3M、1兆4700億円の支払いで和解 PFASによる水道水汚染訴訟
がんや免疫機能の低下、胎児の発育不全などとの関連が疑われている有機フッ素化合物(PFAS)による水道水汚染の問題をめぐり、米化学大手3Mは22日、汚染水の検査や処理などにかかる費用として総額103億ドル(約1兆4700億円)を向こう13年間にわたり支払うことで、同社を裁判に訴えていた米国内の関係自治体などと和解に達したと発表した。
「永遠の化学物質」
PFASは半導体や泡消火剤のほか、撥水性や撥油性を備えたフライパンなどの調理器具、食品容器、衣類、家具の材料として使われるなど、幅広い用途を持つ。
しかし、自然界には存在せず、何らかの経路で人の体内に入ると、代謝されずに長期間、血液の中などにとどまることが調査で明らかになっている。妊婦の場合は胎盤を通じて胎児に移行することもわかっている。
また、工場廃水などと一緒に自然界に放出されると、その極めて分解されにくい性質のため、何十年にもわたって地下水や河川、土壌に滞留し、水道水に混入することも確認されている。こうした性質から「永遠の化学物質」と呼ばれている。
PFASの一部はすでに国際条約で製造や取引が原則禁止となっているが、PFASは全部で1万種類以上あるとも言われており、ほとんどは規制されずに使用され続けている。
相次ぐ訴訟
ただ、動物実験や疫学調査などから人の健康に重大な影響を与える可能性が明らかになりつつあり、欧米では全面禁止も視野にいれた規制強化が急速に進み始めている。
今回の3Mのケースのように、自治体などがPFASの製造会社を裁判に訴える例も急速に増えている。
米国では今月上旬、化学大手ケマーズ、デュポン、コルテバの3社が、PFASの除去費用として11億9000万ドル(約1700億円)を拠出することで、水道事業者側と和解した。
日本でも問題に
日本でも沖縄や東京都多摩地域、大阪府摂津市などで高濃度のPFASが地下水や土壌から次々と検出されている。
しかし、欧米に比べると、政府や自治体による汚染の実態調査や規制強化の動きが極めて鈍く、住民の間で不安が高まっている。
PFAS問題に詳しい京都大学の原田浩二准教授は、実態調査が進めば高濃度のPFASで汚染された地域がさらに増える可能性を指摘する。
責任は認めず
3Mは声明で、今回の和解は各公共水道事業者との間に存在するPFASに関する問題を解決すると共に、将来の訴訟の可能性にも対応するものだと強調。水道水をめぐる訴訟問題はこれで解決するとの見方を示した。
しかし、同時に、和解は「同社の法的責任を認めたものではない」ことも強調。また、PFASに関連する他の訴訟に関しては、引き続き法廷の場で争う姿勢を示した。
地元メディアによると、3Mは州や自治体との間で約4000件のPFAS訴訟を抱えている。