北海道庁「一方的に鉄道廃止決める」姿勢は石破政権で変わるのか!?地方創生は地域の知恵結集要と所信表明
2024年10月4日、第102代内閣総理大臣に就任した石破茂氏は、衆議院本会議において所信表明演説を行った。その中で、地方創生については、「地方こそ成長の主役」として、これまでの成果と反省を活かして地方創生2.0として再起動させることを表明した。そして、地域交通は地方創生の基盤ということも明らかにされた。
地方創生の所信表明の中で、地方創生を実現する上での重要なポイントとして「産官学金労言」という言葉が飛び出した。これは、地方創生の精神を表した言葉であるという。「産官学金労言」とは、すなわち、産業界、行政機関、大学だけでなく中学校・高等学校も含めた教育機関、金融機関、労働者、そして報道機関という地域の多様なステークホルダーを意味しているといい、これらの多様なステークホルダーが知恵を出し合い、地域の可能性を最大限に引き出し、都市に住む人も地方に住む人も、すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会の実現を目指すという。
しかし、北海道では北海道庁がこうした首相の所信表明の真逆の対応を取り続けていることが北海道新幹線の並行在来線問題で明らかとなった。北海道新幹線の札幌延伸にともなってJR北海道から経営分離される函館―長万部―小樽間のうち、長万部―小樽間については、2022年3月に北海道庁が主導する密室の協議会で廃止の方針が決定された。この場に、地元のバス会社が呼ばれていなかったことから、その後、バスドライバー不足が表面化し、協議は泥沼化。並行在来線の廃止は沿線住民にとっても寝耳に水だったこともあり、特に沿線の余市町や蘭越町では鉄道存続に向けての声が高まっている。
さらに、函館―長万部間についても、北海道庁は、バスドラバー不足で既存のバス路線の減便・廃止が相次ぐ中で、貨物列車の問題も含めて鉄道路線の存廃を保留しバス転換を議論するという意味不明な協議を進めている。こうしたなかで、道は2023年12月に開催された渡島ブロック会議において、新幹線アクセス路線として輸送密度が4000人を超えている函館―新函館北斗間も含めて全線のバス転換を沿線自治体に対して提案した。もちろんこの協議の場に沿線にバス路線網を展開する函館バスは呼ばれていなかった。
先に廃止の方針を決めた長万部―小樽間のうち余市―小樽間については輸送密度が2000人を超えており、地元のバス会社が最も鉄道代替バスの引き受けに難色を示した区間だ。今回、北海道庁が廃止・バス転換を進めようとしている函館―新函館北斗間は余市―小樽間の2倍の輸送密度のあることから北海道庁は学習能力がなく、もはやその政策能力を疑わざるを得ない。
地域のステークホルダー抜きで北海道庁が計画した机上の政策をそのまま地域に押し付けようとする政策姿勢は、石破首相が所信表明演説で発言した地域のスタークホルダーの知恵の結集を要とする「産官学金労言」という地方創生の精神とは180度異なるものである。石破首相の誕生によりこうした北海道の政策姿勢に変化はみられるのか注目である。
(了)