東京都江東区の水道管破損事故。住民への補償はどうなるか?
保険の限度額を上回る額を支払うケースも
4月26日午後、東京都江東区の水道管工事の現場で水が噴き出し、一時、周囲が水浸しになった。また、周辺の住宅などおよそ1万戸で、濁った水が出た。
工事業者は「掘削機で水道管を壊してしまった」と話している。
4月22日には、大阪市西区北堀江で、道路のマンホールの取り替え工事を行っていたところ、地下にある水道管の空気弁から、水が噴き出した。大量の水が噴き上がり、その高さは、マンションの10階部分まで達した。
このような場合、補償はどうなるのか。過去の事例を紐解いてみたい。水道事業者は事故に備え、各種の水道保険に入っているが、その限度額を上回る補償額を支払うケースもあった。
2012年7月、大阪府堺市で、府道地下に埋設された鋳鉄製水道管が破損し、堺市、和泉市の約3万3000戸が断水や水の濁りなどの影響を受けた。堺市が住民に支払う補償額は1000万円を超えた。
3839件に対し4372万円の補償金
2011年6月、京都市西京区で水道管破裂事故が発生。市道の地下を走る水道管が老朽化で破裂し、平行して通るガス管を水が突き破った。周辺の約1500世帯が断水し、約1万5000世帯のガス供給が最長10日間にわたって止まった。
水道と同時にガスが止まったこともあり、京都市は、自宅の風呂が使えなくなった人への入浴代、浸水による床の張り替え、飲食店や美容院などの営業補償など、3839件に対し、4372万円の補償金を支払った。これは事故に備えてかけていた保険の限度額3000万円を上回った。京都市は同時に、大阪ガスに約9億8800万円の損害賠償も行っている。
2007年5月、岡山市中心部での水道管破裂事故では、14戸が浸水、マンションの立体駐車場に水が流れ込み、ゴンドラを上げ下げする地下のモーターや駐車場内のセンサーが故障した。岡山市は浸水被害を受けたマンション所有者に約432万円の賠償金を支払った。
2004年7月、呉市で県道の下に埋設されていた水道管が破裂し、大規模な断水が起きた。呉市は裂で噴き上がった水を浴びて被害を受けた付近の商店や民家など23戸に補償金計約1500万円を支払った。
こうした事故は全国で年間1000件以上発生している。その際、水道賠償責任保険が使用されるケースもある。広島市では水道賠償責任保険に係る事故履歴一覧表(平成25~29年度)をHPで公開している。
水道管の破損は今後も起きる
水道は高度経済成長期を中心に整備され、現在の普及率は98%になった。しかし、水道管が古くなっている。法定耐用年数40年を経過した管路(経年化管路)は15%あり、法定耐用年数の1.5倍を経過した管路(老朽化管路)も年々増えている。厚生労働省は水道事業者に更新を急ぐよう求めるが、財政難から追いつかず、すべての更新には130年以上かかる計算とされている。
また、水道管の埋設位置が正確に分からないことが、工事時のトラブルにつながることもある。図面がなかったり正確でないために、水道管の交換工事のときに、時間がかかったり、破損させたりする。2019年3月、千葉県旭市で断水が発生した。浄水場から水を送る大元の管が破損したため影響が大きく、約1万5000世帯が断水したが、水道管が想定よりも深い場所に埋設されており、復旧に時間がかかった。
今回のようなトラブルは今後も起こる可能性が高い。