アルマーニ氏も呼びたい。ジャングルに女手一つでおしゃれなエコビレッジを作ったケイコ・フォレストその3
アルマーニ氏に見初められ、15歳でパリコレに。ジャングル育ちの話題の17歳のモデル、小林サラ。
ピュアで野性的で、かつエレガンスな魅力が絶賛されている。
その母親、ケイコ・フォレストさん。ハワイ島のジャングル在住。
名古屋出身、弁護士事務所の秘書としての何不自由ない生活を捨て、単身アメリカに移住。10ヶ月かけてアメリカを歩いて横断。その後、北カリフォルニアにあるメンドシーノ国有林で暮らし、メキシコ人男性とメキシコにて結婚。カリフォルニアで二人の娘を家族だけで水中出産。9年前から、ハワイ島のプナ地区に移住。
「ヤナの森の生活」の著者であり、ジャングルにて、電気も水道も通っていない生活を送る。ジャングルの奥地の広大な敷地に、女手一つで数年かけて、「THE VILLAGE」という洗練された施設を作り上げ、ジャングルスクール「nest」を運営。食べられるジャングルとして、フルーツなどの植物を育てる。
ジャングルでも、東京でも、一瞬にしてなじめる小林サラを育てた母親とは?
自身のチャレンジングな生き方が、子育てにどう影響していくのか。
ジャングルの中で、ワイルドに力強く生きながら、一方で、おしゃれにエレガントにも生活できる。キラウエア火山噴火、溶岩が流れ、移りゆく大自然の中でも柔軟に考え方を変えられる。
そんな親子の生き方、価値観から、どうとでもなる、どうにでもできる、たくましさを学ぶ。
――― 自然が破壊されて、再生したり、新しい土地ができるように、人間も変化していくものですよね。
ケイコ そう。例えば、みんな人間って枠を作っちゃうじゃないですか。私が海外に行って、日本人として育ってきて、知らない間に作ってしまった枠みたいなものがあった、これが正しい、こうあるべきだみたいな。それがアメリカに暮らした時に壊れたんですよ。しばらくアメリカに行き来する間に壊れた。
――― なるほど。
ケイコ それが、私が一番興味のあることで、異文化交流っていうんですけれど。アメリカ人が日本に来ると、「バス停でみんな静かで気持ち悪い」って思うんですよ。日本人がアメリカに行くと「みんなしゃべってて、うるさい」って思うんですよ。そのうちに、そのアメリカ人が日本に来て、最初「みんな静かで気持ち悪い」って思ってた違う文化の中に入っていって数カ月暮らして、自分の国に戻ってバス停に立った時に「みんなしゃべってて、うるさい」って思うんですよ。そういうこと。それを繰り返していくうちに、これが正しいと思ってたものが壊れていく。
――― 今までは常識と思っていたものも崩れるし、変化する。だから、まさに、サラちゃんは、どこ行っても「サラのままでいられる」っていうのでね。
ケイコ そう、そうなんですよ。
常識と思っていたものはどんどん崩れて変化する
――― 自分の中の自分でいられる。
ケイコ 自分ができていく。それで、私はメキシコ人と結婚したのでメキシコに暮らすことになったじゃないですか。その時に「アメリカはよく分からない」って思ってた日本人の私が、長年アメリカに暮らしていてね、今度メキシコに暮らし始めたら「アメリカめちゃくちゃ分かりやすい」って思ったんですよ。
――― 英語もしゃべられるし。
ケイコ 英語も話せるし、スペイン語よりは分かりやすいし、ものの考え方も全く違ったんですよ。それでいろいろな国を旅するうちに、これって、今までは私が常識って思っていたものって全く違う、逆の常識を彼らは生きてたりするんですよ。私、そういう体験を得たので、少しでもたくさんの日本の人に外に出てほしいって、すごく強く思った。
――― 自分が体験してみて。
ケイコ そう。あと、私が日本の中でこれが常識みたいに思って暮らしてたのに、アメリカに行ったらいろんな質問されるんですよ「日本っていうのはこうなんだよね」とか「こうだよね」とか。その時に、あまり深く考えて暮らしてなかったので質問に答えられない自分がいて、向こうのほうが詳しいみたいな。そして、あらためて日本の文化について勉強して。
――― ですよね。
ケイコ そう。だから、やっぱり外に出るってことを体験すると、より日本のいいところも見えてくるし、悪いところも見えてくるしっていうのが起こった。
