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黒毛和牛をすぐ目の前で豪快に調理してもらえる「明石前」はどこ? ほぼ肉づくしの全品を紹介!

東龍グルメジャーナリスト
イノセントカーベリー(The INNOCENT CARVERY) (C) 東龍

ブッチャーラボを併設したレストラン

黒毛和牛を中心とする和牛は、日本が誇る最高食材のひとつ。

2021年の牛肉の輸出は7,879トンと前年から63%増加し、輸出金額は前年比86%増加の536億8,000万円となっています。1キログラムあたりの輸出単価も14%上昇して6,813円と、価値も上がっています。輸出される牛肉のほとんどは和牛であることから、これらの実績はほぼ和牛の実績であるといってよいでしょう。

和牛は日本を代表する食材ですが、当の日本人でも、様々なブランド牛やその部位を食べられる機会はそう多くありません。

イノセントカーベリー(The INNOCENT CARVERY) (C) 東龍
イノセントカーベリー(The INNOCENT CARVERY) (C) 東龍

そういった状況で、色々な和牛のブランドや部位を食べてもらおうと、ブッチャーラボを併設して2015年12月11日にオープンした焼肉レストランがあります。それは、西麻布にある「イノセントカーベリー(The INNOCENT CARVERY)」。

店の外から見える肉が精悍に並べられたセラーが印象的で、ヨーロッパ風のスタイリッシュな肉屋にも目を引かれます。外観からも肉に対するこだわりが窺えるでしょう。

シェフは明石元秀氏

シェフを務めるのは明石元秀氏。1986年熊本県生まれで、2018年に「イノセントカーベリー」のスーシェフとして入社。数々の人気店を生み出し、肉を極めた料理人の岡田賢一郎氏の下で学び、2021年に料理長に就任しました。

以来、明石氏が目の前で肉を捌いて調理し、盛り付けて料理を紡ぎ出す、「明石前」が人気です。この「明石前」で体験できるコースが、カウンター席限定の「Chef's Table」(27,500円)。

どのような肉料理が体験できるのか、紹介していきましょう。

自家製熟成生ハム マスカルポーネと苺、ブルーベリーのソース

自家製熟成生ハム マスカルポーネと苺、ブルーベリーのソース (C) 東龍
自家製熟成生ハム マスカルポーネと苺、ブルーベリーのソース (C) 東龍

3ヶ月間、塩漬けした松阪牛の腿肉で作られた自家製生ハムに、マイルドなマスカルポーネ、イチジク、苺、ブルーベリーを砂糖でカラメリゼし、白ワイン、バターを合わせて、デザートのようなさっぱりとした一品に。生ハムメロンをイメージしており、チーズやフルーツは季節によって変わります。3つの要素を一緒に合わせて食べると、塩味、酸味、甘味が一体となってよりおいしく食べられるでしょう。

和牛と北海道産雲丹のお刺身

和牛と北海道産雲丹のお刺身 (C) 東龍
和牛と北海道産雲丹のお刺身 (C) 東龍

適度にサシの入った松阪牛のトモサンカクと、濃厚なエゾバフンウニのコンビネーション。どちらとも口中で溶けて妙妙たる味わいです。松阪牛の肉質等級はA5ですが、脂肪交雑のBMSは9から10なので脂は控えめ。九州の醤油を軽く塗る感じで、味付けされています。

和牛ヒレカツ

和牛ヒレカツ (C) 東龍
和牛ヒレカツ (C) 東龍

フィレの中でもテートという赤身が多い部位をヒレカツにして揚げました。衣のサクサク感とフィレのジューシーさがよいコントラスト。2年熟成のパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりと削り、香りとコクを加えています。自家製トリュフ塩がよいアクセントです。

