは存在しないので、それらを知ることは絶対にできません。
●もしもブラックホールが接近したら
ではそんな常識外れの天体ブラックホールが地球に接近すると、一体どうなるでしょうか?
その結末は、実はブラックホールの質量によって変わります。
○小さめのブラックホールの場合
ブラックホールは、大質量の恒星が一生を終える際、自身の重力によって星の核が圧縮され、形成されるのでした。
圧縮後に残る星の核が軽ければブラックホールではなく中性子星が残るため、ブラックホールには質量下限があります。
ブラックホールの質量下限は、理論的には太陽の2.5-3倍程度であると考えられています。
実際にこれまで発見されたブラックホールの中で最小のものは、ちょうど太陽の3倍程度、地球の100万倍の質量なんだそうです。
そのため最も軽いブラックホールであっても、その強大な重力によって容赦なく地球を引き寄せます。
比較的小さいブラックホールの場合、特異点と事象の地平面の距離が近くなります。
太陽の3倍のブラックホールだとその距離はわずか10程度です。
この時、地球上でブラックホールに近い面と遠い面でブラックホールから働く重力と、遠心力が大きく異なります。
そのため地球はスパゲッティのように引き延ばされ、粉々に砕かれてしまいます。
このような現象は実際に「スパゲッティ化現象」とも呼ばれています。
ブラックホールの大きさにも寄りますが、この現象は人間の体のような小さな物体でも例外ではありません。
ブラックホールはあらゆる物体をスパゲッティにしてしまう、恐るべき天体なのです。
粉々に砕かれた地球の破片はブラックホールの周囲を秒速数万km、ほぼ光速に近い速度で公転し、猛烈なエネルギーを受けて超高温に加熱させられ、とてつもなく強烈な光を放つ「降着円盤」となります。
地球が降着円盤の一員となった後も、悲劇は終わりません。
最小のブラックホールでも太陽より何倍も重いので、重力により他の太陽系天体を周囲に公転させ、太陽系はブラックホール系になってしまうでしょう。
○超巨大なブラックホールの場合
超巨大なブラックホールの場合、特異点と事象の地平面の距離が非常に遠くなります。
宇宙でも最大級のものだと、太陽から海王星までの距離の何十倍も離れています。
そのため、事象の地平面付近に接近した天体はとてつもない重力で引かれるものの、ブラックホールに近い面と遠い面にかかる引力や遠心力にほとんど差が生まれません。
その分ブラックホールに引き延ばされてスパゲッティにされにくく、既存の降着円盤やジェットなどの超高エネルギー構造さえなければ、物体の形を維持したまま事象の地平面の内部に侵入できる可能性が高まります。
当然その中でどんな世界が待ち受けているのかは、中に入った当事者以外誰にもわかりません。
ただし意外にも、事象の地平面に入るまでの話なら、巨大なブラックホールほど安全という結論になります。
YouTubeでは、「Universe Sandbox 2」というシミュレーションソフトを使って地球の近くにブラックホールを置いて、どうなるかをシミュレートしています。
ぜひ併せてご覧ください。