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宿泊業界が悲鳴をあげている

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:イメージマート)

以下、日経新聞より転載。

首都圏観光地にぎわう春 宿泊施設の人手不足深刻にhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC150PR0V10C23A2000000/

首都圏1都3県の観光地ににぎわいが戻ってきた。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」へと移行するのを前に、人流が増え、宿泊施設の稼働率も高水準で推移する。インバウンド(訪日外国人)も一部で回復し、春以降の行楽シーズンに向け期待は高まっている。ただ人手不足は深刻となっており、急激な観光客回復で需要を取り切れない宿泊施設も出てきた。

長きに亘るコロナ禍で人員整理が進んだ後の急回復にあって、本当に業界内のアチコチから悲鳴が上がっていますね。ただ、そもそも宿泊業界というのは相対的に給与水準が低い業界でありまして、一度流出した労働者にもう一度帰ってきてと懇願したところで、既に他業界にてより良い待遇を手にした労働者はけして帰ってこないでしょう。結果的に現在起こっているのは、不足する既存の業界労働者を同業者内で奪い合うという状況であります。

この様な環境になってくると、すぐに「すわ外国人労働者を」とか言い出すのが業界の常でありますが、政策サイドとしてはそこは唇を嚙みながら踏みとどまりましょう。そもそも国際的に見て報酬水準が必ずしも高いわけではない我が国にあって、現在の円安状況を加味すると、外国人労働者にとって日本はけして労働する国として「魅力的な国」ではありません。これは円安の始まるコロナ禍前の状況からそうでありましたが、我が国にあえて入ってくる労働者というのは、日本文化そのものに興味を持っていて「あえて」日本を選んできた一部の外国人以外は、基本的に日本以外の国に行くことの出来なかった「余りもの」人材です。元来その様な状況にあった中で、現在の円安状況ですから、正直、労働者としてそんな高い期待をかけてはいけない。

というよりは、現在の様に需要はあるのだがサービスを供給するにあたっての人材が不足している様な状況というのは、(相対的に)付加価値の高いサービスを提供し、経営を効率化し、そこで生まれた余剰分を労働者に還元できた企業だけが生き残ることが出来るという「ポジティブな」企業選別が起るチャンスでありますから、ここで安易に安かろう悪かろうの労働者を導き入れようとするのは、血の涙を流しながら踏みとどまるべき。

現在の人手不足の状況は、国際競争力のある付加価値の高い観光産業への転嫁の為の「成長痛」であると捉え、全力で業界体質の改善を進めたいところであります。その先にきっと日本の観光産業の明るい未来がある、その様に考えながら冒頭のニュースを読んだ次第です。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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