海上自衛隊、護衛艦隊を廃止して「水上艦隊」(仮称)を新編へ
防衛省は8月30日、過去最大の8兆5389億円に及ぶ2025年度防衛予算の概算要求を発表した。これに合わせ、海上自衛隊の大掛かりな改編計画も発表した。
それによると、第1〜4の4つの護衛隊群と第11〜15の5つの護衛隊からなる護衛艦隊と、掃海隊群をそれぞれ廃止する。そして、そうしたこれまでの護衛艦隊や掃海隊群などの水上艦艇部隊を一元的に指揮監督する体制を整備するため、「水上艦隊」(仮称)を新編する。改編完了時期は2025年度末を予定している。
海上幕僚監部広報室は「水上艦艇部隊の完全なスクラップ・アンド・ビルド(廃止と新設)になる」と説明する。
30日に公表された防衛省の予算資料によると、概要図は以下のようになっている。
防衛省担当者は次のように解説した。
「現在、護衛艦隊の隷下に第1〜4の護衛隊群、第11〜15の護衛隊、掃海隊群、さらに地方隊に掃海隊とミサイル艇隊があるが、これらを自衛艦隊隷下の水上艦隊と改めて、そこにすべての船を集約する。そのうえで、機能別に再構成する。
第1~3水上戦群は3正面のオペレーションで対応できるようにしていく。そのために日々しっかりと訓練をしていく。
水陸両用戦機雷戦群はいままでの掃海隊を集約するとともに、輸送艦をここに集めて機雷戦や水陸両用戦を支援していく。
哨戒防備群は警戒監視のために使う船をここに集約する。警戒監視はこれらの船でやっていく。こうすることで、第1~3水上戦群は日々訓練に集中でき、長期的にもオペレーションをしっかりと対応していけるようになる」
「今まで第1〜4の護衛隊群があったが、コンセプトとしては、そのうち2つの護衛隊群がオペレーションをし、1つが維持整備のメインテナンスに入り、残りの1つが訓練するとの考え方で4つの護衛隊群が設けられていた。そして、第11〜第15の護衛隊は警戒監視を行ってきた。安全保障環境が厳しくなる中、しっかりと即応体制でオペレーションができる部隊を増やそうということで再編成した。第1~3水上戦群がメインの部隊となるが、そこに今まで4つあった護衛隊群を3つにして、1つの水上戦群に設ける船の数を増やす。そうすることで、1つの水上戦群の中で即応であったり、遠征であったり、訓練であったりに回していくことができ、いざ何かあれば3つの水上戦群すべてがオペレーションができる形にする。
あわせて船を集約して、先程申した通り、水陸両用戦など機能別に船のかたまりを再編成した。より機動的かつ中長期に対応できるようにしていきたい。護衛艦隊がそのまま水上艦隊に『衣替え』する形になっている」
今回の海自の改編は、2022年12月に策定された防衛力整備計画(2023年度~2027年度)の「別表3」に基づき、今後10年間で水上艦艇部隊(護衛艦部隊・掃海艦艇部隊)を6個群(21個隊)にする計画に沿ったものとなる。
海幕広報室によると、今回の改編が完了する来年度末の時点では、5個群(21個隊)になる。
海自は現在、4つの護衛隊群を有し、各護衛隊群は1隻のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)、5隻の汎用(はんよう)護衛艦(DD)、2隻のイージス艦(DDG)の計8隻で構成されている。
【関連記事】
●海自の大規模改編、護衛艦隊は廃止されても「護衛艦の呼称は残る」海幕長が明言 DDHの配備先も回答
●海自の「水上艦隊」新編、反響大きく 「令和の連合艦隊」との声も #専門家のまとめ