小型ドローンから見た地対空ミサイルが掠めていく瞬間
7月14日、ウクライナ軍の兵士が操作する市販のクワッドローター(4個の回転翼)・ドローンが、ロシア軍の地対空ミサイルに狙われてぎりぎり掠めて外れた動画が公開されています。
トール防空システムのミサイルが掠めていく様子 @OSINTtechnical
市販のクワッドローター・ドローンの機体が小さ過ぎてミサイルの近接信管が作動しなかったのか、ぎりぎりで外れてドローンを掠めてミサイルは飛んで行きました。
垂直発射の様子からロシア軍のトール自走短距離防空システムです。
- 迎撃ミサイルをコールドランチで垂直発射
- 迎撃ミサイルのロケットモーターに本点火
- 迎撃ミサイルが蛇行しながら目標に向かう
- 迎撃ミサイルがドローンの直ぐ横を掠める
ドローンを掠めていくミサイルには弾体前方に操舵翼が装着されているので、トール初期型(トールM1以前)の9M330ミサイルないし9M331ミサイルです。トール新型(トールM2以降)の9M338ミサイルは操舵翼と安定翼が両方とも弾体後方に付いており、大きさはほぼ同じですが形状が異なる別種のミサイルとなっているので、識別ポイントとなります。
トールM1の9M331ミサイル(推定)
なおトールM1以前とトールM2以降では使用ミサイルが違うだけではなく発射システムが全く異なっており、相互の使用ミサイルの互換性がありません。
トールM1とトールM2のコールドランチ発射方式の違い
- トールM1・・・火薬カタパルト式、8連装:9M330/9M331ミサイル
- トールM2・・・キャニスター・ガス発生式、16連装:9M338ミサイル
同じコールドランチ(ミサイルを空中に打ち出した後にロケットモーターに点火する発射方式)でも発射方法が全く異なっています。発射システムの大きさが嵩張る火薬カタパルトを止めて、キャニスター(ミサイルを収納する筒)の底部からガスを発生させて打ち出す方式に変更することで、迎撃ミサイルの大きさがほぼ同じサイズのまま搭載数が2倍になっています。
注:トールM2EやトールM2KMなど、輸出型のトールM2のバージョンによっては9M331ミサイルを使用するタイプもある。
トールM1(8連装:9M330/9M331ミサイル)
トールM2(16連装:9M338ミサイル)
トールM1の発射機の蓋は前後に開きますが、トールM2の発射機の蓋は左右に開きます。中央の仕切りもそれに合わせて変更されています。発射システムを変更し隙間を詰めることでミサイルの大きさがほぼ同じまま搭載数が2倍となっています。
トールM1(8連装:9M330/9M331ミサイル) ДвіЩ
左:9M330/9M331ミサイル、右:9M338ミサイル
- 9M330/9M331・・・前部:操舵翼/サイドスラスタ、後部:安定翼
- 9M338・・・全て後部:安定翼/操舵翼/サイドスラスタ
各部品の装着はこの順番。9M338の方がやや直径が細いが、キャニスター込みだと9M330/9M331とほぼ変わりがない。どちらも操舵翼と安定翼は折り畳み式だが、9M338の方がよりコンパクトに折り畳める。サイドスラスタは垂直発射直後の姿勢変更用で、目標突入時に使用する目的のものではない。
関連:弾着観測ドローンから見た地対空ミサイルが命中する瞬間(2022年6月6日) ※固定翼ドローンにトールのミサイルが命中する動画