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1月期から10月期までの「連続ドラマ」、各シーズンで際立っていたのは?

碓井広義メディア文化評論家
間もなく暮れる2023年(写真:イメージマート)

残りわずかとなった、2023年。

今年も1月期から10月期まで、何本もの連続ドラマが放送されました。

各シーズンの中から1本ずつ、際立っていた作品を振り返ってみます。

<1月~3月>

1月期では、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)を挙げたいと思います。

市役所勤務の近藤麻美(安藤サクラ)は、突然の交通事故で死亡しました。

気づくと奇妙な空間にいて、案内人の男(バカリズム)から「来世ではオオアリクイ」だと告げられます。

オオアリクイに抵抗のある麻美は、「今世」をやり直すことを選択しました。

ただし、今度は「徳」を積むことが必要です。

人生に修正を施すため、善行に励む麻美。

しかも、この不思議で可笑しい「やり直し」が何度も続くのです。

この「設定」の妙! 

よく練られた、バカリズムさんのオリジナル脚本の成果です。

ユーモラスでリアルなセリフの中に、「生きること」の奥深さが巧みに表現されていました。

<4月~6月>

次の春ドラマでは、『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)です。

主人公は、金髪ヤンキー系女子のミナレ(小芝風花)。

地元ラジオ局の麻藤(北村一輝)にスカウトされ、深夜番組「波よ聞いてくれ」のパーソナリティーになります。

ある夜、地震で大停電が発生しました。

麻藤がミナレに言います。

「おまえがいつものように、『一人じゃない、大丈夫』って声を届けることに意味がある」

ミナレは、闇に沈んだ街に向かって、朝まで休まずしゃべり続けます。

このドラマ、何よりミナレのキャラクターが、原作漫画を超えて際立っていました。

彼女のおかげで状況が動くというより、状況自体をぶっ壊すようなヒロインを、小芝さんが全力で演じていたのです。

<7月~9月>

夏ドラマの中からは、日曜劇場『VIVANT』(TBS系)。

まず、長期モンゴルロケを含む壮大なスケール感に驚かされました。

また自衛隊の秘密部隊「別班」という設定も秀逸でした。

そして起伏に富んだストーリーがあります。

映画『ミッション:インポッシブル』などを思わせる、ジェットコースター型の冒険スパイアクションへの挑戦です。

原作は、演出を務めた福澤克雄さんのオリジナル。

『半沢直樹』や『下町ロケット』の八津弘幸さんら複数の脚本家が参加しました。

主演の堺雅人さんはもちろん、俳優陣の熱演もあり、テレビドラマの地平を広げる野心作となりました。

<10月~12月>

最後は、最終回を迎えたばかりの『コタツがない家』(日本テレビ系)です。

主人公はウエディング会社社長の深堀万里江(小池栄子)。

仕事面は完璧なのですが、家庭は問題山積です。

夫の悠作(吉岡秀隆)は廃業寸前の漫画家。

高校生の息子・順基(作間龍斗)はアイドルを目指して挫折。

そこに熟年離婚した父、達男(小林薫)が転がり込んできました。

リビングでの「笑える会話バトル」が、このドラマの魅力です。

筋立てよりも人間描写でドラマをけん引する、金子茂樹さん(『俺の話は長い』など)のオリジナル脚本。

それを体現する、俳優たちの軽妙で細やかな演技。特に、主演の小池さんの大健闘に拍手です。

両者がガップリ四つに組み、あらためて「家族っていいじゃん!」と思わせてくれる、ホームコメディーの快作となりました。

そして、2024年へ

来年は、どんなドラマを見ることができるのか。

ジャンルも手法も問いません。

「これを見せたい!」という、作り手たちの強い意志が感じられるドラマが、1本でも多く登場することを期待しています。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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