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「血圧」が上がってきたら「骨折」「骨粗鬆症」にも要注意。1万6500人観察から明らかに【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

歳をとるにしたがい、色々な病気になるリスクが上がります。その中で盲点になりがちなのが「骨折」とその背景に隠れている「骨粗しょう症」でしょう。

実は血圧が上がってきたら「骨折」や「骨粗しょう症」にも注意した方が良いかもしれません。今回はそんな最新論文(4月5日掲載)をご紹介します。

でもその前に、まず、骨折がどれほど大変な怪我なのかを見ておきましょう。

厚生労働省の調査によれば、高齢者が「要介護」となる原因として4番目に多いのが「骨折・転倒」でした。脳卒中とほぼ同じくらいの割合です。

そして高血圧の人たちではこの「骨折」の危険性が1.5から2.5倍に上昇していることが分かりました。発見したのは中国・威海衛人民医院のシャンペン・ドゥ氏たち。この論文は、ネイチャーが出している「サイエンティフィック・レポート」という学術誌に載りました [文末文献1] 。

ドゥ氏たちが調べたのは、中国に住む、骨折したことのない1万6500人弱です。

この人たちを5年から18年間観察したところ、高血圧の人ではそうでない人に比べ、骨折を起こす確率が2.5倍も高くなっていたのです。

ここで鋭い方は、もしかすると「高血圧の人は年寄りが多いから骨折が多いんじゃない?」と思われたかも。

大正解です。

でもそういう「年齢」による影響を統計学的に除外(補正)しても、やはり高血圧の人では、高血圧でない人たちに比べ、骨折リスクが約1.5倍、高くなっていました。

(ちなみに「骨折」しても、その後の高血圧リスクは上がっていません)

骨から溶け出たカルシウムが血管の壁を石灰化?

ではなぜ高血圧だと骨折しやすくなるのでしょうか?ドゥ氏たちの以下のように推論しています。

骨から溶け出たカルシウムが血管の壁に沈着し、血管が硬くなる。その結果、血圧が上がるのではないか

順を追って説明しましょう。

「骨折が増えたのは骨粗しょう症が増えたからでは?」ドゥ氏たちはまずそう考えました。「骨粗しょう症」とはご存知のように、骨が健康な時に比べ「スカスカ」になった状態です。「スカスカ」の骨は十分が強度がないので、簡単に折れてしまうわけです。

なお日本における骨粗しょう症患者の数は「1300万人弱」と推算されています [骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版] 。「10人に1人」程度の割合ですね。

骨が「スカスカ」になるわけですから、骨に含まれていたカルシウムも骨から血液の中に流れ出てしまいます。ではどこに行くのか?

「血管の壁にへばり付いた」。これがドゥ氏たちの仮説です。

医学的にはこういう状態を「血管壁の石灰化」と呼んでいて、特に珍しい状況ではありません。

(余談ですが、だからカルシウムサプリは血管に良い影響を与えません)

カルシウムが沈着した血管は硬くなり血液が流れてきても拡がらない

石灰化した血管は柔らかさを失うので、中を通る血液がかける圧力(血圧)を「拡張して逃す」ことができません。つまり、血圧が上がるのです。

このように

「骨からカルシウム流出」→「骨粗しょう症となり骨折リスク上昇」

「骨からカルシウム流出」→「血管壁が石灰化して血圧上昇」

という二つの現象が並行して起きたのだとドゥ氏たちは考えているのです。

どちらも結構、恐ろしい話ですね。

大元は骨からのカルシウム流出なので、気になる方は、この論文持参で整形外科の先生に相談してはいかがでしょう?処方薬には治療に適したものもあります

いかがでしたか?

血圧が上がったら、その背景に骨粗しょう症があるかもしれない」という論文のご紹介でした。

骨関連では次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。

ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 高血圧の人は骨折リスクが高い

【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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