おいしい食材「ガザミ」を知っている? 長崎県の食材を用いた名門中国料理店の豪華コース
三大中華街
日本三大中華街はどこでしょうか。
それは、神奈川県横浜市の横浜中華街、兵庫県神戸市中央区の南京町中華街、長崎県長崎市新地町の長崎新地中華街です。
横浜中華街はアジア最大級の中華街であり、店舗数は600以上もあるといわれています。南京町は華僑人口が多く、イベントも充実。そして長崎中華街はこの中で最も歴史が古く、長崎グルメも楽しめるスポットです。
横浜市、神戸市、長崎市ともに港町であり、海外との貿易の要衝であったことから、西洋の外国人居留地が設けられました。西洋の外国人と共に中華系の華僑も渡って来て、中華街が発展していったのです。
三大中華街はどれも中国料理がおいしい地域であることは間違いありません。しかし、どちらかといえば、ぶらりと気軽に訪れてチャイニーズフードを楽しむ場所という印象も強いです。
このようなイメージがある中で、三大中華街のひとつである長崎県の食材を用いた美食の中国料理コースが注目されています。
それは、ザ・キャピトルホテル 東急の中国料理「星ヶ岡」で行われている「長崎県食材フェア」(8品コース 17,710円、9品コース 20,872円、共に税・サ込)です。
このコースは2021年9月1日から11月5日の平日ディナー限定で提供されています。
中国料理「星ヶ岡」
「星ヶ岡」は東急ホテルグループのフラッグシップであるザ・キャピトルホテル 東急の中国料理店。「ふかひれの姿煮」「蟹の卵入り つばめの巣のスープ」「パーコーメン(星ヶ岡スタイル)」が特に有名です。王道を守りながらも、六千円を超える高級担々麺「金昇坦々麺」を生み出すなどチャレンジも忘れていません。
この名門「星ヶ岡」で2021年から料理長として腕をふるっているのが、1978年生まれの山橋孝之氏です。日本のホテルにおいて40代の料理長は若いですが、日本中国料理協会が主催するコンクールでは2018年に銀賞、2019年には金賞を獲得するなど、実力は折り紙付き。
山橋氏の料理は、伝統的な中国料理を大切にしながらも、日本料理や西洋料理のエッセンスを取り入れ、モダンなニュアンスも感じられるのが特徴です。
特別イベントも
「星ヶ岡」の都道府県フェアは2016年9月から始まり、今では定番となりましたが、山橋氏が料理長として携わるのは今回が初めて。作家の白洲信哉氏と共に7月7日から長崎へ訪れ、2泊3日の食材探しの旅をしました。白洲氏は、父方の祖父母に白洲次郎氏・正子氏を、母方の祖父に小林秀雄氏をもつ文筆家。五島列島など長崎の各地に足を運び、生産者から様々なインスピレーションを得て、モダンな料理に昇華させています。
10月15日には、山橋氏と一緒に旅をした白洲氏によるスピンオフイベント「白洲信哉トークディナーショー」(36,000円、税・サ込)も開催。ジャーナリストであり、キミテラス代表の田中敏惠氏が聞き手となり、白洲氏から長崎の魅力を引き出します。
では、山橋氏による「長崎県食材フェア」のメニューをいくつか紹介しましょう。
※内容は変更になる場合があります
山・海・野の幸入り和華蘭お鰭椀のウェルカムフード
長崎県の伝統料理である卓袱(しっぽく)料理の風習にならい、乾杯よりも先に登場する山海の幸を織り込んだお鰭椀です。化学調味料を一切用いず、3時間煮込まれたスープを2時間蒸し、味わいを凝縮。烏骨鶏の腿肉、タイ、キヌガサダケ、クコの実など具材は豊かで、体が温まります。
長崎産食材を取り入れた前菜の盛り合わせ
長崎食材の魅力を伝える前菜の盛り合わせ。ガザミ、つまり、長崎県のワタリガニをメインに据えた前菜です。食味が素晴らしいので、長崎県で水揚げされたガザミの多くは県外へ出荷されています。
