太陽に最接近した探査機が生還 太陽表面から610万kmの接近距離記録を更新、コロナや太陽風の謎に迫る
本記事では、人類史上最も太陽に接近したNASAの探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が達成した偉業をご紹介します。
■1000度超の温度に耐えられる探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」
パーカー・ソーラー・プローブは2018年、大型ロケット「デルタ4ヘビー」に搭載され打ち上げられました。探査機そのものは乗用車ほどの大きさなのですが、太陽に到達するためには、火星到達の55倍、冥王星到達の2倍の打ち上げ力が必要となります。
パーカー・ソーラー・プローブも、金星などの惑星スイングバイを利用し、徐々に太陽に近づいていきます。太陽周辺では1370度程の高温にまで達しますが、厚さ約11.4センチの炭素複合材でできた太陽熱シールドにより高熱から探査機を守ります。その探査機内部温度は、約30度に保たれているとのことです。
さらに、搭載されている「ソーラープローブカップ」と呼ばれるセンサーは、太陽熱シールドの外に張り出して太陽の大気のサンプルを採集することで、実質的に太陽に「接触」することができます。
■12月24日に人類史上最接近距離の610kmに到達
2024年12月24日、パーカー・ソーラー・プローブは太陽表面から610万kmの距離に到達しました。これは人類史上最も太陽に近づいた人工物としての記録を更新しています。そして、その移動速度は時速70万kmに達しており、温度は982度にも及ぶとのことです。
ちなみに、太陽の大きさはどのくらいなのでしょうか。太陽の半径は約70万kmと言われており、水素とヘリウムのガスで構成されている「光球」が表面と規定されています。表面温度は約6000度と言われています。そして、上空2000km程度までは太陽の大気層である「コロナ」が存する領域があります。実はこのガスは太陽上面よりも温度が高く、100万~300万度もの超高温です。パーカー・ソーラー・プローブは既にこのコロナが存在する高度領域にも突入しているのです。
パーカー・ソーラー・プローブの偉大な成果により、コロナが超高温である理由や太陽風の加速原理などに関する謎が今後解明されるかもしれません。研究成果が楽しみですね。
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