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アップル、iPhone14シリーズが需要減と出荷減に直面

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
鴻海(ホンハイ)精密工業の鄭州工場、暴動で操業停止(写真:ロイター/アフロ)

米アップルが新型スマートフォン「iPhone 14」シリーズの年内生産台数を当初計画から少なくとも300万台減らす見込みだと、ブルームバーグ通信が報じた

普及モデル「iPhone 14」と「14 Plus」需要減

アップルとサプライヤーはiPhone 14シリーズの年内生産目標を最大8700万台としている。当初計画は9000万台だったと事情に詳しい関係者は話している。主な理由は普及モデルの「iPhone 14」と「同14 Plus」に対する需要の減少だという。

米金融大手ジェフリーズの分析によると、iPhone 14と同14 Plusの販売は急速に落ち込んでおり、世界最大のスマホ市場である中国では減速が激しくなっているという。

上位モデル「14 Pro」と「Pro Max」供給減

一方で上位モデルの「iPhone 14 Pro」と「同14 Pro Max」は好調のようだ。アップルは11月6日に声明を出し、14 Proと14 Pro Maxに対する需要は引き続き旺盛だと述べた。

ただし、これら上位モデルの出荷台数は「当初の予想を下回る見込みだ」と明らかにした。中国政府の厳格な「ゼロコロナ政策」により、同国鄭州市にある組立工場で一時的に影響があった。同社は上位モデルについて「顧客の手元に届くまでの待ち時間が長くなることが予想される」と説明した。

米ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアによると、影響があったのは、iPhoneの製造を請け負う、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国工場(河南省鄭州市)。

同工場では、11月22〜23日に従業員の大規模な抗議活動が起きた。人員補充のために新たに雇った新人工員に対する手当の支払いや工場内の衛生環境の不備などを巡って不満が噴出した。これに先立つ10月31日、ウォール・ストリート・ジャーナルやロイターは、厳しい行動制限によって工場の稼働が大幅に低下していると報じた。

約20万人の従業員を抱える同工場では、多くが近隣の宿舎に住んでいる。工場は、中国政府の厳格なゼロコロナ政策の下、従業員が宿舎と工場間のみを移動できる「クローズドループ」操業を行うという条件で営業が許可されていた。

この規制は12月8日に解除されたが、10〜11月時点ではその管理体制に不満を持ったり、感染を恐れたりする従業員が仕事に戻ることを拒否。施設を脱出する従業員も現れるなど混乱が生じた。

10〜12月期業績に影響か

今回の供給遅れは、これまでサプライチェーン(供給網)の混乱をほぼ回避できていたアップルにとってコロナ禍における最大の打撃になる可能性があると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

アップルは声明で、「全工員の健康と安全を確保しながら、通常の生産水準に戻すための緊密な連携を、サプライヤーと取り続けていく」と説明した。

鴻海は「パンデミック(世界的大流行)を食い止めるため政府と協力しており、できるだけ早くフル稼働に戻せるよう努力している」と述べた。同社は、22年10〜12月期の業績見通しを下方修正することも明らかにした。鴻海はこれまで22年10〜12月期について、慎重ながらも楽観視していると説明していた。

ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアは12月8日、鴻海の創業者、郭台銘(テリー・ゴウ)氏が、中国政府に対しゼロコロナ政策の緩和を働きかけていたことが分かったと報じた。

  • (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年11月9日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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