和牛タン元のお刺身 フランス産、サマートリュフ添え

和牛タン元のお刺身 フランス産、サマートリュフ添え (C) 東龍
和牛タン元のお刺身 フランス産、サマートリュフ添え (C) 東龍

鮮度のいい黒タンの刺し身を食べ比べできます。左にあるのはタン元で、非常にやわらかく、きめ細やかな脂。右にあるのがタン中で、適度なコリコリ感と赤身の味わいを堪能できます。サマートリュフを削り、さわやかな幽香をまとわせました。針生姜、スダチ、だし醤油を添えています。明石氏いわく「タン元とタン中のお好みは半々です」。

ユッケちゃんご飯~キャビア添え

ユッケちゃんご飯~キャビア添え (C) 東龍
ユッケちゃんご飯~キャビア添え (C) 東龍

希少部位の松阪牛のカメノコを巧みな包丁捌きでカットし、醤油・水・三温糖のタレと和えてユッケにしました。あまり粘りのない石川県産コシヒカリはカメノコの赤身の味わいに寄り添います。「磨宝卵GOLD」は非常にコクのある卵です。1935年創業の栃木県にある卵明舎で生産されており、一流シェフから愛されている食材。仕上げに、塩分が低めのオシェトラキャビアをたっぷりと載せました。ほうじ茶が添えられ、中間地点でほっと心が和むご飯ものです。

厚切りタン元

厚切りタン元 (C) 東龍
厚切りタン元 (C) 東龍

薄切りタン元 (C) 東龍
薄切りタン元 (C) 東龍

タン元の厚切りと薄切りの食べ比べ。100度に満たない温度でじっくりと焼いてミディアムレアにしました。厚切りタン元は赤身の力強い佳味を堪能でき、薄切りタン元はしなやかな妙味が感じられます。コンディメントはカンズリ、塩、スダチ、一味唐辛子を加えた昆布茶塩。

太田牛のハラミ

太田牛のハラミ (C) 東龍
太田牛のハラミ (C) 東龍

明石氏いわく「少し焦がすとよりおいしくなります」ということから、ハラミはしっかりと火を入れています。カラメルのような食味と香りは、厚みのあるハラミにぴったり。太田牛は、神戸ビーフで有名な兵庫県の太田牧場が自社ブランドとしてつくった但馬牛ブランドです。

シャトーブリアン

シャトーブリアン (C) 東龍
シャトーブリアン (C) 東龍

シャトーブリアンは究極の部位ともよばれるフィレの真ん中にある部分。やさしく火入れして、そのやわらかさとしなやかさを堪能できるようにしました。たっぷりのサマートリュフを削り、極めて贅沢な一皿です。

和牛霜降りと淡路島フルーツ玉葱のすき焼き

和牛霜降りと淡路島フルーツ玉葱のすき焼き (C) 東龍
和牛霜降りと淡路島フルーツ玉葱のすき焼き (C) 東龍

松阪牛の霜降りサーロインを用いたすき焼き。甘い淡路島産フルーツタマネギはグラデーションを楽しめるようにと、丸ごとホイール焼きにしてから鍋に入れています。割り下は砂糖、醤油、酒、みりん。松阪牛の脂の妙味を改めて再認識させられる料理です。

季節の土鍋ご飯

季節の土鍋ご飯 (C) 東龍
季節の土鍋ご飯 (C) 東龍

最後のお食事です。グリーンピースをたっぷりと使った土鍋ごはんに、京都の桜味噌の味噌汁。

旬のフルーツ

旬のフルーツ (C) 東龍
旬のフルーツ (C) 東龍

フルーツは季節によって変わり、好きなものを好きなだけ選べるのが嬉しいです。甘味と酸味のバランスがいいメキシコ産マンゴー、ハワイ産パパイヤ、シャインマスカット、デラウェア、イチジク、イチゴ、ブルーベリー、パイナップルとバリエーションも豊富。

コーヒー 又は 紅茶

かき氷(ほうじ茶ミルク 又は バルサミコ苺)

