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白いカブトムシ発見…なーんて真っ赤な嘘

天野和利時事通信社・昆虫記者
羽化直後に間違って地表に出てしまったカブトムシは翅が白い。

 翅の白いカブトムシを発見…というのは真っ赤な大嘘(うそ)。羽化直後のカブトムシは、頭部と胸部が黒く、上翅(鞘翅)が白い。トップの写真のカブトムシは、色素変異などではなく、羽化後間もないカブトムシだ。カブトムシは通常、羽化後1週間ほどしてしっかりした体になってから蛹室(土を固めて作った蛹の部屋)から出てくるので、その頃には、上翅は茶色か黒になる。しかし家で幼虫、蛹を飼育していると、土が浅い場合、白い翅のまま表に出てきてしまうこともある。

羽化後間もない状態で人工蛹室から出てきてしまった翅の白いカブトムシ。
羽化後間もない状態で人工蛹室から出てきてしまった翅の白いカブトムシ。

透明容器の中の人工の蛹室で眠るカブトムシの蛹。
透明容器の中の人工の蛹室で眠るカブトムシの蛹。

 また、飼育容器の壁面を利用して蛹室が作られているラッキーなシチュエーションの場合も、この白い翅のカブトムシを見ることができる。

 こういうラッキーな状況にないが、それでも白い翅の状態からカブトムシを観察したいという場合は、蛹がしっかりしてきた時期に蛹室から一つ取り出し、縦長の透明のプラケースの中にミズゴケなどで作った人工の蛹室に移すという手がある。こういう条件で観察する場合、昆虫記者は一応、羽化後に容器の中に昆虫ゼリーを入れているが、体がしっかりするまでは、ほとんど餌を食べない。1週間ほどするとモリモリ餌を食べるようになって、餌代がかさむので、元の住処の森に返してやるのがお勧めだ。

飼育ケースの土が浅かったので、一部のメスも白い翅のまま表に出てきた。
飼育ケースの土が浅かったので、一部のメスも白い翅のまま表に出てきた。

角に蛹の残骸を付けたままのカブトムシのオス成虫。帽子を被っているようで可愛い。
角に蛹の残骸を付けたままのカブトムシのオス成虫。帽子を被っているようで可愛い。

 外国産カブトムシの中には、グラントシロカブトという白いカブトムシがいるが、日本のカブトムシは焦げ茶色か黒。日本のクワガタも基本的に地味な色合いのものがほとんどで、虹色や金色の外国産クワガタのような派手さはない。

 こうした状況はちょっと残念な気もするが、日本のカブト、クワガタは世界的にもかなり格好いい部類に入ると思っている。しかも、都会の公園でカブト、クワガタに出会える機会が結構多いという日本は、虫好きにとっては相当に恵まれた環境にあると言えるかもしれない。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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