なぜバルサはシャビの“解任”を決めたのか?ハンジ・フリックを呼ぶ後任人事の目処とラポルタの思惑。
変化が必要、という判断が下されたのかも知れない。
バルセロナが監督交代を決断した。シャビ・エルナンデス監督は今季限りでチームを去り、後任にはハンジ・フリック監督が招聘されると見られている。
■監督人事と経緯
一転、どころではない。二転三転、正直、バルセロナの監督人事はバタバタしている。
シャビ監督は、今年1月27日のビジャレアル戦(×3−5)後、今季限りでの退任を明言した。「バルセロナで監督を務めるのは残酷だ」と発言し、疲労とメンタルの消耗を理由に、チームから去ると語っていた。
だが、そこからバルセロナは調子を取り戻した。13試合を10勝3分けとして、無敗でシーズン終盤に乗り込んだ。“退任ブースト”が起きて、タイトル獲得の可能性を残した。
すると、ジョアン・ラポルタ会長はシャビ監督の続投を検討し始める。レアル・マドリーとパリ・サンジェルマンに敗れ、リーガエスパニョーラとチャンピオンズリーグの優勝の可能性が実質的に潰えても、それは変わらなかった。4月25日に会見が行われ、ラポルタ会長とシャビ監督は抱擁を交わしながら、指揮官の残留が宣言された。
しかしーー。最終的には、シャビ監督は解任の憂き目に遭っている。
■解任の理由
そもそも、シャビ監督は、ラポルタ会長のファーストチョイスではなかった。
2021年に行われた会長選で、シャビ監督の招聘をマニフェストとして打ち出していたのは、対抗馬の一人だったビクトール・フォント氏である。ラポルタ現会長ではない。ラポルタにとって、シャビは「経験不足」の監督だった。
ラポルタ会長とシャビ監督の間に、意見の相違があったのは間違いない。今季、チャンピオンズリーグ・グループステージ最終節アントワープ戦前には、招集リストの変更があった。ロベルト・レヴァンドフスキ、イルカイ・ギュンドアン、ロナウド・アラウホらに休養を与えようとした指揮官だが、会長の介入で彼らをリストに含めなければいけなかった。
また、ラポルタ会長は、指揮官就任後のシャビ監督の公式会見で、度々、不満を抱いていた。直近では、第36節アルメリア戦前、「クレ(バルセロナのファン)は現在と25年前の違いを認識しなければいけない。『この選手と、この選手と、この選手』といった具合に補強はできない」と述べ、波紋を呼んだ。
■解任のタイミングと交渉
やはり、監督交代を。ラポルタ会長は考えを改めた。だが問題は発表のタイミングだった。
バルセロナは女子チームがチャンピオンズリーグ決勝の試合を控えていた。リヨン戦を前に、解任を通達すれば、混乱は避けられなかった。加えて、クラブは後任人事に動いていた。筆頭候補のハンジ・フリック監督(フリー)を確保するまで、シャビ監督を“キープ”しておく必要があったのだ。
ハンジ・フリック監督の招聘に目処が立ったため、バルセロナはシャビ監督の解任を決めた。
■シャビの功績
シャビ監督は昨季、リーガエスパニョーラとスペイン・スーパーカップを制覇。2つのタイトルを獲得した。また、シャビ監督の功績として、ヤングプレーヤーの台頭が挙げられる。ラミン・ヤマル、パウ・クバルシ、フェルミン・ロペス、エクトル・フォルト…。カンテラーノを重宝する指揮官の下、多くの若手選手がトップの舞台へと羽ばたいた。
「生涯のクラブを去る。それは決して簡単なことではない。けれども、私は誇りを持って、全うする。選手たち、会長、クラブのスタッフ、フロント、メディア、皆さんに感謝したい」
「この日曜日を終えて、私はスタンドで応援する一人のクレになる。選手や監督である前に、私はバルセロニスタだ。生涯のクラブにとってのベストを望む。私が必要であれば、いつでも手を貸すつもりだ」
これはシャビ監督のコメントだ。
バルセロナはロナルド・クーマン、シャビを次々に解任した。クーマンはチャンピオンズカップ(チャンピオンズリーグの前身)優勝の立役者で、シャビ関しては、言わずもがな黄金時代を支えた選手である。
「レジェンドの扱い」という意味で、バルセロナのマネジメントには課題が残されていると言えるだろう。
とはいえ、時計の針は戻らない。今季、無冠に終わったバルセロナが、監督交代でどのように変わるかーー。新章が、始まろうとしている。