世界スマホ出荷、アップルのみプラス成長 市場は依然低迷中
米調査会社のIDCのスマートフォン市場リポートによると、2022年7〜9月期の世界出荷台数は3億190万台で、前年同期から9.7%減少した。5四半期連続の落ち込みで、減少幅は7〜9月期として過去最大だった。世界的な需要低迷と先行き不透明な経済を背景にスマホ市場は苦戦が続いている。
減少の主な要因は新興国市場だ。需要不足やコスト高のほか、インフレ進行がこれらの国の可処分所得が少ない消費者に打撃を与えた。これによりメーカー各社の在庫が積み上がり、生産・出荷台数が抑制されたとIDCは分析している。
アップルだけが前年同期比増加
依然として市場低迷は中国メーカーに大きな打撃を与えているが、韓国サムスン電子や米アップルなどを含むすべてのメーカーが影響を受けている。ただし、アップルだけは7〜9月期にプラス成長した。
22年7〜9月期のメーカー別出荷台数は、首位のサムスンが6400万台、2位のアップルが5190万台。この後、中国・小米(シャオミ)の4050万台、中国vivo(ビボ)の2590万台、中国OPPO(オッポ)の2580万台と続いた。
アップルは前年同期から1.6%増加した。これに対しサムスンは7.8%減、小米は8.6%減。vivoとOPPOはそれぞれ20%以上減少した。
iPhoneの売上高、前年同期比9.7%増
こうしたアップルの底堅さは決算にも表れている。22年7〜9月期の「iPhone」の売上高は前年同期比9.7%増の426億2600万ドル(約5兆7600億円)だった。この前年同期比伸び率は4〜6月期実績(2.8%)を上回っている。
市場回復は23年から、ただし緩やかに
今後のスマホ市場を地域別にみると、中・東欧を除く世界の全地域で、22年の出荷台数が前年割れとなる見通し。世界最大市場の中国は、従来予測と変わらず12%程度減少するという。中国市場の規模を考えると、この減少率は世界全体に大きな影響を及ぼすとIDCは指摘する。
また、北米、西欧、日本などの先進国市場の需要はやや改善するとみられる。だがそれでも1桁台前半から半ばの減少が予想される。アジア太平洋地域や中南米、中東、アフリカなどの新興国市場は2桁台の大幅減が予想されるという。
IDCのライアン・リース氏によると、スマホ販売は世界中でいくつかの変わった動きが見られるようになった。例えば、高価格帯スマホが多く販売される先進国市場は、その何分の1の価格で販売される新興国市場よりも好調に推移している。
その理由としてIDCは、先進国市場における割賦販売や下取りプログラムの充実を挙げている。
ただ、23年以降に目を向けると、世界市場が成長するためには新興国市場の力強い回復が不可欠だという。
IDCは従来予想で市場回復時期を23年としていた。見通しは依然変わらないものの、7〜9月期の市場動向を考慮すると、その時期は遅れるという。「22年内は出荷台数がさらに大幅減少する。回復が見られるのは23年からで、その速度は緩やかなものになる」(IDC)としている。
- (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年11月1日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)