――― サラちゃんが、ジャングルで普通に生活して、みんな普通にサラちゃんを見てるから慣れてるけど、東京に来たらもうみんな二度見しちゃって振り返って、こんなスタイルの人が人間としているんだみたいな感じで「わー、すてき。かわいい」って思うわけですよ。でも、そういうふうに反応があると、自分ってそういういいところがあったんだって思えたりもしますもんね。再認識できる。
ケイコ 多分、自分なんです。日本人のハーフの、半分日本人で半分アメリカ人の友達の子どもたちとか、その家庭内でどういうふうに育てられているかで、自分を日本人だって思ってる人と、自分はアメリカ人だって思ってる人がいるの。それも、もう、びっくりしたんだけど。
――― 面白いですね。だから、やっぱり、そういうジャッジとかもあるかもしれない。
今まで持っていたものを手放さなければいけない時が人生にはある
――― で、ちょっと、また溶岩の話に戻しちゃうんですけど。溶岩っていう、もしかして何十年、何百年に1回の出来事がバーンとあって、そこから生活を変えさせられるけど、興味深いのは、ほんとにその溶岩で家が流されてなくなっちゃうっていうような人もいれば、家はあるけど住めなくなる人もいるし、でも、みんな共通して何か今まで持ってたものを手放さざるを得ない。荷物を運び出さなきゃいけないとか、必要なものかどうかを選択する必要が出てくるっていう、そういうのもやっぱり人生の中には起こってくるってことですよね、どんな人でも。
ケイコ そう思います。今の時代、ほんとに、例えば、日本だって福島の方で、何世代にわたってその土地から離れたことがない方たちが、今やっぱり新しい場所に移り住むしかないみたいな状況があったりとか、海外なんかでもそういうことがやっぱり頻繁に起こっている。
――― みんな今、すごくいろんなことが起きるから。でも、それで「あの土地が」って、そういう思い出もあるし、思いもあるけれども、もしかしたら新しいところで何か違う価値観で、えーっと思うようなことが、もしかしたら自分の人生にね。
ケイコ 起こります。
――― 変えられるってことですよね。
ケイコ うん。私も、いっつも住んだところがすぐ都になっちゃうタイプで。だからもう、そこに行くとそこを離れたくないって思うんですけれど、そこから新しいところに、何ていうんですか、行くことになる運命みたいでね(笑)。そして、いやいや行って、でも暮らし始めると、今度また同じように思ってる自分がいるんですよ。「ここ、ほんとにいいところだ」って思って暮らしてる自分がいて。
人間はたくましい。どんなところにも順応できる強さがある
――― やっぱり、人間ってそういう意味じゃ、たくましい。どこでもやっていけるってことですね。やっていけないと思うのは自分の思い込みかもしれない。
ケイコ 何かが起こるまでの間。でも多分、それが起こっちゃったら結構、人間ってそこに順応していく力があるんですよ。
――― 潜在的にね。それがジャングルに住んでると、はっきりと分かるってことですよね。自然がすぐ近くにあって。
ケイコ そう、ジャングルは分かりやすいですし、自然が間近だからね。
――― でも、ほんとに、よく子育てをされたなと。だって、ジャングルで育てて、でも、ジャングルしか生きていけない人間に育てなかったっていうのは、すごいと思います。
ケイコ そうですね、うん(笑)。
――― もう、例えば、電気がまぶしすぎて目が開けられないというわけじゃなくて、大都会のきらびやかな夜景も好きと言えるねえ。でも、星空の中でも生きていけるっていう。
ケイコ そうなんです、それは、うちの子どもたちと私の共通点で。友人なんかだとジャングルに住んでそれが正しいって思ってるから、都会はよくないみたいなことを言われたりするんですけれど、私たちは全然そういう感覚がなくて。何でしょうね。
――― だから、サラちゃんは、急にアルマーニさんに会いにパリにって言われたら、パリにぱっと行けるんですね。「私ジャングルしか無理」とかいうことじゃないんですもんね。
ケイコ そうですね。あまりジャングルっていう意識もないし、私自身が日本の都会で育ったんですよ。それで都会の暮らしを体験して、そして選んだのが今の暮らし。
――― どっちがいいとか、ないでしょ?