左がかき氷(ほうじ茶ミルク)、右がかき氷(バルサミコ苺) (C) 東龍
左がかき氷(ほうじ茶ミルク)、右がかき氷(バルサミコ苺) (C) 東龍

最後のお茶菓子はかき氷です。落ち着いた風味のほうじ茶ミルクと、やや酸味とフルーティー感のあるバルサミコ苺からチョイスできます。夏だけではなく、年中を通してのシグネチャースイーツ。

グラスワインが8種類も

ペリエ・ジュエ グラン・ブリュット (C) 東龍
ペリエ・ジュエ グラン・ブリュット (C) 東龍

肉料理にぴったりなワインも充実していて、シャンパーニュ1種、白ワイン3種、赤ワイン4種がグラスで提供されています。

ハウスシャンパーニュの「ペリエ・ジュエ グラン・ブリュット」(2,000円)は果実味が豊かで熟成感もあるので、肉を用いた前菜にもピッタリです。アメリカ・ワシントン州の「サヴェージ・グレース カベルネ・ソーヴィニヨン」(2,400円)はカベルネ・ソーヴィニヨン主体で、脂がしっかりな肉料理の味わいを深めてくれます。

Marushichi Seicha CRAFT BREW TEA (C) 東龍
Marushichi Seicha CRAFT BREW TEA (C) 東龍

他に生ビール、ハイボール、カクテル、サワー、ウイスキー、焼酎なども用意。ノンアルコールドリンクでは高級な日本茶「Marushichi Seicha CRAFT BREW TEA」のシリーズが他では飲めないラインナップです。

専属のソムリエもいて、料理に寄り添ったペアリングも可能なので、相談してみるとよいでしょう。

肉のスペシャリストになった背景

「明石前」のカウンター席 (C) 東龍
「明石前」のカウンター席 (C) 東龍

肉質や調理が素晴しかったことに加え、肉にまつわる話も聞けるなど、「明石前」は貴重な体験でした。

どのような経緯で肉のスペシャリストになったのか、明石氏は振り返ります。

「以前から肉料理に興味があり、肉のことを勉強したいと思って入社しました。肉に精通した前料理長の岡田さんの下でたくさんのことを学びましたね。肉は丸ごと仕入れているのですが、自ら解体することによって、どの部位がどういった特徴なのか、わかるようになりました」

料理長に就任してから、新しくなったこともあるといいます。

「以前は腿肉が中心でしたが、お客様に色々な部位を楽しんでいただきたいので、肩肉や腕肉も使うようにしました。同じ部位でも、個体や状態によって味わいや融点が異なります。ボリュームもフレキシブルに調整するようにしていますので、私がこだわりを持って選んだお肉で様々な体験をしていただけると嬉しいですね」

どういったゲストが「明石前」を利用しているのでしょうか。

「30歳以降のお客様が多いです。若い方は、誕生日などハレの日に利用することが多いですね。シェフズテーブルなので何でもご希望を承りますが、多くのお客様が前回と同じものを食べたいとリクエストされます。ファンになっていただいて、また来ていただけるのは嬉しいです」

感謝の気持ち

シェフは明石元秀氏 (C) 東龍
シェフは明石元秀氏 (C) 東龍

明石氏は日頃から次のように思っています。

「私は調理しているだけなので、色々な方に感謝していますね。生産者、卸業者、運送業者などたくさんの方のおかげで、素晴しい食材が届きます。調理を補助するスタッフ、サービスをするスタッフがいるからこそ、営業できるので、スタッフにも感謝していますね」

店名の「イノセントカーベリー」は、素材に無垢な気持ちで純粋に向き合うという「イノセント」と、肉の持ち味を損なわないように切り分ける「カーベリー」を組み合わせたもの。「明石前」で素晴しい食体験ができるのも、明石氏による肉への果てしない追求心と人々への真摯な感謝があるからではないでしょうか。

※価格は全て税込・別途サービス料10%

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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