巨大ブラックホールを周る星を捉えた最新の「実写動画」がヤバすぎる
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「銀河系中心のBHを公転する星々の実写動画」というテーマで動画をお送りしていきます。
●銀河系中心部に潜む巨大BH
人類の観測技術が進歩するにつれて、遠方にある無数の銀河の中には、中心部が非常に明るく活動的な銀河があることが明らかになりました。
それらの銀河核は、活動銀河核と呼ばれています。
活動銀河核が活発な理由は、そこに超大質量のブラックホールがあるためだと考えられていました。
そして私たちの住む天の川銀河の核は活動的ではありませんが、そこにも巨大なブラックホールがあるのではと考えられていました。
その真偽を確かめるために、1974年に地球から見て天の川の中心部があるいて座の方向を電波望遠鏡で観測した結果、周囲と比べて異常に強くコンパクトな電波源を発見したんですね!
この電波源は、「いて座A*」と名付けられました。
電波源いて座A*には巨大なブラックホールがある可能性が高いと考えられていましたが、確証を得るためにはいて座A*にある巨大な質量が非常にコンパクトな領域に密集していることを示す必要がありました。
いて座A*にブラックホールがあることを示すために非常に適していた手段が、いて座A*のすぐ近くにある星々の運動を観測することです。
いて座A*の周囲の星々が、いて座A*にある,密集した1点の周囲を公転していることが明らかになれば、いて座A*の持つ質量が非常に密集した領域に詰まっていることが判明します。
そして観測によって周囲を公転する星々の正確な公転軌道と公転周期まで明らかにすることができれば、いて座A*の正確な質量まで明らかにできます。
つまりいて座A*の周囲にある星々の公転軌道を観測できれば、いて座A*には非常に狭い範囲で極めて大きい質量が密集している、つまりいて座A*には巨大なブラックホールがあると示すことができるという流れです。
●巨大BHに振り回される星の実写映像
そんな中、ラインハルト・ゲンツェル博士とアンドレア・ゲッズ博士は、それぞれ別々のチームを率いて、1990年代半ばから実に26年間に渡っていて座A*を観測し続け、見事周囲で公転する星々の正確な軌道を特定することに成功しました。
この動画は、過去16年間で得られた実写画像を組み合わせて動画化した、まさに実写動画です。
この動画では恒星の動きは3200万倍速く表現されています。
このような観測によって特定した星々の公転軌道から、いて座A*には実に太陽の430万倍にも及ぶとてつもない質量をもった超大質量のブラックホールが存在していることがほぼ確実視されるに至ったというわけです。
人間の想像を遥かに超える超大質量ブラックホールがこの宇宙に、さらにこの天の川銀河内に実在していることを示すことができた功績から、ゲンツェル博士とゲッズ博士は2020年のノーベル物理学賞を受賞しています。
この動画内でブラックホールに振り回されているのは、地球の33万倍重い太陽の、さらに何十倍も重い星々です。
巨大な恒星すらも容易く公転させてしまういて座A*の途方もない存在感が改めて実感できる動画ですね。
そしてさらに、ゲンツェル博士のチームは2021年3月~7月にかけて、いて座A*の間近を公転するS天体を、これまでの最高精度の実に20倍以上に拡大して観測することに成功したと、去年2021年12月に発表しました。
実際にいて座A*の周囲を公転する星々の公転軌道の大きさや公転周期などの情報を用いて、一般相対性理論の効果を考慮しつつ、いて座A*の質量を計測した結果、やはり太陽質量の430万倍という結果が得られたそうです。
さらに、いて座A*までの地球からの距離は、27000光年であるという結果も得られたそうです。
そして、S300というこれまでに見つかっていなかった暗い恒星も、新たに発見されました!
私たちの住む天の川銀河の中心に潜む魔物「いて座A*」、その正体に迫る研究に今後も目が離せません。