初期宇宙の最新観測で出現!「幽霊天体」の謎と新発見
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「初期宇宙に出現した幽霊銀河の謎を解明」というテーマで動画をお送りします。
「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope, JWST)」は、ハッブル宇宙望遠鏡では撮影できなかった「幽霊銀河」をしっかりと観測し、さらに詳細な特性まで解明しました。
●幽霊銀河「AzTECC71」
「AzTECC71」という天体は、地上に設置されたいくつかの望遠鏡によって薄っすらと観測され、その存在が明らかになりました。
それらの望遠鏡では電波や赤外線で撮影されていましたが、その後ハッブル宇宙望遠鏡による可視光線での撮影では、その姿が写りませんでした。
人間の目に見える可視光線で観測できないという特徴から、この天体は「幽霊」と例えられることがあります。
この天体の正体は非常に遠方にある、塵に包まれた星形成が活発な銀河であると考えられていました。
分厚い塵は銀河に含まれる恒星が放った可視光線を吸収し、さらに塵の雲は赤外線や電波を放射するため、幽霊銀河は地球から可視光線で観測できず、赤外線や電波でのみ観測可能だったのです。
●JWSTによる詳細な観測に成功
最新最強の宇宙望遠鏡であるJWSTは、赤外線の波長帯で過去に類を見ない観測性能を誇るため、幽霊銀河の姿をしっかり捉えることができ、さらに詳細な特性まで明らかになりました。
その正体は従来の予想通り、星形成が活発な超遠方の銀河で間違いなさそうです。
一見暗い塵の塊に見えますが、毎年何百もの恒星がここで新たに生み出されています。
また、JWSTによる最新の観測により、幽霊銀河までの正確な距離の測定に成功しました。
非常に遠方の天体からやってきた電磁波は、地球に届くまでの長い過程で宇宙膨張の影響を受け、波長が伸びていきます。
観測された電磁波の波長の伸び度合いを示した数値は赤方偏移「z」で表現され、このzの数値が大きいほど、その電磁波を放った天体は非常に遠方にあることがわかります。
AzTECC71からやってきた赤外線を詳細に分析した結果、赤方偏移の値zは約6であると推定されました。
これはこの赤外線が、約129億年間も宇宙を旅してきた電磁波であることを示しています。
つまり今地球から見ている「AzTECC71」の姿は、宇宙誕生からたった9億年しか経っていない超初期の宇宙の姿なのです。
また、幽霊銀河の再発見と詳細な分析から、初期宇宙に関する定説まで覆っています。
従来、このような塵に包まれた銀河は、初期宇宙においては非常に稀な存在であると考えられていました。
しかしこの銀河を含め、JWSTの観測から新たに発見されたいくつかの塵に包まれた銀河の発見頻度の高さから、塵に包まれた銀河は従来の予想よりも3~10倍も多く存在している可能性があると判明しました。
この結論が正しければ、初期宇宙はこれまで考えられていたよりもずっと塵が多かったのかもしれません。
JWSTはその圧倒的な観測性能により、特に初期宇宙に関する常識を覆すような新発見を次々ともたらしています。
引き続き、JWSTが初期宇宙のブラックホールに関する常識を覆した最新の発見について解説していきます。