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【追記】やりとりをしてみると、ファン心理を狙う詐欺の実態がみえてきた!本物のYOSHIKIに思えて…

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
YOSHIKIのマネージャーを名乗る人物からの謎のフォーマット(筆者提供・修正)

「この方が、本物に思えて仕方がないんです」

Instagramで出会ったYOSHIKIを名乗る人物と連絡を取り合う女性は話します。すでに、LINEでつながっているといいます。

「でも、返事をしてくる日本語がおかしいので、少し疑っています」

女性は、もやもや感を抱きながらも、連絡を取り合っています。

筆者の経験上、日本語がおかしい人物は、ほぼ”なりすまし”であろうと思いますが、何事も検証してみなければわかりません。しかも彼女は特にお金をだまし取られているわけでもないので、この時点で、この人物が詐欺を行おうとしているか、その目的もわかりません。

YOSHIKIを名乗る人物のInstagramをフォローすると

まずは彼女がDMをもらったという、YOSHIKIを名乗る人物のInstagramをフォローしてみました。投稿は非公開なので、それを見るためにリクエストを送りました。果たして、連絡はあるのでしょうか?

しばらくして、DMがありました。

「私の愛するファンを歓迎します。今日はどう過ごしていますか?」

さらに、メッセージは続きます。

「このメッセージをみて驚いているでしょう」

「私はインスタグラムでは、多くの話をしません。このアカウントは、私のメディアチームがファンとチャットし、彼らの支持に感謝するために作成したものです。(中略)私はいつもファンと話すためにここに来るわけではないので、あなたのLINEIDを教えて欲しいです

LINEのIDを教えてくれという話になりました。すぐに、メッセージアプリに誘導しようとするのは、経験上、詐欺の典型パターンですが、果たして…。

「愛するファンの皆さん。もうすぐ日本でコンサートをします」

LINEでつながると、すぐにメッセージがあります。

「こんにちは、ファンの皆さん。お元気ですか?」

そこで筆者が「ありがとうございます!ご本人ですか!」と尋ねると「はい、愛するファンの皆さん、本当にありがとうございます。皆さん、皆さん」

なぜ「ファンの皆さん」なのでしょうか?

だますためには、最初が肝心です。そのために、相手の名前を間違えたり、ボロが出て嘘がバレないように、これまで成功してきたメッセージの定型文を送ってきているのではないかと思っています。

「僕は今、スタジオにいます。暇な時に話します」

お昼にメッセージがきて、それからピタリと連絡がこなくなります。

次にメッセージがきたのは、5時間以上たってからでした。

「こんにちは、ファンの皆さん。お元気ですか?」

「はい。元気です!」

しばらくやりとりをしていると、

「愛するファンの皆さん。もうすぐ日本でコンサートをします」

確かに、本物のYOSHIKIさんは、東京で今年の8月にディナーショーを行う予定になっています。

すると「直接会いたいですか?」と聞いてきます。

筆者が「はい。ぜひ、お会いしたいです!」と答えると、マネージャーの連絡先を教えるので、連絡してほしいといいます。

「よろしくお願いします!」

すると、その人物のLINEIDが送られてきます。

「もし私に会いたければ、どうやって会えるかを聞いてください」

YOSHIKIのマネージャーと称する人物から、謎のフォーマットが届く

YOSHIKIのマネージャーと称する人物とLINEでつながりました。

その人物の投稿を見てみると、本物のYOSHIKIさんが出演したテレビ番組の写真がアップされています。そこには「Did you see the yabejyru?」とあります。翻訳すると「やべくりを、あなたは見ましたか?」です。

この画像は日本テレビで放送された「しゃべくり007」のようです。どうやら「しゃべくり」を間違えて「やべくり」といっているようです。本当のマネージャーであれば、このような間違いはしないでしょうから、やはり、この人物はYOSHIKIさんの関係者になりすましてメッセージを送ってきているとみてよいでしょう。

まもなくして連絡があります。

「お元気ですか?」

「はい。連絡ありがとうございます」

「どういたしまして、yoshikiさんは私に正しく連絡するようにお願いすると思います」

原文のまま載せていますが、のっけから日本語がおかしいです。

あえて触れず「ありがとうございます!」と答えると、次に不思議なフォーマットが送られてきました。

 あなたの正しい情報でスペースを埋めてください。

 1.名____________ 

 2.ゲーム______________

 3.国とお住まいの場所______________

 4.番号____________ 

 5.有効なIDカード

「名」「国とお住まいの場所」はわかるとして、「ゲーム」とか「番号」とか、よくわからず、謎です。そこでこの辺りを質問すると、それには答えず「名前と住所を入力するだけです」といってきます。

さて、どうしたものか。名前を教えるのは良いとしても、住所をどう伝えようか……悩みました。

そこで「YOSHIKIさんと会うためになぜ、(この情報が)必要なのでしょうか?」と尋ねてみました。すると「YOSHIKIさんがお伺いする際に、ご自宅の住所をお知らせしますので、そちらが必要です」と答えます。