プレートに載せられているのは、火を入れて島原の海苔と合わせたアオリイカ、5日間塩漬けした地鶏「長崎対馬地どり」のモモ肉、麦芽糖でコーティングして丸一日タレに漬けたチャーシュー、椿油で焼き上げた長崎県のアジ。味わいも色彩もバラエティに富んでいます。
長崎県橘湾水揚げ ガザミの蟹肉入りふかひれの姿煮
気仙沼のヨシキリザメの尾びれを丸ごと使った姿煮料理。ただでさえ贅沢な料理ですが、ガザミのほぐし身がたっぷりと加えられ、食味を深めています。ソースは醤油が中心で、ガザミの旨味が引き立ち、白キクラゲがよいアクセント。
五島福江港直送 五島〆ハタの蒸籠蒸し 青葱の香り
五島〆して鮮度が保たれた高級魚のスジアラ(ハタ)を醤油で蒸し上げています。ピーナッツオイルと五島の塩で、スジアラの繊細な味わいに厚みをもたせた魚料理。
南島原 深江産車海老香る揚げトースト
17センチのクルマエビをあえて味付けしないでトースト風に米油でサックリと揚げています。長崎県のカラスミ、有明海苔を散らし、長崎食材の素晴らしさを表現。
「雲仙あかね豚」の東坡肉 如意巻添え
「雲仙あかね豚」はトウモロコシと米をブレンドしたオリジナル飼料で育てられたブランド豚。オレイン酸が豊富で、脂っぽくありません。砂糖をカラメリゼして醤油風にし、スターアニスやニッキといったスパイスも使用せず、味付けは塩だけ。
「雲仙あかね豚」の奥行きのある食味が存分に味わえる、素晴らしい豚肉料理です。通常の東坡肉とは異なり、マスタードを添えて、味わいの変化も楽しめます。
長崎俵物 生からすみと海老卵の和え五島手延うどん
五島うどんは椿油を塗って熟成されたうどんで、細いのにもっちりとしてコシがあります。白ワインで伸ばしたカラスミを用いたソースは、思った以上に味わいが濃厚。海老のパウダー、アサツキ、黄ニラが加えられて中華風に。上にあしらわれたトンブリと穂紫蘇で色彩も美しいです。
長崎の食材に感動
どれも印象的な料理ばかりですが、どのようにして考案されたのでしょうか。
山橋氏は「長崎に訪れる前にメニューの構想は終えていたが、実際に長崎を訪れて見て回ったら全てが引っくり返った。どの食材も予想以上に素晴らしかったので、東京に帰ってからメニューを一からつくり直した」
当初は豚肉を使うイメージはなかったといいます。しかし、「雲仙あかね豚」の食味に感動したので、豚肉料理を中心に据えたコースに組み立て直しました。
料理のこだわりについてはこう述べます。
「長崎の食材は力がとても強いので、持ち味を活かすように調理している。五島の塩が非常に合うので、できるだけシンプルな味付けした」
順調に進んだようにみえますが、苦労した点もあります。
フカヒレの姿煮にガザミを合わせましたが、きれいにガザミの身を取り出すのに苦労しました。手間隙かけただけあって「フカヒレと蟹の身は相性が抜群なので、是非とも味わっていただきたい」という自信の一品になっています。
都道府県フェアでは新しいことにチャレンジ
日本で最も島が多い都道府県はどこでしょうか。
それは、五島列島、壱岐島、対馬など、全国にある6,852島のうち、約14.2%に当たる971島を擁している長崎県です。
長崎はたくさんの島を有しており、ここまで紹介してきたように食文化や食材が豊か。長崎から東京までの距離は約967キロメートルありますが、長崎から上海までの距離は約850キロメートルと、東京よりも上海の方が近いです。
山橋氏は上海料理を得意としており、「日本でも本場と同じような上海料理を体験できる料理を提供していきたい」と力を込めます。都道府県フェアでは日本各地の食材をリスペクトしながら新しいことにチャレンジしているので、山橋氏による「長崎県食材フェア」を是非とも体験してみてください。