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海自の「水上艦隊」新編、反響大きく 「令和の連合艦隊」との声も #専門家のまとめ

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
太平洋で合同訓練を実施する護衛艦「いずも」と「のしろ」(海上自衛隊護衛艦隊)

防衛省は8月30日、来年度防衛予算の概算要求を発表した。これに合わせ、海上自衛隊の改編計画も発表した。52隻の護衛艦を運用する「護衛艦隊」と機雷の除去などを行う「掃海隊群」を廃止し、水上艦艇部隊を集約する「水上艦隊」(仮称)を新編する。護衛艦隊は1961年に設立され、60年余りの歴史と伝統を誇る。ネット上では、その消滅に襲撃が走る一方、水上艦艇部隊を統合する新たな「水上艦隊」を「令和の連合艦隊」と呼ぶ声も上がっている。

ココがポイント

▼海上幕僚監部は今回の海自の大改編を「水上艦艇部隊の完全なスクラップ・アンド・ビルド(廃止と新設)になる」と説明する。

・海上自衛隊、護衛艦隊を廃止して「水上艦隊」(仮称)を新編へ(Yahoo!ニュース エキスパート 高橋浩祐)

▼日本を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、新時代の海自へと生まれ変わるためには、今回の大改編は避けて通れないもの。

創設以来の大改編!? 海上自衛隊「70年の歴史ある大部隊」が次々消滅! 佐世保&呉の地方隊にもメス(乗りものニュース)

▼新編される水上艦隊の司令部は神奈川県横須賀市の海上自衛隊横須賀基地に置き、海将が指揮官を務める。

防衛省 来年度予算案の概算要求 過去最大の8兆5389億円に(NHKニュース)

▼水上艦隊の隷下には「水上戦群」や「水陸両用戦機雷戦群」、「哨戒防備群」といった新たな組織が編成される。

海上自衛隊、仮称「水上艦隊」を新編へ 護衛艦隊、掃海隊群等を再編(FUNEKO)

エキスパートの補足・見解

今回の海自の改編は、2022年12月に策定された防衛力整備計画(2023年度~2027年度)で「今後導入する哨戒艦と護衛艦や掃海艦艇を一元的に練度管理し運用するため、既存の護衛隊群や掃海隊群を改編し水上艦艇部隊とする」と決まったことを受けたもの。このため、一部既報でもあるためか、大手メディアはあまり詳しくは報じていない。防衛省の予算概算要求資料でも最後の方にあまり目立たない形で記載されている。しかし、元自衛艦隊司令官の香田洋二さんが最近発刊された軍事専門誌で「これまで築き上げてきた護衛艦隊の戦闘能力弱体化が懸念される」と述べるなど、今も根強い反対意見がある。日本の海上防衛を高めるため、具体的にどの艦艇をどこに割り振っていくのかなど、注目が集まる。

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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