寝すぎだろ!10カ月眠って春一番に目覚めるこの青い虫は何者?
3月に入ると、土の中から小さな青い虫がワサワサ大量に出現してくる。このコガタルリハムシは、早春の野原で一番多く見かける虫かもしれない。
「なんて早起きの虫なんだろう」と思ったら大間違い。早春に大量発生するコガタルリハムシは、実は前の年の5、6月に羽化し、1週間ほど活動した後、土に潜って長い長い眠りについていたのだ。つまり、1度起きた後、9~10カ月間眠り続けたことになる。
これでは、早起きと言うより、とてつもない寝坊ということになる。ハムシやテントウムシの中には、夏の暑い時期に活動を休止し「夏眠」という状態になるものが多く見られるが、こうした夏眠の期間はたいてい2~3カ月だ。
それに対し、コガタルリハムシは、夏も冬もずっと眠り続けるという、睡眠欲が異常に強い変な虫なのだ。
春に目覚めたコガタルリハムシは、急いで交尾・産卵し、一生を終える。その後発生する黒いイモムシ状の幼虫の餌は、雑草のギシギシなどの葉。大量の幼虫に食い荒らされたギシギシの葉が、葉脈だけの無残な姿になっているのを良く見かける。
ギシギシは生命力の強い厄介な雑草なので、それを食害するコガタルリハムシは益虫とも言える。しかし、盛んに餌を食べる幼虫の期間は春だけ。新成虫も短期間ギシギシなどを食べるが、6月中に眠りに入って姿を消してしまうので、雑草駆除の効果は限られる。
「寝てばかりいないで、雑草駆除に精を出せ」と言いたくなるが、コガタルリハムシは、睡眠重視の生活パターンを頑固に守り続ける。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)