忘れられた芸術家の復活—ノルウェーで再評価される女性画家の力作
北欧諸国はジェンダー平等が進んだ国として世界的に知られている。だが、現地では「まだまだ」と反省と模索を今も続けている。
北欧の美術館の取材を続けていると、「男性たちの影に隠れて、かつては存在が非可視化されてきた才能ある女性やノンバイナリーたち」の業績に、「今こそ光を当てよう」「それだけの価値があるのだから」という動きを見ることが多い。
それには美術館内でものごとを決定する女性リーダーや展示の関係者に女性たちが増えていることも関係している。
今回もその意思を見ることになったのは、ノルウェー国立美術館で6月14日~11月24日まで開催される「彼女はアンナ=エヴァ・バルグマンとなる」展だ。
アンナ=エヴァ・バルグマン(1909~1987)は、人生の多くをフランスで過ごしたが、作品にはノルウェーの風景の記憶が絵画に忍び込んでいる。
彼女独特の芸術言語は、ノルウェー美術だけでなく、国際的な舞台でもその足跡を残すことになる。しかし『叫び』を描いたエドヴァルド・ムンクとは異なり、「多くのノルウェー人は彼女の名前を知らない」と、美術館側は取材で説明した。居住地がフランスであったことも関係はしているのだろう。だがなによりも、男性たちと比べて、女性たちが同等に評価される時代ではなかったからだ。だからこそ、国立美術館はバルグマン展を開催することで、市民がその才能を知ることに喜びを感じているという。
金属箔を使った「絵画」には、石、木、山といった自然のモチーフが使われ、建築、文学、伝説、神話にも根ざしている。
展覧会の目玉は、ノルウェーの町ラルヴィクにあるファリス・バート・ホテルがホテルの新しいバーのために依頼した3部構成の『コンポジション』(1951年)だ。
作品のいくつかは、パリの春の展覧会(サロン・ド・メー)、ギャルリー・ド・フランス、カッセルのドクメンタ、サンパウロ・ビエンナーレなどの主要な展覧会に出品され、バルグマンが国際的に認められる基礎を築いた。
「この女性たちには注目される価値がある」「やっと市民の皆さんに知ってもらえる」。このような熱意と興奮を感じるプレスお披露目会だった。筆者はこのように、家父長制が今よりも強かった時代に、男性よりも評価されなかった女性やノンバイナリーのアーティストを「市民にもっと知ってもらいたい」とする美術館側の態度や心意気を評価したいし、そうしようとしてくれるスタッフたちがいることに感謝したいとよく感じる。
もし夏にオスロ観光をする予定があれば、国立美術館を訪れてみるのもいいだろう。