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小さいのになぜ成功? チェスリン・コルビ応じる。サム・ケインはNG項目に…。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:REX/アフロ)

 身体の大きな選手が多いラグビーの世界にあって、先のワールドカップフランス大会で4度目の優勝を飾った南アフリカ代表はひときわ、大型選手を好む。

 ピーターステフ・デュトイは身長が200センチ。

写真:ロイター/アフロ

 エベン・エツベスに至っては204センチもある。

写真:ロイター/アフロ

 その群れにあって、チェスリン・コルビは172センチと小柄ながら成功を収めている。

写真:ロイター/アフロ

 タッチライン際のウイングに入ってバネ、スピードを攻守でフル活用する。フランス大会では、フランス代表との準々決勝でゴールキックをチャージしたシーンが語り草となっている。

写真:ロイター/アフロ

 いったいなぜ、自身が世界的選手になれたと思うか。

 本人がそう聞かれたのは11月27日。東京サントリーサンゴリアスの入団会見でのことだ。

写真:REX/アフロ

 待望の日本挑戦で多くのメディアを集め、自己分析の言葉へ自身と似た境遇の選手へのメッセージも込めた。

 その内容は…。

 以下、共同取材時の一問一答の一部。

——チームにどんな化学変化をもたらせるか。

「日本のラグビーのスピードは足りているが、さらにスタンダードを上げたいです。サントリーのラグビーはいいところばかりですが、それをさらに良くしたい。ニュージーランドや南アフリカでは、クラブレベルでも違ったレベルのラグビーがおこなわれていると思いますし、私は以前フランスでも6年間プレーしていた。違った形での知識を周りの選手と共有できれば嬉しいですが、同時にリーグワンからも学ぶこともある。周りからも学び吸収することを楽しみにする。まずは自分らしさを表現する。そして全体的にチームの勝利に貢献できればと思います。自分のスキルを楽しみながら、サントリーの勝利に貢献したい」

——自身の見どころは。

「自分自身のここを…というものは、ひとつには挙げづらいです。何故ならチーム全体を見てもらいたいからです。我々アウトサイドバックスは、アタック、ディフェンス、キックゲームのすべてに関わります。何もないところからエキサイティングな瞬間を作り出すポジションではあります。ただ、チームのよい結果を出すために自分がパフォーマンスするところを見てもらいたい。ファンの皆様とお会いできるのを、すごく楽しみにしています。先週(25日)、ワイルドナイツの練習試合を観に行きました。黄色と黒の服を身につける姿に興奮しました。会場では、チームのパフォーマンスを見ていただければと思います」

——では、自身が世界的な選手になった理由はどんなところにあると思いますか。

 きっと、何度もこの手の問いに答えてきたのかもしれない。言葉に重心を乗せて、かつ流ちょうに話した。

「たやすい道ではなかったのは間違いない。2012年から国際レベルでプレーしていますが、周りのコーチ陣、選手のなかでは私のサイズに関して議論があったのではないかと思います。でも私は、夢を追い続けることを諦めず、クラブレベルから国際レベルまで様々な犠牲を払い、ハードワークを厭わず、信条を高く掲げてきたと自負しています。しかしながら、ここまで自分のことを信じてくれた皆様に感謝しています。妻、子ども、両親は大きな犠牲を払って信じてくれて、感謝してもしきれません。夢を追うことが大事だと思っています。自分のようなあまり大きくないラグビー選手の皆様へのメッセージです。ファイトすることをやめないで欲しい、ギブアップしないで欲しい、信じることをやめないで欲しいということです。ハードワークで、皆様の希望は達成できます」

 サイズの劣勢を覆して南アフリカ代表となった選手には他に、スクラムハーフのファフ・デクラークがいる。

写真:ロイター/アフロ

 コルビと同じ172センチながら果敢なタックル、サイドアタックで魅する。昨年、横浜キヤノンイーグルスへ加わった際の会見で、コルビが答えたのと同種の質問に応じている。

「ラグビーを始めた頃から、自分はどのチームに行っても身体が小さいほうでした。父もきょうだいも小さかった。ただ、彼らから教え込まれました。『怖がるな、ビビるな』と。『お前は小さいからラグビーなんかできねーよ』とさんざん言われてきて、『畜生!』と見返したいと思ってきました。それが、原動力です。でかい相手がこちらへ走ってくる。『こいつは小さいからタックルなんかできないだろう』と考えられているであろうなか、思いっきりタックルへ行ってビビらせる。それをいまは、楽しんでできるようになりました。小さいゆえにチャレンジすることが多いですが、自分はチャレンジすることが好き。だからこそ日本に来て、チャレンジしているところもあります」

参考資料:「小さいからラグビーなんかできねーよ」に反発。初来日ファフ・デクラークの反骨

 いずれも近しい人物のサポート、内なる反骨心を力に変え、努力をし続けてきた。

 この日は、やはりサンゴリアスに入団するサム・ケインも登壇した。

写真:ロイター/アフロ

 20歳で初選出されたニュージーランド代表で長らく主将を務め、フランス大会では準優勝したフランカー。コルビと同じように成功した秘訣を聞かれると、周りへの感謝を口にしていた。

「自分が国際舞台でプレーできるタイミングは思ったよりも早く来たと思っていて、感謝しています。どこを思い返しても感謝するばかりだと実感する。家族、幼いころから指導してくれたコーチたち、チームメイトのおかげ。国際舞台ではいいチームに恵まれ、素晴らしいコーチ陣に恵まれたことを感謝しています。個人のマインドセット、自分の取り組みとしては日々精進することを掲げながら、自分のパフォーマンスをベターにするために切磋琢磨し、そこにプライドを持つことでここまでこられたと思うし、今後も邁進していきたい」

 なお今回は、会見でワールドカップの試合に関する質問をするのがNGとの通達がなされた。世界的選手の会見にあって異例かもしれぬリクエストは、配布された資料、場内アナウンスで日本語にて示された。

 もっとも実際には、海外メディアが英語でケインにこう聞いた。

——ラグビーワールドカップのファイナルを終え、少し時間が経った。試合をどうレビューしていますか。それを踏まえ、次のシーズンへの意気込みをお願いします。また次期ニュージーランド代表ヘッドコーチのスコット・ロバートソン氏とは連絡を取りあっていますか。

 ケインはこうだ。

「まず今回の会見ではリーグワンのみと伺っているので、それを踏まえて答えます。チェスリンとよくラグビーの話をする。主題は、今後どうしていきたいかの話です。スコット・ロバートソンとは先日も電話で長時間話しました。しかし、どんなセレクション方針のもとでも、自分が毎週いいプレーをすることには変わりない。いいプレーをして、選ばれる土台に立つ権利を得るのが重要です」

 日本代表が歴史的3勝を挙げたワールドカップイングランド大会以降の計8シーズン(不成立の2019年度=2020年1月に開幕し2月に中断=は除く)において、全てのカテゴリーC(もしくはそれ相当の他国代表経験者)の選手の通算在籍年数がいずれも1年に満たないチームが優勝した例は、2021年シーズンのワイルドナイツだけだ。

 最後のトップリーグとなったこの年は、新型コロナウイルスの感染拡大のため日本代表が活動しなかった。代表選手を多数在籍させるワイルドナイツにとっては、プレシーズンの時期にフルメンバーでチーム練習ができた数少ないシーズンだった。

 今年のサンゴリアスはコルビ、ケイン、さらにはウェールズ代表スタンドオフのガレス・アンスコムといった3人のビッグネームを新加入させている。これまでの統計を覆せるか。注目を集めている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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