Yahoo!ニュース

ピアニッチ、デ・ブルイネ、ポグバ…中盤で存在感を示す「新たな血統」と到来する「ボランチ2.0」の時代

森田泰史スポーツライター
C・ロナウドとピアニッチ(写真:ロイター/アフロ)

ミドルゾーンの攻防が、勝負の行方を左右する。

ポゼッション、トランジション、カウンター。フットボールにおいて、戦い方は多様だ。2018年のロシア・ワールドカップで、優勝したのはフランスだった。2018-19シーズンのチャンピオンズリーグを制したのはリヴァプールだ。

スペインやドイツではなく、フランスが世界王者になった。それは「弱者の兵法」の常態化を印象付けた。そして、攻守の切り替えの重要性は増し、リヴァプールが欧州の頂まで上り詰めた。

■組織のブレイン

かつて、中盤に置かれていたのは、まさに組織の「ブレイン」となる選手だった。

オーケストラの指揮者よろしく味方を操り、試合をコントロールして、攻撃を方向付ける。彼らは指揮官のアイデアを体現する存在で、ピッチ上の監督としてメトロノームを刻んだ。チームコンセプトをピッチ上で拡張する役割を担っていたのだ。

だが、そういった伝統的なMFの居場所は失われていった。代わりに出てきたのが、走れるタイプのMFである。

シャビ・エルナンデスのような選手は「絶滅危惧種」となりつつある。そして二列目から飛び出してゴール前に顔を出しながらも、バイタルエリアをケアしてシュートブロックを行う、ボックス・トゥ・ボックスと呼ばれる選手が「新種」として現れた。

一昔前のポジショナルなMF、オーガナイザーを務める選手と、フィニッシュに絡みゴールを奪えるような選手が同時代に共存するのは難しかった。すると次第に、スティーブン・ジェラードやフランク・ランパードのような選手が重宝されるようになった。

■新種のMF

インテリオール(インサイドハーフ)、ダブルボランチの一角、トップ下...。新種のMFのポジションは定まっていない。

10番のポジションはなくなった。リヴァプールはユルゲン・クロップ監督の哲学に基づき、プレッシングでそれを補う。そう考えると、プレミアリーグの隆盛と現代フットボールの傾向が合致する。

ルカ・モドリッチ、ケヴィン・デ・ブルイネ、クリスティアン・エリクセン、ミラレム・ピアニッチ、ポール・ポグバ、サウール・ニゲス...。MFの新たな血統、新たな系譜が示されている。

フットボールの最難関、それはピッチを俯瞰して、最適なタイミングで、最善の判断をすることだ。容易に相手守備陣の穴を見つけ、スペースに入る。チーム全体のプレーリズムをコントロールする。攻撃方向を定める。プレーに継続性を与える。

新たな血統ーー。彼ら以上にプレーを正確に解釈できる選手はいない。また、彼らは戦術の縛りを受けない。そういう選手でなければ、現在、起用法は難しい。その存在により、対戦相手との「組み方」にバリエーションが与えられる。フットボールの進化と、その過程が、「ボランチ2.0」を生み出したのである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事