ノート(95) 取調べを可視化せずメモも廃棄していたり、起訴前に国会議員を取り調べなかった点について
~整理編(5)
勾留42日目(続)
再会
「取調べやから」
夕食後、突然、刑務官が自殺防止房まで迎えにやってきた。
――また最高検か。今さら何の用だろう。今度の検事は誰なのか。
そうしたことを思いつつ、事務棟2階のいつもの9号室に入った。驚いたことに、そこにいたのは、約2週間前に最後の取調べだということで握手で別れていた中村孝検事だった。さすがに中村検事も、バツが悪そうな顔をしていた。
「どうしたんですか」と聞くと、厚労省事件の捜査や公判に対する本格的な検証活動を行うため、引き続き僕から聴き取りを行うように指示された、とのことだった。三浦守検事の場合と同じく、「検証」とは名ばかりで、その実態は起訴後の被告人に対する強制的な取調べにほかならなかった。
にもかかわらず、黙秘権の告知をせず、供述調書や取調べ状況報告書も作らず、聴き取りメモを事件記録に編てつすることすらしない、という問題も相変わらずだった。
大坪さんや佐賀さんの弁護団は、後の裁判の中で、この聴き取りのことに全く触れてこなかった。そもそも聴き取りの状況などが証拠として残されていないわけだから、最高検が「検証」という抜け道的な名目を使い、起訴後も僕と接触をしていたということまで考えが及ばなかったのだろう。
それでも、官僚臭がして取調べの下手な三浦検事よりは、何かと勝手を知っている中村検事の方がやりやすく、話し相手としても歓迎だった。
本格的な検証活動の開始
この記事は有料です。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバーをお申し込みください。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバー 2018年9月
税込1,100円(記事3本)
2018年9月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。