米軍事機密文書が明かす台湾空軍の脆弱性 台湾に侵攻した中国は早期に制空権を握る
流出した問題の米機密文書は、中国が台湾に侵攻した場合、台湾空軍が中国の攻撃に十分に対応する能力がないことを露呈しているようだ。4月15日付け米紙ワシントンポスト電子版が報じている。
米中関係をめぐっては、4月5日、ケヴィン・マッカーシー下院議長がロサンゼルスで台湾総統の蔡英文氏と会談し、昨年はペロシ元下院議長が台湾を訪問したことから中国が反発、米中で緊張関係が続いている。台湾周辺では中国軍の軍事演習による威嚇も高まっている状況だ。
そんな中、機密文書で、米国防総省(ペンタゴン)は、中国空軍は台湾空軍との闘いになった場合、早期に制空権を握る可能性が高いとアセスメントしている。
同紙は「アセスメントは、台湾の高官が、自国の防空システムが中国のミサイル発射を正確に探知する能力に疑いを持っており、台湾の戦闘機の半数ほどしか任務を遂行できる状態になく、そして戦闘機をシェルターに移動させるのに少なくとも1週間かかることは、台湾が戦闘機を分散配置させるチャンスを得る前に中国がミサイルを発射させた場合、大問題だと述べている」としている。
機密文書流出問題で起訴された空軍州兵のジャック・テシェイラ容疑者は“サイバー輸送システムジャーニーマン”として空軍の世界的なコミュニケーションネットワークのオペレーションを行っていたと報じられている。その職務を通して、テシェイラ容疑者は台湾空軍に関するペンタゴンのアセスメントにアクセスすることができたのだろうか?
同紙によると、機密文書は具体的には以下の台湾空軍の問題に言及しているという。
・台湾空軍と市民の中国侵攻に対する準備不足
台湾空軍も市民も中国の攻撃に対する準備が不十分。台湾は、各ターゲットに対して2発の防空ミサイルを発射するポリシーがあるが、それでは、中国の多数の短距離バリスティックミサイルの攻撃に苦しむ可能性がある。また、台湾空軍は、一つの静止ターゲットを攻撃するように訓練されている。
空襲サイレンによる市民の避難訓練は、極めて台本通りで、実際の攻撃に対する準備としては効果的ではない。
・中国が台湾の中国軍にガソリンを補給する難しさ、中国も台湾も訓練不足
中国は、中国軍に補給するためのガソリンを台湾に送る際には困難に直面する可能性がある。アメリカと台湾が、中国のガソリン補給を早期に阻止するだろう。中国がガソリンを補給するには台湾の港湾を占拠することがベストな戦略だが、その戦略について中国軍は訓練されていないし、台湾軍もそれを妨害する戦略を持っていない。
・情報機関の探知能力の問題
台湾周辺での中国軍の活動が高まっているため、情報機関が、中国軍の通常とは異なる活動を探知したり、活動がエスカレートしたりする可能性を正確に測ることが難しくなっている。そのため、事故や誤算のリスクが高まる可能性がある。
・台湾空軍の安全なコミュニケーション力の欠如と、徴兵制の問題
台湾空軍は、ある時点での空軍の全部隊の位置を把握することができず、安全にコミュニケーションができる無線ネットワークを所有していない。そのため、多数の部隊が同じターゲットを攻撃するリスクがある。
また、2024年に、4ヶ月から1年に延長される台湾の徴兵制は防衛効果を大きくは改善しない。
・中国はアメリカの台湾防衛を阻止するための兵器を所有
中国は台湾に侵攻した場合、アメリカの衛星の機能を不能にする可能性がある。また、中国は台湾を防衛しようとするアメリカを抑止したり、必要なら打ち負かすために使われたりしうる幅広い兵器を所有している。
ワシントンポストの記事内には日本に関する言及もある。トランプ政権下で国家安全保障担当米大統領副補佐官を務めたマット・ポッティンガー氏が「航空優勢は中国の台湾侵攻に対して重要だが、それだけでは戦争には勝てない。中国の戦闘機とミサイル発射装置に対する攻撃能力を強化するために、台湾の防空上の弱点はアメリカや日本による緊急措置を必要としている」と述べているくだりだ。日米が中国の台湾侵攻に対して緊急対応し、台湾を支援する重要性が指摘されているが、日本はどのような対応を求められるのだろうか?
また、機密文書は、日本の安全保障政策についても評価しているのだろうか? 評価しているとすればどのように評価しているのか?
機密情報の次なる露呈が注目される。
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