今日閣議決定される「骨太方針2021」で、プライマリーバランス黒字化堅持が意味するもの
6月18日、菅義偉内閣となって初めての「骨太方針2021」が閣議決定される。
既に、「骨太方針2021」の内容については、報道もあるが、6月9日に開催された経済財政諮問会議第8回会議合で原案が、明らかにされている。
その中には、「財政健全化の堅持」が明記されることとなった。原案では、今年の政策的経費を今年の税収で賄えるかどうかを図る財政指標であるプライマリーバランス(PB)について、
と記された。
これに政府がこだわる1つの理由に、政権の求心力を維持する狙いがあろう。「『ワクチン後』に待ち受ける日本医療制度の課題 2022年度予算編成の焦点は診療報酬改定に」で詳述したが、そもそも予算編成は、政権の求心力の源である。その予算編成をいかにやりくりするかが、政権維持のカギとなる。
与党議員や利害関係者は、その予算で、自らが求める案件を採用して欲しいと手ぐすねを引いて待っている。しかし、予算には限りがあるから、予算要求を全て受け入れるわけにはいかない。政権は、どれを受け入れるか取捨選択しなければならない。
そこで、予算編成過程で、その予算要求を、何の目安もなく受け付ければ、要求は採用されて当たり前という構図となり、採用されないと政権にそっぽを向いて、求心力を失う恐れがある。だからこそ、敢えて予算枠をはめて、その枠内でしか要求が認められないという構図を作り出すことで、要求の採用をめぐって内閣に求心力が生まれる。
もちろん、予算にどう枠をつくるかも、政権にとって重要だ。大盤振る舞いできる緩い枠ならば、予算要求が認められてもありがたみに欠ける。容易に要求が認められるなら、要求を認めてくれた政権への謝意も薄くなる。
巨額の予算が必要となる国民全員への一律給付金を支給する要求や大規模公共事業の要求も、いとも簡単に認めてしまえば、財政支出を出して当たり前となって、予算を割いた割には政権の浮揚には資さない、という判断もあるだろう。
だから、予算要求が認められたときのありがたみを高めるために、ほどほどに厳しめの予算枠を設けておかないと、政権の求心力も高まらない。
厳しめの予算枠を設けるには、それを裏付けるコミットメントが必要となる。なぜそんな厳しめの予算枠を設けなければならないかが問われる。予算要求をする側は、認めてもらいたいから、厳しめの予算枠は不都合だ。だから、予算枠を緩くしたがる。それでもなお、根拠なく厳しめの予算枠を設けると、それはそれで政権批判につながる。
そこで、近年のわが国で用いられているのが、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化である。今年の政策的経費が今年の税収だけで賄いきれないと、国債をさらに増発しなければならない状態となり、将来の国民に負担をつけ回す。これが、プライマリーバランスが赤字の状態なので、この赤字を解消する。それが、プライマリーバランス黒字化の狙いである。
プライマリーバランス黒字化に関連付けて、予算枠を設ける。それが、「骨太方針2021」に盛り込まれる
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