長さ9000光年!天の川銀河でうごめく巨大波構造「ラドクリフ波」の謎
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「天の川銀河内の巨大波状構造とその新事実」というテーマで動画をお送りします。
宇宙望遠鏡「ガイア」のおかげで、天の川銀河内の星々や星間物質の3次元的な位置や速度などの情報が詳細に理解されつつあります。
その中でこれまで発見されてこなかった未知の構造が浮かび上がり、話題になることがあります。
今回はそんな最近発見されたばかりの巨大波状構造と、その奇妙な性質についての新発見のお話をしていきます。
●巨大波状構造「ラドクリフ波」
2020年、ガイアのデータから、ガス雲や大質量星が高密度に集まった領域が波のように分布している、巨大な波状構造が発見され、「ラドクリフ波」と命名されました。
ここにはオリオン大星雲など、多数の星形成領域が含まれています。
ラドクリフ波の長さは約9000光年、幅は約400光年、波の振幅は約500光年と、非常に巨大な構造であり、総質量は太陽質量の約300万倍以上にもなるそうです。
そしてラドクリフ波は、天の川銀河が持つ複数の腕のような高密度領域である「渦状腕」のうち、太陽系が属する渦状腕である「オリオン腕(別名:局所腕)」内に存在します。
太陽系からラドクリフ波までは、天の川銀河の中心部とは反対方向にたった400光年しか離れておらず、この規模の構造としては非常に近い位置に存在しています。
また太陽系は約1300万年前にこの波を横切り、約1300万年後に再び横切る可能性があるとのことです。
2020年と非常に最近になって、太陽系の近傍にこれほどの巨大構造が発見されるというのは驚きです。
●ラドクリフ波は振動していた
これまではデータが足りず、ラドクリフ波の運動や構造的な変化については理解されていませんでした。
そんな中、ガイアが2022年に公開したより高精度なデータから、ラドクリフ波内の若い星団の3次元的な運動が突き止められました。
恒星の中には、何らかの理由で周囲の星々の平均と明確に異なる運動をするものもあるので、波状構造全体の運動を調べるにあたっては、恒星が集まり平均化された「星団」の運動が分析されています。
この動画における青い点は運動の分析に用いられた星団、白い線はそれらの星団分布から予想されるラドクリフ波の形状を示しています。
分析の結果、ラドクリフ波内の星団はそれぞれが銀河面に対して垂直方向に振動しており、ラドクリフ波全体が実際の波のように波打っていることが判明しました。
●残された謎
実際の波のような振動が観測されたものの、依然としてラドクリフ波は謎多き存在です。
まず、どのようにして巨大波状構造が形成されたのかがよくわかっていません。
超新星爆発や、矮小銀河との衝突等の天の川銀河外からの影響など、様々な説が提唱されています。
また、なぜ振動しているのかもよくわかっていません。
ただし振動を説明するためには、ダークマターの存在は考慮せずとも、既知の物質による重力的な影響のみで説明できる可能性があるとのことです。
さらに、ラドクリフ波のような構造がどれほど一般的なのかという問題も残っています。
ラドクリフ波は、オリオン腕において骨格のような重要な役割を担っている可能性があり、天の川銀河内の他の渦状腕や、天の川銀河以外の銀河においても同様に、振動する巨大波状構造が存在するかもしれません。
このように現時点でラドクリフ波は謎だらけの構造ですが、銀河の性質を理解する上で非常に重要な構造である可能性もあるため、今後の研究で謎が解明されていくことに期待がかかっています。