宿泊業界が悲鳴をあげている
以下、日経新聞より転載。
長きに亘るコロナ禍で人員整理が進んだ後の急回復にあって、本当に業界内のアチコチから悲鳴が上がっていますね。ただ、そもそも宿泊業界というのは相対的に給与水準が低い業界でありまして、一度流出した労働者にもう一度帰ってきてと懇願したところで、既に他業界にてより良い待遇を手にした労働者はけして帰ってこないでしょう。結果的に現在起こっているのは、不足する既存の業界労働者を同業者内で奪い合うという状況であります。
この様な環境になってくると、すぐに「すわ外国人労働者を」とか言い出すのが業界の常でありますが、政策サイドとしてはそこは唇を嚙みながら踏みとどまりましょう。そもそも国際的に見て報酬水準が必ずしも高いわけではない我が国にあって、現在の円安状況を加味すると、外国人労働者にとって日本はけして労働する国として「魅力的な国」ではありません。これは円安の始まるコロナ禍前の状況からそうでありましたが、我が国にあえて入ってくる労働者というのは、日本文化そのものに興味を持っていて「あえて」日本を選んできた一部の外国人以外は、基本的に日本以外の国に行くことの出来なかった「余りもの」人材です。元来その様な状況にあった中で、現在の円安状況ですから、正直、労働者としてそんな高い期待をかけてはいけない。
というよりは、現在の様に需要はあるのだがサービスを供給するにあたっての人材が不足している様な状況というのは、(相対的に)付加価値の高いサービスを提供し、経営を効率化し、そこで生まれた余剰分を労働者に還元できた企業だけが生き残ることが出来るという「ポジティブな」企業選別が起るチャンスでありますから、ここで安易に安かろう悪かろうの労働者を導き入れようとするのは、血の涙を流しながら踏みとどまるべき。
現在の人手不足の状況は、国際競争力のある付加価値の高い観光産業への転嫁の為の「成長痛」であると捉え、全力で業界体質の改善を進めたいところであります。その先にきっと日本の観光産業の明るい未来がある、その様に考えながら冒頭のニュースを読んだ次第です。