【普段の練習だけでは暑熱馴化は不十分?】夏のマラソンをしっかり走るためにランニング後にして欲しいこと
夏になって、暑い中で開催されるランニングイベントが増えてきました。普段から暑い中で練習しているから、暑熱馴化もできていると信じているランナーは多いと思います。ですが我々のような一般ランナーの練習時間は、仕事前の早朝や、仕事の後の夜間です。対して大会は日中で、厳しい日差しもあります。さらには大会前は練習量を減らすため、暑熱馴化も弱まってしまいます。その結果、暑さの中で走るパフォーマンスが低下してしまっているランナーが多いように思います。ではどうしたらよいのでしょうか。
1.暑熱馴化のために、サウナや温水浴は効果が期待されている
暑さに馴れるためには、暑さの中のランニングだけではありません。世界では温暖化や人口の高齢化により、猛暑時に健康状態が悪化するリスクのある人が増えています。そこでランナーに限らずそのような集団に、熱中症の予防などを目的として、サウナや温水浴が有望な対策として論じられています。サウナや温水浴は、心血管機能と自律神経系を整え、暑い日中の心血管への負担を軽減できる可能性があります。結果、暑熱馴化に効果的な戦略になり得ることが期待されています。
2.トレーニングをしていない人でも、サウナ浴は高温下での持久力パフォーマンスが上昇する
暑熱馴化だけではありません。運動をしていない人でも、持久力パフォーマンスが上昇するといわれています。2020年のスペインの研究では、トレーニングを行っていない男性40人に対して、3週間にわたって計9回のサウナ浴を行った群と行わなかった群を比較したところ、サウナを行った群で最大酸素摂取量の向上がみられ、さらに高体温下での有酸素・無酸素運動の呼吸閾値における力が向上し、有酸素運動能力がアップしました。
3.ランナーであればトレーニングと組み合わせるのは、運動後がおすすめ
前述したとおり運動していない人は、普通にサウナを利用するだけでもパフォーマンスがあがる可能性があるわけですが、ランナーならどういう利用の仕方をするのがよいのでしょうか。文献を調べるとほとんどは、トレーニング後に温水浴やサウナを行った研究になっています。そのなかで2020年のイギリスの研究をみてみましょう。対象は大学の陸上部の中距離ランナー20人で、3週間のあいだ練習後30分のサウナ(冷水浴なし)を利用することでランニングパフォーマンスが向上するかを調べたものです。
その結果、練習後にサウナを利用した群はサウナを利用しなかった群に比べ、最大酸素摂取量や乳酸作業性閾値といったランニングパフォーマンスが大きく向上することが分かりました。そしてランニングの負荷を徐々に上げていく「漸増負荷試験」では、対照群に比べて限界に達する時間が54秒延長しました。
ただしこの効果は、練習後のサウナを続ければ続けるほど効果がアップするものではありません。
運動後のサウナを7週間ものあいだ続けられたのが6人と少な目ですが、3週間から7週間に伸ばしても、暑熱下の運動に関わる直腸温のピークや最大心拍数の変化はわずかです。一般的な暑熱馴化が2週間でほぼ最大となるのと同じことなのかもしれません。
4.ランナーのサウナの取入れ方
夏の暑い時期のマラソンで成果を出すためにサウナを利用する場合、大会の3週間前からで十分です。ちょうどこの時期は、トレーニングを少しずつ減らす時期になります。少しずつトレーニングを減らす分、暑さに暴露される時間も短くなって暑熱馴化が少しずつ減弱していきます。そこをサウナで補ってはいかがでしょうか。
ですが暑熱下のトレーニング後に、冷水浴なく30分のサウナは結構大変です。熱中症になって入院となれば、大会への参加もできなくなってしまいます。さらには、ランニングのあとすぐにサウナ浴ができる環境も多くありません。そこでトレーニングのあとに無理のない範囲で、追加で汗をかけるサウナや普通の入浴を行ってはいかがでしょうか。トレーニングで得た以上の暑熱馴化が身につくと思います。