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移籍を示唆するベイルと、空転するレアル・マドリー。

森田泰史スポーツライター
ボールを追うベイル(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

ガレス・ベイルの動向に、再び注目が集まっている。

ベイルは、この夏、レアル・マドリーからの退団が濃厚になっていた。プレシーズンに行われたインターナショナル・チャンピオンズカップのバイエルン・ミュンヘン戦で試合出場を拒否して、ジネディーヌ・ジダン監督が彼の移籍を認めるコメントを公の場で残すところまで、話は進んでいた。

しかし、主力選手の相次ぐ負傷、そしてポール・ポグバ獲得の失敗が、ベイルのマドリー残留の追い風になった。ジダン監督との関係性は、プロフェッショナルな意味合いで改善され、2019-20シーズン序盤戦では3トップの一翼を担い存在感を示してきた。

■移籍の示唆

ただ、ここにきて、またも移籍の噂が流れている。スペイン『マルカ』で中国の上海申花との接触が大々的に報じられ、『デポルテス・クアトロ』ではジョナタン・ベルナト代理人と話し合いの場を設けていたところをカメラですっぱ抜かれた。

ベイルがマドリー退団をほのめかして大きな話題になったのは、2017-18シーズン終了時だ。チャンピオンズリーグ決勝、リヴァプール戦で先発から外れ、意地を見せるように豪快なオーバーヘッドで決勝点を記録。優勝を決めた直後、出場時間への不満を漏らして、定位置確保を求めて他チームに行くかもしれないと示唆した。

最終的には、ジダン監督の辞任、クリスティアーノ・ロナウドのユヴェントス移籍で、ベイルはマドリーに残留した。

C・ロナウドのユヴェントス移籍と言えば、彼もまた、マドリー在籍中に幾度となく退団をちらつかせていた。C・ロナウドの場合、その目的は明らかに「契約内容の見直し」にあった。その都度、フロレンティーノ・ペレス会長が彼を、あるいはジョルジュ・メンデス代理人を窘(たしな)め、またタイミングを見計らい実際に契約更改を行った。

■ベイルとC・ロナウドの違い

そして、2018年夏に、C・ロナウドは移籍金1億ユーロ(約120億円)でユヴェントスに移籍した。

マドリーは2009年夏に移籍金9400万ユーロ(約112億円)でC・ロナウドを獲得。33歳の選手を1億ユーロで売却して、獲得に投じた資金を回収した。「減価償却」として考えてみると、C・ロナウドというのは、とてつもない資産であった。

C・ロナウドとベイルでは、根本的に異なる。ベイルは、C・ロナウドほどマドリーで結果を残していない。

C・ロナウドは2009-10シーズン(公式戦35試合出場/33得点)、2010-11シーズン(54試合/53得点)、2011-12シーズン(55試合/60得点)、2012-13シーズン(55試合/55得点)、2013-14シーズン(47試合/51得点)、2014-15シーズン(54試合/61得点)、2015-16シーズン(54試合/61得点)、2016-17シーズン(46試合/42得点)、2017-18シーズン(44試合/44得点)とまさに得点製造機と化していた。

一方、ベイルは2013-14シーズン(公式戦44試合出場/22得点)、2014-15シーズン(48試合/17得点)、2015-16シーズン(30試合/19得点)、2016-17シーズン(27試合/9得点)、2017-18シーズン(39試合/21得点)、2018-19シーズン(41試合/14得点)という成績だ。

先のレガネス戦の前日会見では、ジダン監督に対してベイルへの質問が集中砲火の如く浴びせられた。14つのうち11つがベイルに関するもので、その他は自身の続投について、ラウール・ゴンサレス監督について、リーガエスパニョーラでの戦いについて、だった。

この状況は、普通ではない。マドリーがビッグクラブたる故、なのだが、それにしても空転している印象が拭えないのである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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