予算案の国会審議始まる。予備費という名の「財政規律」
1月25日、通常国会では2020年度第3次補正予算政府案の審議が始まった。この補正予算案が成立すると、執行期間が3月末までの残り2か月で、国の一般会計には約5兆円の予備費が計上されることとなる。これを年額に換算すると、約30兆円にのぼる。
そもそも、2020年度の第2次補正予算までで、新型コロナウイルス感染症対策予備費を11.5兆円計上していた。予備費とは、年度途中に予期せぬ事態が起きて、必要な経費に不足が生じたり、新たな経費が必要となったりすることがあり得るため、それに備える目的で設けられている。災害復旧費など緊急を要する場合に備えて、当初から使途を定めずに一定金額の予算を計上するのが、予備費である。
予備費制度は、日本国憲法第87条第1項で「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。」との規定に基づいている。
2020年度の新型コロナウイルス感染症対策予備費は、第2次補正予算成立後は11.5兆円だったが、今般の第3次補正予算政府案で1兆8500億円減額して、最終的には9兆6500億円となる。ただ、第3次補正予算政府案を閣議決定する前までに、4兆6076億円分の使途を既に決めたため、第3次補正予算案成立後に残る予備費は5兆0424億円となる。これが、冒頭で示した「約5兆円」である。
その予備費は何を意味するか。
巨額の予備費の問題点
例年、予備費の金額は多くならないように計上しており、2020年度の当初予算において、予備費を5000億円計上していた。それに比べると、2020年度補正予算での巨額の予備費は桁違いで、前代未聞である。
予備費として国会で議決を経るものの、その使途は内閣が事後的に決めることができる。そのため、予備費は巨額になると、歳出の使途に関して、国会の議決による拘束(財政民主主義)が弱くなるといえる。
予備費の執行過程
予備費の執行については、財政法第35条に規定されている。予備費は、財務大臣が管理することとなっており、各省庁の長はその使用の必要があるときには、使用理由、金額と積算の基礎を明らかにした調書を作成して、財務大臣に提出することとされている。財務大臣はこれを取りまとめ、予備費使用書として閣議へ提出し、閣議の決定を経て予備費の執行が可能となる。
つまり、予備費を使用した支出は、財務大臣が予備費執行に一定の決裁権限を持っているといえる。
ということは、巨額の予備費は、
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