「ええつ、自宅にくるのですか?」と驚いた様子で返事をすると「フォームに記入するだけです」と噛み合わない答えが返ってきます。

「いつきますか?心の準備が必要で」と尋ねますが「まだフォームに記入していません」との返事。

それでも、色々と質問をし続けていると、ついに、相手はキレ始めます。

「家の住所を教えて、質問をやめてください」

いずれにしても、住所を教えないと、先に進まないようです。

その時、頭に浮かんだのは先月、記事にした偽通販サイトに記載されていた、架空の住所でした。それを記入してメッセージを送りました。

すると、手続きが前に進んだようで「こちらがオープニングと価格です」といって次のような価格が表示されてきました。

「標準-20万円 通常-30万円 VIP(非常に重要人)-50万円」

筆者のもとに届いたメッセージ(筆者修正)
筆者のもとに届いたメッセージ(筆者修正)

「どれが良いのか?」と尋ねられたので、とりあえず「通常の30万円を考えている」と返事をします。

「標準とは、YOSHIKIさんと一緒に2日充実した時間を過ごすことを意味します。通常はYOSHIKIさんと5日(一緒にいる)。VIPは7日間(一緒にいる)」という説明でした。

「5日間も一緒にいられるのですか!予定をたてないといけませんね」

そこでお金の払い方を尋ねました。

「クレジットですか?」

すると、マネージャーは「近くにコンビニはありますか?」と聞いてきます。

「あります」と答えると、次のような指示がありました。原文のまま記載します。

「よし、30万円相当のiTunesカードを手に入れたら、教えてください」

筆者のもとに届いた、お金を払うように指示するメッセージ(筆者修正)
筆者のもとに届いた、お金を払うように指示するメッセージ(筆者修正)

「よし」とあるので、よほど、筆者とのお金の話が進んで、嬉しかったようです。

これでおおよその手口がわかりました。

やはり、お金をだまし取ろうとするのが目的です。

それにしても、詐欺師たちはYOSHIKIさんの評価をだいぶ低くみたものです。30万円で5日間も一緒にいられるのですから。ちなみに、今年の夏に開催される、本当のディナーショーは10万円です。

考えてみれば、日本で購入したiTunesカードは国内でしか使えないはずです。ということは、それを換金する組織が国内にあるのでしょう。それを裏付けるように、支払い方法を尋ねてから10分以上連絡がありませんでした。おそらく国内犯との連絡をとっていたのではないかと考えています。

あとは、お金を払わずに、話を引き延ばすことにします。

「手元にお金がないので、明日連絡します。」

マネージャーの位置情報を調べると…あの国が出た!

その後、このマネージャーをかたる人物の位置情報を調べました。

すると、アフリカのナイジェリアのある都市が出てきました。やはり、これはナイジェリア発の詐欺であることがわかります。YOSHIKIのマネージャーがナイジェリアにいて、筆者に連絡をしてくることはありえませんので、これでなりすまし詐欺ということで、まず間違いありません。

お金を払わずにいると、今度はマネージャーではなく、最初にLINEでつながったYOSHIKIを名乗る人物から盛んにメッセージが届きます。

「いつお金を払うの?」

「明日かな」という曖昧な返事をすると、

「OK、いいですね」さらに「何時、お金を払うんですか」「あなたは明日何時にお金を払うつもりですか」

30万円を必死に払わせようとしてきます。

本物のYOSHIKIさんが30万円のために、そこまで必死になるはずもありません。自ら偽物であることを話しているようなものです。

今回、筆者も気をつけましたが、相手が詐欺師とはいえ、こちらから「お金を払う」とか「契約する」という言葉を軽々しく言うのは危険です。それを言質にとられてしまうと、攻められて、お金を払わされる状況に追い込まれてしまうからです。しかもその人物のファンであった場合、本人かもしれないと思わされていますので、だまされる確率はとても高くなります。

検証の結果、このYOSHIKIは”なりすまし”であり、このままやりとりを続けていれば、詐欺につながることを、情報を頂いた女性にお伝えしました。

本当は、ここで検証を終えるはずでしたが、翌日も、なりすましたYOSHIKIから連絡がしつように続きます。

そこで、なりすましYOSHIKIの実態をさらに暴くために、やりとりを継続することにしました。

次回記事「しつこい、なりすまし詐欺師との攻防、撃退のために大切なことは?本物のYOSHIKIさんに思えて(続)」にて詳細をお伝えいたします。

なりすました相手から「ここから出ていけ」とまでいわれましたが、ここから、詐欺犯らの本性や手口がよりみえてきます。

【追記2/2 謎のフォーマットの危険性について】

謎のフォーマットが送られてきたら、詐欺のサインだと思ってください。

これは数年前からみられる、詐欺組織が使っているものだという情報も頂いています。詐欺師は成功した手口を繰り返し使うものです。

「わかる部分だけ記入しよう」

そう思わないでください。

その行為が多額のお金を取られることにつながりますので、絶対に、詐欺へのフォーマットには記入しないようにお願いします。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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