Yahoo!ニュース

「そのコースでいいの?」走るコースを決めるときに、「人が少ない」「信号が少ない」よりも大事なこと

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ
写真は写真ACより

ランニングの練習は、どこでもできるのがいいところです。ですが混雑した道や、信号で何度も止まっては、よい練習をした気分にはなれません。なので「人通りが少なくて、信号の少ない道」が、いい練習環境と思われがちです。ですが強度の高い練習をするために、実はもっと大事なことがあるようです。2024年8月に公開された中国からの文献をみてみましょう。

2023年9月の上海でのランニングのデータを用いた解析

ランニングアプリ「Keep」のデータを用いて、ランニング強度とコースの関係性を解析:Guo H et al.BMC Public Health.2024
ランニングアプリ「Keep」のデータを用いて、ランニング強度とコースの関係性を解析:Guo H et al.BMC Public Health.2024

この文献では、中国のNo.1フィットネスアプリの「Keep」のデータを用いて調べています。上海のエリアに限定し、そのエリア内で合計973万回のランニングと、545のランニングルートを解析しました。ランニングルートはまず、地図のような大きな視点で人口や周囲の建物、公園やバス・地下鉄との関係性を算出しました。またGoogleのStreet viewを用いて、緑や道、空、建物などの情報を算出しました。これらの数値と、そこを走っているときのランニング強度の関係性を調べています。つまりはどんなランニング環境の時に、しっかり走れているのかを調べているのです。

ランニング強度と周囲の環境の相関性

ランニング強度と、周囲の環境との相関性:Guo H et al.BMC Public Health.2024より改
ランニング強度と、周囲の環境との相関性:Guo H et al.BMC Public Health.2024より改

ランニング強度と周囲の環境の相関性をみると、交差点の多さはやや関係あるものの、人の多さや人口密度はあまり関係ありませんでした。それよりも緑の多さや空の大きさの方が、ランニングの強度と強い関係性がみられました。

混雑していても、人を避けて走るのはそれなりの運動強度になるのかもしれません。人のいない道よりも、緑が多くて空が広い、そんな視覚的に開放的な景観がランニング強度を上げるようです。

ランニングは、視覚的に開放的な環境で

写真は写真ACより
写真は写真ACより

実際にこのような研究は以前からされており、目線の高さに緑が多く、開放的な街路環境はランニングによい影響があり、視覚的に混雑していて交差点が多い道路はランニングに悪影響があると報告されていました。息苦しくなるようなビルの谷間で走るよりも、酸素をいっぱい作っていそうな草木を見ながら、胸いっぱいに空気を吸い込めそうな開放的な環境で走った方が、呼吸が楽になって速く走ってしまうのかもしれません。

公園や河川敷、街路樹のある道がランナーで賑わうのは、理に適っているのかもしれませんね。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

たくや/ランナーの最近の記事