ケイコ そう。
――― どっちもいいでしょ。
ケイコ うん、選んだのが今の暮らしだから、娘たちが違う体験をしたいって言った時に、私もそうやって育ってこれを選んだから、彼女たちの人生だから自分で選べばいいんだって思っていて。だから、これが食べたいとか言った時には、いいよって。それは、私もいろんなものを食べて今の食生活にたどり着いたし。
――― なるほど。例えば、オーガニックのものにたどり着いてて、あなたは絶対ジャンクフードはダメっていうわけじゃなくて、ジャンクが欲しけりゃ食べてもいいよと。まずは、体験することですよね。
ケイコ そう。
いいも悪いもなく、たくさんの経験をして、自分の人生は自分で選択して
――― 最終的に選択するのは、あなたよみたいなことですよね。
ケイコ うん、そう、そうなんですよ。
――― それ、素晴らしい。やっぱり親とか大人になると、自分も散々、いろんな選択肢で狭まったのに、その一番いいものを子どもには提供したい、ダイレクトに提供したいと思っちゃうけど、その過程すらも体験させたいっていうことでしょ。
ケイコ うん、そう。それは多分、私がしたいことと、彼女のしたいことは全然違う、それは娘たちにいつも言われるんですよ。私もちょっと、これはって老婆心でいろいろ言うんですけれど、そしたら「体験しないと分かんないじゃない」って「信じてほしい」って言われる。「体験して自分で分かるから信じてほしい」って言われるし、そしたらもう何も言えない、自分もそうやってきてから(笑)。
――― 娘さんたちが言ってるのは、ママはすごい、ママは強い。じゃ、ママみたいになるかっていったら、どうかなみたいな(笑)。
ケイコ (笑)。
「ママみたいに生きたいというのは、ママと同じようなライフをするということじゃない」と
――― でも、そうやって子どもの時から、エコビレッジにいろんな人が来て、いろんな大人を見てるし、いろんな生き方があるって知ってるから選択肢があるし、すごく、いい感じみたいです、ってサラちゃん自身が言っていたから。
ケイコ そうですね。何か、いつもありがたいことに「ママみたいになりたい」って。でも「ママみたいにっていうのは、ママと同じようなライフをするっていうことじゃないよ」って言われる。「ママは自分を生きてるから、私たちも自分らしく生きていくよ」って言われるから、そういうことかなと思って。
――― サラちゃんも自分の人生を進み出したけど、こうなってほしいとか、そういうはないんですか。
ケイコ いや、あまり危険なことがない人生を歩んでほしいって、それはもちろん母親なので、いつもそういう心配はしてるんですけれど。それに、私にできることはしようと思っている、守るためにね。
――― ケイコさん自体は、今後どういう感じで。やっぱりいろんなところに住み、どうしたいですか。
ケイコ 私も別にジャングルにこだわっているわけじゃないので、縁があってそこの暮らしにたどり着いて、そこがすごく大好きで。でも日本の暮らしも大好きで、日本語が大好きなんですよ。だから日本語で文章を書かせてもらってるし。つなぐ立場っていうか、異文化交流をしてきたから、だから日本の人に私の感じたような、海外で新しい体験ね、海外でもいいし、ジャングルでもいいし、そういうインスパイアっていうか、刺激を受けるっていうか、枠が壊れるようなそういう体験をしてほしいし、逆に、こっちがこれがいいですよとは思ってないから、私も新しい体験をしに日本に行ったり他の国に行ったりしたいと思うし。
――― そして、ジャングルの中にもゲストを呼んで。今、めちゃめちゃおしゃれなエコビレッジを作っていますよね。
ケイコ そうですね。
――― 最終的にアルマーニさんも呼べるような感じのものというね。すごくおしゃれだから。最後に、ジャングルの中でもそういうおしゃれでいるとか、いわゆる、ジャングルだからワイルドに裸でいるとかそういう話じゃないじゃないですか。
ケイコ そうなんですよ。
――― いろんな価値観を持ち寄ったり、例えば、東京にいながらハワイの話、ハワイにいながら東京って、自分が自由自在にアレンジできるっていうのが、すごいなと思って。
ケイコ そうですね。最終的はジョンレノンじゃないけれど、国境のない世界の住人になりたいって思ってて、それはまず自分の中からだなと思って、自分の中に国境がなくなる生活をしていけば、おのずと外に表れてくる生活が国境のない生活っていうかね。
――― いや、もう、その考えがちゃんと娘さんに引き継がれていますね。サラちゃんがモデルの活動をして、世の中に広めていて、いいですね。すごく、可愛い娘さん。
ケイコ ありがとうございます。
――― 素敵なお話をありがとうございました。
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●娘、小林サラインタビュー
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